話に割って入りました


何言ったんだろ。榛名。

っていうか、謝りに行って相手を逆上させるなんてなんてベタな。ベタゆえにbetterなんてことはなく、普通に迷惑だ。皆に。

図書室は今や壊滅状態。これ片づけるのまさか図書委員じゃないだろうな。もしそうなのだとしたら、激しく山本くんに同情するが、そうなったら私も手伝いをさせられるに決まってるので、そうならないことを祈る方向に頭をシフトチェンジする。

散らばった本の山。どうやって倒したのかわからない本棚の中。奇跡的にも無傷で、榛名はそこに立っていた。

「先輩に何がわかるっていうんですか」

またまたベタな台詞。返答がわからねえよ!でも、わかるよ!でもベタだし、言ってる意味がわかんねーよ。もそれなりにベタ。さて、榛名はなんと反応してくれるのだろう。

「わかるわかんねーの話じゃなく、オレはただな」

「アンタが謝って、それで西中先輩がかえってくるならともかく。そうでもなけりゃオレはアンタと口をきく理由を見いだせません」

意外と冷静に話出来てるじゃないか。ちなみに榛名の返答は零点だ。

「それとも。丁寧に殺されに来てくれたっていうなら話は別ですけど」

前言撤回。血の気の多いバカだった。いや、話によれば彼は非の打ちどころのないいい奴で、わりと優等生だったのだっけ。

コトちゃんにせよ、彼にせよ。うちの優等生は皆とち狂ってるな。そう思った。

とにもかくにも、図書室の外から様子を伺うのにも、いい加減無理があるし私は濱村さんをそこに残し、図書室内に踏み込むことにした。

騒ぎを聞きつけて駆けつけてきた先生に止められたが。関係なかった。

そもそも。言い加減私のほうが冷静でいられなくなってきたのだった。

「おい、テメー。誰の想い人に手ぇあげてやがる」

榛名と冨永君の間に立って。これが私の第一声。恥ずかしい公開告白ではない。あくまでも。

「は? アンタ誰ですか」

「そもそも先輩にアンタ呼ばわりってのが気に入らない。いい子が聞いてあきれるわ」

勿論、先生の制止を振り払うのも簡単ではなかった。あんまりに面倒なんで殴ろうかとも思ったが、榛名が怪我したら、どうするんですか。私、そしたら先生のこと一生許しません。と言ったら退いてくれる先生だったので本当に良かった。

お前が怪我したら、俺はお前を一生許さないとも言われた。その先生が誰だったかは言いたくない。

「まあ、でもね。自殺とはいえ、好きな子が死んでなんもしない奴らより君はマシ」

「はい?」

「ちょっとそういう人達に心当たりがあってね。でもやっぱ人は傷つけちゃイカンでしょう。ましてや、原因とはいえ、発端とはいえ。実際に手を下したわけじゃない。アンタ達の想い人の想い人にさ」

恨みを向ける方向が間違ってるよ。って、まあ、恨む相手もいないわけだし、しょうがないけど。

私はパラレルワールドとか信じないけど。でも、何回繰り返したって、どんなパターンだって、西中さんは死んでた気がするのだ。

まあ、榛名が告白していれば話は別だけどさ。ああ、だとしたらやっぱり彼の恨みの矛先は正しいのか。まあ、かといってやっていいことと悪いことはあるだろうが。

「ああは言ったけどさ冨永くん。君はやっぱりいい子だよ。結局榛名のことは傷付けてないし、話もこうやって聞けている。適度に人間らしいし、犯人だとばれる可能性があるのに、わざわざ駐車場の血糊も片付けて。だからいい子ついでに、こいつの話聞いてくんない?」

「だって、なんで謝るんですか。実際は、八つ当たりみたいなものなのに……」

ごめん。それは私が言ったからだ。榛名の視線が後ろから突き刺さる。

でもそうは言えない。それはそれで、まずい。

「オレが悪いと思ったからだっつの。何回言わせンだよ」

「先輩はわかってないです。こんなことして、謝られる人の気持ちとか、立場とか、気持ち悪さとか、辛さとか」

「だから、そんなんわかるわかんねーの話は関係ねーだろ。オレは申し訳ないと思って……イッテ! 何すんだよさや子!」

「いやだって、うん…………そこはわかれよ!!!!!!!!!」

「はあ!? そもそも謝りにいけっつったのお前だろうが!」

こいつ。私が気を使ってそれを言わなかったのにも全く気付いてないあほの子だ。いっそ鉄パイプで殴られたほうが頭よくなったんじゃねえの。

「えっと、先輩、がた?」

「バカなの? いや、今さらだけど! そうねアンタはバカでしたバーカバーカ!」

「バカしか言えねーのかよ! このバカ女!」

「こんなブーメラン見たことも聞いたこともないわ! 小学生レベルの低能! 単細胞!」

「オレのどこが小学生レベルだっつーんだよ!」

いや、だって今のブーメラン、バカって言ったら自分がバーカ! とか言ってる小学生並みの……。くそ、バカにバカって言われたのがこんなに悔しいとは。

「つーか、そもそも何しゃしゃり出てきてんだよ。一人で大丈夫っつったろ」

「本当に大丈夫な人だったら、図書室を壊滅させたりする展開にはなりません」

「オレは悪くねえ。そもそもお前が謝れっつたのが原因だろうが」

「ほほう。冨永君にはオレが悪かったとか言うくせになにそれ」

「あのなあ、悪かったとは思ってっけど、お前に謝れとさえ言われてなけりゃあ、その気持ちは背負って生きていってたんだよ」

「いいや、それは嘘だね。絶対嘘だね。だったらお前なんであそこでタカヤくんに謝るんだよ」

「なんでお前がそのネタをしっている」

ふと周りを見てみると、ギャラリーが一気に四人に減っていた。冨永くんと、山本くんと、先生とコトちゃんの四人だけだ。

ちなみにコトちゃんはなぜか苦しそうなくらいに笑っていた。

っていうか、冨永くん。なぜ君がギャラリー側にいる。

「はー、とりあえずお前ら。昼休み中……いや、少なくとも今日中にこれ片付けろよ」

そして、榛名と私が一通り気持ちをぶつけ終わった後、先生が口を開いた。

「はい?」

「片付けられたら、今回の件はどうにかしてやる」

「いや、いくら先生でも、この騒ぎを隠ぺいするのは無理でしょ。今の騒ぎ、他の先生とか、生徒も来てたわけだし」

「隠ぺいは無理でも誤魔化しようはいくらでもある」

ホントかよ。とは思ったが、出来るものならそうして頂きたい気持ちはやまやまだし。どうせ、私は片付けに参加させられるのだ。

ならば言うことを聞いておいたほうが得かもしれない。

「榛名は部活あるんでしょ? 放課後は無理だから、今と、あと次の休み時間に手伝いなさいね」

「おー」

「で、冨永くんは?」

「えっと、オレは部活は文化部なんでだいじょ……」

「あっはは、やっぱ君いい子だわ。私参加すんの? ってきいたつもりだったのに」

「へ? あの」

「じゃ、放課後も待ってるね。色々、聞かせてほしいこともあるし」

榛名とは特に仲直りはしなかった。振られて、その上口喧嘩して、それでも普通に短期間で仲直りできるほど、私は出来た人間じゃない。

普通に話はふるけど。意見は聞くし、命令はするけど。やっぱり心にひっかかってるものを見て見ぬふりは出来なかった。

「あ、そうだ、榛名」

「ああ?」

「ほら、秋丸くんだっけ? あの眼鏡の人。あの人にも声かけといてよ。手伝ってくれそうじゃない?」

「ンなことねーと思うけど」

「いいから声くらいかけなさいって。アンタは放課後参加できないんだから、それくらいはすべき」

「へいへい」

まあ、なんにせよ、この会話になんの意味があるのかとか、なんで自分がいきなり、あの人を呼ばなきゃいけないような気持ちになったのかとかは、残念だけど、一生しることはないのだけど。



2014/05/01
久々の更新過ぎて、話の流れが思い出せない
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