再調査を始めました


「お前、意外と友達いンじゃねーか」

不服そうに言う彼だったが、本当に不服に思っているわけではないのを私は知っている。ある意味不服ではあるのだろうけれど。まず、私の環境に安心してくれているのだと思う。

かつて、とある事件とも言えないような事柄で、唯一の友達を喪い、無二の友達を失いかけて、心のよりどころさえ、自ら突き放し、無くしてしまいそうになった私を彼は、ずっと心配してくれていたのだ。

「んー。出来たのは最近なんだけどね。」

「最近でも友達は友達だろ」

「それは、そうなんだろうけどさあ」

しかし、その事柄というものの発端を覚えてさえいれば、友達というものとの付き合いの長さを私が気にすることを理解してくれてもよさそうだが。そこは流石、榛名元希。きれいさっぱり忘れているようだった。

「まだ一週間しか経ってない筈なんだけどな……」

「ああ?なんかいったか?」

「いや、ベツに」


それにしても、榛名くんは知っているだろうか。私が榛名くんを恋愛のそれとは少し違うものの、とてもとても大切に、愛しいとすら思っているということを

まあ、彼の事だから気づいていないと思うけれど、(なにせ、あのわかりやすい西中さんの気持ちすら気づいていなかったくらいだ)私の中の彼に対する憎しみにも気づいていやしないと思うけれど、それでも私は彼が人間として好きだ。

矛盾はしていない。愛しさと憎しみは、矛にも盾にもならない。

否、かつての事柄がそうあったように。愛しさも憎しみも矛でしかない。

攻めることが出来ても、決して、守ることは出来ないのである。


私は別に、榛名くんを攻めたいわけではないけれど。責めたいわけでもないけれど。

結果として、私は榛名くんを労わることが出来ていないのだから、やはり私の感情は矛でしかないのだと思う。



先ほどの会話から、特に何も発展することが無さそうだったので、私は図書室で借りてきた本を机から取り出した。

先ほどの会話に出てきた私の愛すべき友人たちは、次の授業が選択授業で、その上、私以外が、教室を移動しなければならない、つまり、私だけが教室を移動しなくて済む科目である為に、仲間内では私だけがこの教室に残ることになってしまっているのだった。

かろうじて榛名くんは同じ科目らしいけど。こういう要素もあって、西中さんはいろいろ勘違いしたのだろうと、今更気づく。恐るべし濱村さん。私なんか榛名くんなんて全く気にしてなかったから、今日そのことに初めて気づいたのに。

ぺらりと。本を開く。まだ読み始める前の本だったので、私が最初のページを開こうとすると、真ん中あたりのページが強制的に開かれた。折り目でも付いていたのかと一瞬思った。だが、じっくり見るまでもなく、そういうたぐいのものがついていたわけではないことに気づく。

「……手紙?」

そこには、手紙が挟まっていた。

まっ白い封筒。宛名はない。

「ラブレター、とか?」

んな古風な。しかし、何も書かれていないところがまた、それらしさをかもしだしている。

「なに独り言言ってんだよ。」

「本に手紙が挟まってた。」

「つーとアレか?ラブレターってやつ?」

榛名くんと同じ思考回路をしていたとは。私の脳みそは思ったより大したことがないのかもしれない。

「さあ?」

「気になんねーの?」

「榛名くんは気になるの?」

「ベツに気になんねーけど」

「そう。私は気になるから中を見るけど、榛名くんには内容は言わないね」

「はあ!?ありえねー!」

榛名くんは知らないだろうが、この本は西中さんが度々図書室に行って読んでいたものだ。なので、この手紙は西中さんのものである可能性が高いわけである。

封筒から便箋を取り出す。

中に書かれていたのは、ただ一言。

「……死ぬな」

「ああ?」

「って、書いてある」

これで確定した。これは、西中さんの手紙ではなく、西中さんへの手紙だ。

「ねえ、榛名くん。これ多分西中さん宛の手紙なんだよね。」

「で、お前はどうしたいわけ?」

「多分、この人には西中さん、死のうと思った理由を話したんだと思う。」

だって、結局、西中さんが死んだ理由を完全には理解できてない。私への嫌がらせというのは、推測でしかないのだ。

「私は、その理由が知りたい。」



2011/04/10
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