- 前向きに後ろ向き
という感じに、小学四年生の男の子によって不安定に設定された私が、こんな感じに不安定に育つのは当然なのであった。
そして翌年、私は浜田くんと初めて同じクラスになり、ようやく友達になるのだが、それはまた、ベツの話。それについてはその内、彼と私が上手くやるifとして誰かが語るかもしれない。
「というわけで。榛名くんの好きな私は、ちゃんと私じゃないのかも。ってことなんだけど」
「何ソレ。別れ話?」
「この早とちり!」
なんですぐそうなるんだ。かなり焦った。もしかして榛名くんは遠回しに私と別れたいのだろうか。
それなら嫌だけど仕方ない。私は号泣しながらも榛名くんと別れようじゃないか。冗談なんかじゃなく本気で。
しかし自信満々に、アイツはオレのこと好きなんだぜお前の入る隙なんかねーンだよハッハーン。とか言ってたのに、意外とネガティヴだな榛名元希。
「ンじゃ。なんだよ」
「だから私、これからも変わって行くかもしれないから、嫌じゃないかって」
「やっぱ別れ話じゃねーか」
「榛名くんが嫌かどうかって訊いてんの!私は別れたくなんかっ」
あーあ。嬉しそうな顔しちゃってまー。わかってるかな。私その反応をわかっててわざわざ言ったんだよ?負けず嫌いな私流の冗談だけど。
「野村、オレと別れたくねーんだ?」
「ま、まあ、一応ね。」
「つまり、オレのこと好きなんだな」
「あ、あああ、愛してるよっ」
「お前いっつもソレだよな。なんか好きって言えねー理由でもあるわけ?」
いや、もう無いんだけど。ていうか愛してるすら上手く言えないって、ふ、恋愛感情ってヤツはなかなかやるじゃないか。
私の元から旅立って早五年くらい。今になって帰って来ただけあって、随分パワーアップしたもんだ。
なに?新しい技なんかも覚えたわけかな?刀から黒い刃飛ばしたり、風の塊で出来た手裏剣みたいなのを武器に出来ちゃったりするわけ?んん?
え?なに?ゴーグルつけると集中?いらないからそういうのは。もっと派手な……え?腕とか伸びない?そら残念だ。それならもう一回旅立っておいで。
というのはまあ、うん。冗談だけど。また出て行かれたら困ります。
せっかく榛名くんを好きになれたわけですし。
「オレは好きって言ってほしーんだけど」
「なら、榛名くんこそ私に好きって」
「好き」
「サラッと言うなバカ!」
肩を掴まれて抱き寄せられた。あれ、これ落ち着いちゃうと恥ずかしいですね。
今更感のある冗談は此処までにしておいて、耳が近くなったので、漸く言えるようになった二文字を口にする。
「言えんなら早く言えっつの」
「ミー太照れて……じゃないや。榛名くん照れてやんの」
「あ。つーか、お前なんで急にミー太やめたんだよ」
いや、私は別に元々ミー太じゃないけど。というナンセンスな冗談は頭に浮かんだ時点で抹消。ふはは。ナンセンス過ぎるぞ私。この冗談は恥ずかしいからな。ありがち過ぎて。
「私達の間にある問題は一個じゃないということです。キラン」
最後のナシナシ。言ってないです。
「で、その問題は解決したわけ?」
「ふふふ。今回の件で再度検討しなければならなくなりましてな。保留ということになったのです。だからそうだ。また私は君をミー太と呼ぼう」
思い出しちゃったのだ。今私が飼っているミー太が二代目だったという事を。初代ミー太がどうなったのかは、私はイマイチ思い出せない。だから榛名くんが、三代目ミー太に任命された理由を考え直さなければならなくなった。
二代目ミー太みたいに、私に懐いているからだと思ったんだけど。それだけなのかわからないし。だから初代ミー太を思い出してからこのお話はしようと思う。
「ま、ベツにいいけどな」
「まあ、ミー太も未だに私をちか子と呼べてないしね」
「うっせ、黙れ」
こうして、私とミー太は晴れて両想いになったのでした。変わっていく私にミー太が愛想を尽かせる可能性はあるし、まだ問題は山積みだから終わらせられないけどね。最終回を期待した方は残念でした。伏線の回収は忘れるけど、ミー太ともっといちゃつきたい私の欲望は物語の長さすら変えるのだ!よくわからない冗談だけど。物語って何?
「というかミー太。もうかなり遅い時間になってしまったのだが、ミー太見に行く?」
「あー、今日は止めとくか」
「そか、残念だけど、機会なんていくらでもあるだろうしね。じゃ、また明日。」
「いや、マンションまでは送るっつの」
そう言って立ち上がり、ミー太が珍しく自分から手を繋いできた。やけに積極的だな。まだ孝介のちゅーが効いているらしい。
手を引かれたので私も立ち上がる。
というか凄い力で引っ張られ、その勢いでミー太の胸に頭突きをかましてしまった。多分私の頭のが大ダメージ。マイナス……ぎゅってされた。回復まほーう。べーほーいーみー。
じゃあとりあえず、今のところの結論
私達は相も変わらずバカップルです
2011/06/06