私は選択しました


さて、そろそろ最終話になるのかな。

明後日はとうとうバレンタインで、手作りのチョコを作るなら、料理がそこまで上手くない私は今日から用意すべきだ。そうでなくとも、今日には答えを出して、明日にはチョコレートを買いに行くべきだと思う。

あー、えーと、何の答えかって言うと、濱村さんが普通に榛名を好きみたいだから、そもそも告白すべきかってことね。邪魔にしかならないであろう行動を、わざわざとる必要があるのかどうか。

告白しなくても、失恋って勝手にするものだし、私は彼女と違って、恋愛に命なんてかけていない。ならば、ベツに、自分の気持ちなんて放置してしまえばいいのだ。

そうは言っても、ふられてすっきりしたいのは事実。人生が乙女ゲームなら、ここで一旦セーブして、あとでまた選択をやり直せるのに。なんて、ゲームなんてしない癖に思ってみたり。

「あーだるっ」

というかそもそも、私は頭脳派じゃないわけだし。その時の流れで決めるんでいいじゃないか。今までの事件もそれで解決してきたわけですし。今までは榛名がいたとか、気にしない。

榛名が居なくなったらなんて、考えない。考えたくない。



そして、翌日、チョコレートは念のために購入。まあ、渡せなかったら誰か他の人にあげればいいや。

ゆるい思考で眠りについて、翌日は、早めに学校へ向かった。机に匿名で入れておこうと思ったっていうのが、本音だったのに。


教室では既に榛名が席についていた。いつもなら、まだ朝練をしている筈なのに。

「あ、れ? どうしたの。榛名」

榛名がぎくりとしたような顔で、私を見た。

濱村さんはいない。というか、誰もいない二人きりの教室。

私の鞄にはチョコレートが入っている。

「朝練なくなった」

「なんかあったの?」

「今日トラックがー、いい。あとで話す。」

椅子から立ち上がり、榛名が私との距離を詰めるように、こちらに歩いてきた。

緊張で強張る身体。私がチョコレートを机にいれていたら、榛名は犯人を突き止めるのに、私を付き合わせたかな。わからないけど。この結果はそれよりもマシなモノなのだろうか。

「オマエは、なんでこんな時間に学校来たわけ?」

今回の、犯人役はなるほど実は私ということらしい。

短く終わらせるかわりに、選択肢を三つ用意しよう。チョコを渡して告白するか、チョコを渡さないで終わりにするか。チョコを渡して、告白しないか。

でも、私はあえて、四番目の選択肢を選ぶ。

「榛名、私ね」

他の選択肢を選んで、幸せな『もしも』を見ることが出来たとしても。

「榛名に、言いたいことがあったの」

私らしさを選ぶなら、答えはきっとこれしかないから。



2012/07/08
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