自己嫌悪してみました


「ミサ、やっぱり洋くんが世界一かっこいいと思うんだ。ね、さや子ちゃんもそう思うでしょ?」

「あーうん。そうかもねー」

彼女は川内さん。山本くんの彼女さんである。帰りのホームルームが終わったあと、私が図書室を訪れると、そこでは"ようくん"こと山本くんと、"ミサ"こと川内さんが、人目を気にせずいちゃついていた。いや、気にするとかしないとかではなく、二人以外誰もいなかったのだが。

「みーさ!他のヤツに変なこと言うなって」

「だって洋くんがかっこいいから。皆にもそう思って欲しいんだもん」

「それはわかったけど、オレはお前以外にはかっこいいなんて思われなくても全然かまわねーし」

「洋くん!」

ぶっちゃけとてもうざい。ホントリア充爆発しろって感じである。

いや、私はネト充といわけでは無いんだけど

「ああ、そうそう、越石さんさ」

「なに?」

「お前、あれだ。今週と来週の土曜日空いてねえ?」

「ん?土曜なら空いてるけど。なんで?」

「図書館いきてえんだよ」

「彼女さんと行けばいいじゃない」

「ノンノン。こいつと行ったらいちゃついちゃって図書館じゃ迷惑だ」

学校でも迷惑だ。じゃなくてじゃなくて。彼女さんは何も言わないが、いいのだろうか。いや、私と山本くんに限って言えば、間違いなく、間違いなど起こらないと言い切れるが。

男女が二人で出かけたりなんて、色々あるかもって思わないのだろうか?

榛名なら間違いなく、何もしなくても、その気にだけはなっちゃう気がする。あれ?榛名なら間違いなく?あの日、榛名と濱村さんって二人きりで出掛けたんだよね?あれ?

いや、それがどうした私。今は考えることが違うだろ。

「えーと」

「いいじゃん。帰りに晩飯くらい奢るし、お勧めの本とか語ろうぜ」

「乗った!!」



という調子で、山本くんの誘いを受けてしまった私の一月の予定は、バイトなどもありびっしり埋まってしまった。

「しまった。なぜこんなことに」

バイトの勤務時間が制限をオーバーしている?そんな事私には関係ない。いや、ごめんなさい。守っちゃうと学費払えないんです。そこからお小遣いも捻出してるんです。携帯代もあるんです。

「おかしい。一月何連勤だよ」

いや、基本六連勤だけれども。週休一日制?とはいえ、二月はあまり働けない予定なのだから仕方が無い。一月に働いておくしかないのだ。

自室のカレンダーの予定欄がびっしり埋まっているのが、絶望を通り越して面白くてたまらない。これは私、倒れるかもしれない。

まあいい。倒れそうになったら学校をサボればいいのだ。

「って、なに?電話?」

テーブルの上の携帯が震えている。このバイブの長さは間違いなく電話だ。

画面に表示されていた名前は我が親友のもので、メールじゃないなんて珍しいと考えながら、私は電話に出る。

「え?明日?明日はバイト。土曜?土曜は山本くんとちょっと、ていうか一月中は無理だよ遊べない。来週の土曜もやまも、ん?ちょっと」

切れましたよ。切られましたよ一方的に。

ていうか、榛名ってなんで基本がタイミング悪いんだ。冬休み最終日に関しても。今回も。

今回も濱村さんか。と思った。濱村さんは来るって言ってたし。ベツにどうというわけでもないが、お前は私のシンユウなんじゃないのかとも思ってしまう。ああ、なんか私かっこ悪い。

ていうか、西中さんどうしたんだよ、とか。性格まで悪いな私。よし寝よう。

そう思ってベットの中にもぐりこんで目を閉じた。そういえば私は寝相も悪いんだっけ。それだけで自分が最悪に思えた。



2011/07/11
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