平成のやり残し
「なんか年越しみたいで面白いね」
明日から新元号ということで、寂しく一人暮らし中のわたしは、日付が変わるタイミングで友達と電話をしていることにした。
世間では十連休だと言うのに休むことができない会社のせいなのだが、まあ、実家に帰って家族と過ごすことにしていたらこんな風にわがまま言って電話してもらうこともできなかっただろうし、これはこれで結果オーライというものである。
そう、わたしは彼が好きなのだ。
『年越しだとオマエ普通に仕事休みだから電話することねーけどな』
「でもなんかテレビとかが、すごい年末っぽさある。特番とかが今年あったことじゃなく平成にあったことってなってる感じとかが似てる気がする」
『まあ、雰囲気は確かにな。ところで後十分で平成終わっケド、オマエなんか平成のうちにやっとかなきゃいけねーこととかねえの?』
「あったとして、後十分で何ができるっていうのさ?」
『オレはある』
「ふむ、電話切る?」
『そうじゃねえ! とりあえずドア開けろ』
「来てんの!? さっき寂しいって言ったからか! よく三十分でこれたな!」
慌てて外を確認すると、榛名が立っていた。
携帯の向こうから、GW帰ってこないって聞いた時から、今日来るのを決めていたと言う言葉が聞こえる。
それなら先に言っておいてほしい。
「ほら上がって! てかこんな時間によく来たね!」
「オマエの仕事終わる時間いつもマチマチだろ。確実にいる時間狙うとこうなるんだっつの。電話してくれって言われると思ってなかったしな」
「なるほど、とりあえずなんか飲む?お茶しかないけ」
そう言いながら背を向けようとすると、腕を掴まれた。
「何?」
「後5分しかない」
「う、うん、そうだね?」
「本当にやり残しねーわけ?」
「榛名こそやり残しがあったんじゃないの?」
まあここまで来たら気付くけど。
違ったら恥ずかしいからあんまり期待しないで聞いてみれば、榛名は仕方がなさそうに口を開いた。
「お互いいい歳だろ」
「そうだねえ」
「流石に元号を変わったら」
「結婚した方がいいかな?」
掴まれた腕が引っ張られ、抱き寄せられた。
友達だったんだけどな。わたしだけ好きかと思ってたらそうでもなかったようで。
「でも、まずはお付き合いからじゃないかな?」
「結婚をゼンテイにってやつだろ」
「まあ、捨てられちゃったら年齢的に困るしねー。いやー、榛名もプロポーズまでできるようになったなんて、流石に改元だね」
「意味わかンねー」
そろそろ日付変わるかなーとかくだらないこと考えたりして。
でも、榛名と一緒に令和を迎えられて嬉しかったりなんかして。
そういえば、毎年毎年、年越しのたびに誰と過ごすか聞かれてたっけ。
いつも家族と過ごすって言ってたけど、なるほどあれもそう言うことだったのかな。
それなら、やっぱり年越しみたいだ。
「お、日付変わった」
「こんな態勢なのにしれっと時計見てたのか。あけましておめでとー」
「いやだから年越しじゃないだろ」
「まあまあ、令和でもよろしくね」
2019/04/30
平成終わっちゃいますね!
わたしは平成生まれなので、なんか改元って不思議な気持ちになりますねえ