貴方の隣に


「なに?お前チェシャとキスしたわけ?」

「えー、あぁ、まあ」

「口か?」

「あはは」

なにそれ。

大体あれは榛名の為だし、私がしたかったわけじゃないし、榛名が怒る理由わかんないし、やっぱお前私のこと好きだろ。とは言えない。

「お前、アイツと付き合ってんの?」

付き合っている。現実的で青春チックな珍しい言葉である。私達には不似合いというか。

なんか変な感じだ。

「付き合ってないよ」

「じゃあなんでキス……いつ?」

「榛名が攫われたとき」

「オレが苦しんでる間お前はチェシャといちゃついてたっつー」

いや、お前寝てただけじゃん!そんなこと言えないけど。

榛名と目が合わせられない。でも榛名はこちらをガン見している。

仕方なく机のシミに視線を走らせてみるが、こっちちゃんと見ろ。とそれを咎められてしまった。面倒くさい男。

「あのさ、じゃあ、逆に榛名はなんで私に、き、きすしたのかな?」

「はあ!?」

どっちというわけではなく両方の理由をしりたかった。

榛名がどちらと捉えるかは見物だ。ちなみに私はでこちゅーの方に一票。馬鹿だから自分でバラしそう。

「……どっちの話だよ?」

思ってたより馬鹿だったことが発覚しました。

「両方」

「おま、起きてたのかよ」

ヒキョーモン。と呟いた榛名。卑怯の意味わかって使ってんのかな。

てか顔真っ赤ですよ。多分、私も。

「榛名は、私のこと好き?」

こういうときって質問責めしたもん勝ちなんだよね。

榛名くん。わかるかな?こういうのを卑怯って言うんだよ。

「だからキスしてくれたの?」

向こうの私にも。ていうか、それって私がチェシャとキスしたのと変わんないよね。あれは私ではないわけだし。

「そういうんじゃねーと思ってたんだよ、オマエんことは一番大切だし、好きだけど、恋とかじゃなくて、オマエが他の奴のこと好きでも、オマエを他の奴が好きでも、オマエが誰に嫌われててもいいって思ってた」

最後のは酷い。

でも私もそうだよ。

榛名が誰を好きでも、誰に好かれてても嫌われてても、私は榛名が一番で、でもそれは恋じゃないハズで。

「でもな、オマエがオレよりマッドハッターを心配した時ムカついたし、チェシャとキスしたっつーのも嫌だし、オマエなんかオレ以外から嫌われちまえばいいって思っても、誰かがオマエのいいとこをわかってくれなかったりすんのはムカつくんだよ。」

あれ?私最後のはないわ。榛名が嫌われても痛くも痒くもない。むしろ嬉しいぞ?おかしいな。

「そか。で、それは恋なの?」

「その前に、オマエはどうなわけ?オレのこと」

「きっと大好き。恋愛的な意、」

意味合いで。と言い切る前に落ちた。なにこれ嫌がらせ?どういうこと?

落ちきったところで榛名が不服そうにため息を吐いた。今回に関しては私だって不服だ。

「なに?セカイケーのお話っつーのはまだ解決してねーわけ?」

「いや、あれ嘘だし、そんなことはない筈なんだけど」

「嘘ってお前、なんでいつも嘘吐くんだよ」

「いや、あの、本当のこと言ったら来てくれないと思って」

「それについては後で存分言い訳きいてやっからちゃんと考えとけ」

「はあい」

さてと、穴を開けられるのは三月ウサギかチェシャなわけなんだけど、まあ、この空気を読まないタイミングでこういうことするのは多分チェシャだろう。

「黒いのとアリス、こちらではお久しぶりですどーも」

「……チェシャってめちゃくちゃ私んこと好きだよね」

「自意識過剰乙。」

「あんたのキャラがわかんないよ」

私が座ったまま、チェシャと馬鹿な会話を繰り広げている横で、榛名は立ち上がり自分の服についた土や砂を叩き落としていた。

そういえば、ここ、外だ。

「で、今度はなんの用なんだよ?」

「まあ、今回も多分一日掛かんない用事ですから安心して下さいよ」

「だからなんだっつの」

「双子が家出しちゃったから、捜して欲しいって話です」

「まさかとは思うけど、いつから帰ってないの?」

「そのまさかで。女王様が復活した日から帰ってないんだよ。」

本当に一日で終わる案件なのだろうか。

しかしまあ、終わらせなければ。榛名の次の大会も近いことだし。

「さてと、じゃあ榛名くん。話の続きはいつしようか」

「今でいいだろ」

「このせっかちさん。じゃあさっさと済まそう。私は榛名が好きです。榛名はどうですか?」

「オレもオマエ以外ありえねーよバーカ」

というわけで私達の話は終了。

私と榛名のことだから多分これからも喧嘩は絶えないだろうけど、まあ喧嘩するほど愛してるって解釈でお願いします。

「はあ……ちゃんと好きって言って欲しかったな。」

「オレはあさ子が好きだ。これで満足か」

「うん。大満足。俄然やる気が出た。よしじゃあ、家出人捜索頑張りますか」

私は、とりあえず榛名の隣にいようと思う。出来たら、ずっと。

最終結論。黒ウサギは彼の隣にいます。



2011/06/18


不必要かもしれない後書き

伏線回収しきれませんでした。すみません。

てか終わり方がWJの打ち切りみたいだと感じました。つまり強引。とりあえずアリスパロはこれで終わりにしたいと思います。番外編はやるかもですが。

私のことですから、もしかしたら、「2」とか「Z」とかって銘打って続編もつくるかもしれませんが、しかし暫くは新しくやりたい連載などもありますので、そういうのを済ませてからになると思います。

せっかく珍しく完結出来たので、良かったら感想など頂けると嬉しいです。誤字脱字の指摘もお待ちしております。

ここまで読んで下さりありがとうございます。
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