教室の真ん中で愛を語る


「は?部活?そんなら野球部入れよ」

「却下します。」

「はあ!?なんでだよ!」

「なんででも」

ミー太と付き合っても野球部が苦手なのは変わらないのだ。そもそも浜田くんや孝介がいても野球部嫌いだったわけだし。

武蔵野第一の野球部の人がいい人なのは知っているけれど、でもそれで野球部のマネージャーになれるかって言ったらそれは、不可能だ。私はやっぱり、野球部が怖い。

特にあの坊主頭とか。練習着とか。中学の時は、部室がなかったから、部活前に男子が教室で着替えてて、私が帰る前に、鞄にノートや教科書を詰めていると、変なことなんてしていないのに、当たり前の事してるだけなのに、笑われた。だから私は教科書とかを持って帰らなくなった。

男の癖に、スポーツマンの癖に、陰で人のやることを嘲笑っていた連中。人を傷付けるだけの奴ら。浜田くんはベツのクラスで、だから、私はクラスでほとんど一人だった。嫌な思い出。そんなもの、思い出したいわけもなく。

「じゃ、何部に入るつもりなんだよ?女バスとかか?」

ミー太。何故私の嫌いな部をピンポイントで攻めてくる。

中学時代、私をいじめてた女子の代表格は女バスに所属していたのだった。てなわけで女バスも却下。

「いや、文化部がいいかなって」

「軽音とかか?あれかっこいいよな」

「私音楽無理」

吹奏楽も共にアウトな方向で。とっくにチェンジしているハズなのだが気にしない気にしない。あははっ、うふふっ。

「じゃあ文芸部」

「もうちょいコミュニケーションとれそうなのがいいな」

「なら演劇部とか」

「ミー太は私と他の男がラブシーン演じてもいいわけ」

「ぜってぇヤダ。許さねー」

今日も今日とて嬉しい事を言ってくれるマイダーリンは、彼女である私の為に、指折り数えて残りの文化部を記憶の隅っこから引きだそうとしてくれている。お心遣いが傷み入りますわ。

「あー、家庭科部とかあったな料理部だっけ?そんなん」

「おお!お弁当持参にシフトチェンジした私にはピッタリの部活動じゃないの!でも却下!」

「なんでだよ」

「お金掛かりそうだから」

私はバイトもしないで親の拗ねを食い散らかしている獣のような狼少女なので、お金の掛かる部活はちょっと無しなのである。

「条件多すぎだっつの、このワガママ女」

「そんな私は嫌いかな」

「好きだけど」

端からみりゃあ、私達も大概バカップルですよね。朝の教室で、もう後二分くらいでSHRが始まるという時間帯。つまり、教室にはクラスのほとんどの生徒が集まっているという状態でこんな会話繰り広げてるんだから。

「けど、なに?」

「なんでもねっつの」

「男なんだからはっきり言おうよミー太」

「お前がしたいこと、全部許したくはねーって話」

言葉の意味がわからず、つい首を傾げてしまう。つまり、なに?

「部活なんか入んなくても良いんだよ。」

「根本的なハナシですか。なんでよ」

「野球部以外じゃ、部活で試合見に来れなくなったりすンだろ」

「えと、それだけ?」

「あと、他の部活にも男いんだろ」

「浮気なんかしないけど」

「お前可愛いから狙う先輩とかぜってぇいんもん」

もんって、可愛いじゃないの(ミー太的な意味で)(さて、どっちのだ)(ヒント、大半の猫は人類の言葉の使用を許可されていません)

「私モテない」

ことはない

「よ」

あいだの言葉はさして重要じゃないのでした。冗談よりタチの悪い嘘ですが、悪意はないのです。あれ、矛盾してる?

「それはお前が気付いてないだけ」しかも嘘の効果無し。さすがオレサマなダーリン。まず自分を信じるのね。自信があって素敵だわ。過剰気味なのは否定出来ないけど。

チャイムが鳴って、先生が教室に入ってきた。榛名が舌打ちをして席に戻って行く。

嬉しいなあ。なんか。

……?え?舌打ちが嬉しいって何事!?てかミー太だよミー太!榛名じゃなくてじゃなくて!ミー太の素が見れたのが嬉しいって、これはその、えーと。

とりあえず。部活は入るのはやめよう。ミー太が嫌なのは、私も嫌だ。

と、それから。

部活入りたかったのは、ミー太に近付きたかったからというのは、言っておこう。後で。

喜んでくれたら、私もきっと嬉しいから。



2011/05/31
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