平凡な朝に


「って、夢かよ」

目を覚ますと、オレは普通に自分のベッドで寝ていた。

変な夢を見てしまった。つーかなんでオレがアリスでアイツがウサギで、オレがアイツを助けなきゃならねーんだよ。

そもそもアイツとオレは離れ離れになったことなんてないじゃねーか。

「バカか」

携帯を開き、メールの受信フォルダを見てみれば、昨日の夜アイツから送られてきたメールが大量に残っている。

「つーか、今日はオレが迎えにいく番だったな。」

そう独り言を言ってベッドから降りる。制服に着替えて鞄を持つと、オレは玄関へ向かった。そして靴を履いていると、いきなり呼び鈴が鳴った。

慌てて靴を履いてドアをあけると、そこには彼女が立っていた。夢の中でウサギだった彼女である。

「お前、今日はオレが迎えに行く番だろ」

「あれ?あ、そっか。あああ、私変な夢見たから勘違いした。」

「なんだよ、変な夢って」

「私がウサギで榛名がアリスで、榛名が私を迎えに来てくれる夢」

そんなことを言いながら、彼女がオレの前を歩いていく。

同じような夢を二人で見るなんてまたベタな、そう思いながら、オレは彼女を追いかける。

そもそもアイツらはささいなきっかけがあれば思い出してしまう程度にしか記憶を消せないのだった。

夢だと思わせようとしたところで同じことである。

「あ、あとね、秋丸が三月ウサギだった」

「似合わねー」

「そう?なかなか似合ってたよ?」

「てかタカヤは?」

「え?タカヤ?なんで?」

そんな話をしながら、彼女は開いたエレベーターに乗り込む。そしてオレも続けてそこに乗り込んだ。

エレベーターには先客がいて、そいつはオレの通っていた中学の制服をきていた。つまり学ランである。

嫌な感じがしたので、オレはため息をついて、小さな声でソイツに話しかけた。

「ったく、なんでオマエがいるんだよ。つーか、そんな顔だったんだな」

「あなたが嫌いだからです。というか、よくわかりましたね。」

あさ子に聞こえないように、そいつはそう言うと、オレに向けて思い切り舌を出した。

やはりタカヤの顔じゃなくてもムカつく。オレもコイツが大嫌いだ。



エレベーターを降りた後、マンションを離れてからオレはとりあえず彼女に忠告しといてやることにした。

「あさ子」

「ん?どうしたの?榛名」

「生意気でツンデレな中学生には気を付けろよ」

「それタカヤ?でもタカヤはもう高校生じゃない?」

「違うヤツ」

つまり、ウサギだからって誰にでも追いかけられてんじゃねーということである。


コイツのアリスはオレだけで十分だ。



2010/11/09
終わりましたアリスパロ。途中まで、というか最後までチェシャがでばって本当にごめんなさい。番外編というか、後日談も書きたいなあ。と思ってます。もしかすると続編もやるかもしれません。
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