告白してしまいました


「オレ、寒いし三十分で帰るよ」

「てめーはホンット、ノリわりーな!」

「寒いよね、秋丸くんごめん」

「濱村さんが謝ること無いよ。どうせ言いだしたのは榛名だろ?」

「いや、私がしたいって言ったんだ」

「へえ、そうなの?」

土曜日。オレと秋丸は部活が終わった後、コンビニで食料、飲料等を調達し、待ち合わせをしていた公園に足を運んだ。

空気を読まない秋丸に対して文句を言ったものの、確かに公園での新年会というのは寒いもので、思い返せばこの間だってそんなに長いことはいなかった気もする。



そんな感じで三十分後。宣言通り、秋丸はある程度後片付けをして帰っていった。

残されたオレと濱村は、ベンチに座り、残ったジュースを飲みながら、引き続き新年会を続ける。

「最近、よく二人になるね」

濱村が不意に呟いた。

そう言えばそうだ。さや子と話す回数より、濱村と話すことの方が増えている気がする。

ベツに意識をしてそうしたわけではないが、意識してしまうのは確かで、オレは誤魔化すように、そうだな。と素っ気なく答えた。

「えーと、そういえば、今度球技大会あるじゃない?あれ、榛名くんどっちでるの?」

「あーあれな。バスケかバレーだっけ?」

「そうそう」

部活と同じ種目には出てはいけないというルールがあるので、女バスである濱村はバレ―ボールの方に参加するのだろう。

ならオレもバレーボールにしておくか、とか考えた。のに、気付いて撃沈。思考回路がなんでそうなるのかがわかってしまったからである。

「で、榛名くんはどっちでるの?今度のロングで決めるんだよね?」

ロング。つまりロングホームルームのことである。

そういえば、この前アイツもそんなことを言ってた気がする。私はバスケにする。とか。だから榛名はバレーにしろ。とか。

「あー、バレーにするつもりだけど」

アイツの命令とオレの気持ちも一致したので迷うことは無かった。

「あ、私も」

知っている。とは言わなかったが、濱村はハッとしたような顔をして、あ、わかるか。と恥ずかしそうに呟く。

「で、えーと。球技大会終わったらなんだろ、なにかイベントあるっけ?」

「女子はバレンタインとかあるんじゃねーの」

「ああ、今年は私どうしようかな。越石さん甘いの苦手だからいらなそうだし。」

所謂友チョコというやつか。去年までは西中にもあげていたのだろう。一瞬見えた暗い表情からオレはそう推測した。

掛ける言葉なんて探すつもりはないので、寧ろ探して欲しいくらいなので、オレはスルーの方向で話を進める。

「となると、今年は部活の子に配るだけになっちゃうな」

「オマエ男苦手だしな。バレンタインあんまおもしろくねーだろ」

「あ、いや、面白くないことはないよ?友チョコとかも手作り楽しいし、まあ、確かに、周りの子みたいに、恋のイベントとして楽しんだことはないけど。相手さえいれば、私だって、恋のイベントとして楽しめるだろうし、苦手っていっても、男性恐怖症ってわけではないし、好きな人くらいいたことはあるんだよ」

、濱村が足元の石を蹴飛ばした。ころころ転がっていくそれをオレは見届けて、口を開く。

「……そういや、オレには作ってくれねーわけ?」

「いや、でも、榛名くん欲しくないでしょ。私の。毒入ってるかもしれないし」

「欲しいっつの。つーか、いつまでオマエそんなこと言ってんだよ」

「でも義理チョコとか柄じゃないし、義理チョコって、いまいちどこまで仲良い人にあげればいいかわからないし」

「じゃ、オレだけに本命つくってくれりゃあいいだろ」

「……?うん?」

「だから、義理がメンドーだっつーなら、オレにほんめ、……ん?」

何言ったよ。え、オレ。え。

自分の言葉を反芻してみる。結論。オレはイマ、無茶苦茶なことを言ったようだ。

「は。はるはるはる、え、榛名く」

「悪いオレか、かえ」

「ううう、う、ううん、いや、私がかえっる!帰ります!」

急なラブコメパートに、オレも彼女も対応できず、オレには走って公園から去っていく彼女の背中を見送ることしか出来なかった。

「……なに言ってんだ、オレ」

「なにやってんの?榛名」

「おお!?」

そんなオレの背中に、よく知った声がかかった。必要以上に動揺するオレに、その声の主は首を傾げる。

「あれ、なんだ?もう終わっちゃったんだ?」

「おう、たった今」

色々な事がな。

オマエがもう少し早く来てくれていればオレはあんな爆弾発言しなくてすんだのに。と、理不尽なことを考えてみる。

「そっか、濱村さんが場所とか教えてくれたから、一応、来たんだけど」

「……そーか」

濱村という名前にオレが動揺したことに気付いたのか、さや子が怪訝な顔をする。

そういえば、こいつは変なところで鋭いというか、まあ、オレ達はだからこそ仲良くなったのか。こいつが鋭いから、あの事のおかしさに気付いたから。普段は鈍そうに見えるのに、こいつはいつだってそうなのだ。

「……なに?なにかあったの?」

さや子が、先ほどまで濱村の座っていた場所に座った。そして、誰かからメールでも来たのか携帯をちらりと見た後、オレを真っすぐ見据えて、続ける。

「親友なんだから。話してよ」

そしてオレは、多分どうしようもなく鈍かった。



2011/07/19
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -