夏は変なやつが増える


「つまりっすね。オレが言いたいのは!」

また榛名がなんか熱く語っているなあ。と、私はぼんやりと考えていた。話を聞かされている秋丸先輩と加具山先輩が可哀想だ。なんで捕まっちゃったんだろ、あの二人。

「スク水ってスッゲー燃えませんか?ってことなわけっすよ!」

ずっこけそうになった。あの馬鹿何を語ってやがるんだ。加具山先輩が、良くわかんねーんだけど、つまり何?と訊いているのが聞こえる。秋丸先輩は呆れた顔をして榛名の話を半分受け流して聞いているみたいだ。流石幼馴染み。

「えーと、つまりっすね……。秋丸はわかるよな?」

「いや、わかんないけど。」

「はあ?ンでだよ?」

「いや、だって今の話突拍子もなかったしさ。話の流れすらオレは掴めてないよ。」

「あ、オレも。」

ちなみに私もだ。さっきまで、三年生の最後大会について話してた気がする。

それでなんでスク水の話になるんだよ。お前の思考回路はどうなってんだ榛名元希。

「つーまーりー。おい!一年マネ!」

急に呼ばれ、私は嫌だったが仕方なく立ち上がる。一体なんなんだ。私は全く関係ないと思うのだが。

なんですか先輩。と、(加具山先輩達もいるので)いつも使わない敬語を使い、榛名のところへ行くと、後ろから、両肩をガシッと榛名に掴まれた。

榛名は私を盾にするように、加具山先輩と秋丸先輩の前に立たせると。よく見てください。と私に注目を集めさせる。何これ凄く恥ずかしいんだけど。

「ここに、見た目も性格も胸も平均な……いや、胸は小さいマネージャーがいます。」

「なに。いきなりなんで私侮辱されてんの?」

つーか今部活の昼休憩中だしさ。二人以外もこっち見てるからね?つか、私の胸の大きさは平均だと思う。宮下先輩と較べんなよバカ。

「ではコイツにスク水を着せてみましょう。どうなります?」

「いや、単に水着だな。ってだけじゃん?」

「榛名の中ではどうにかなるの?」

「なんでわかんねーんだよ!胸以外の全てが平均以上に跳ね上がンだろ!ったくしょうがねーな。オマエ、スク水着てこい。」

まさかの命令に、思わず肩を掴む手を振りほどき、榛名の方へと向き直る。

ていうか、少なくとも性格は変わらないと思うのだが。うん。やはり榛名はバカだ。

それから、は?なんでよ!んなもん持ってるわけないでしょ!と、榛名はお得意の上から目線で、ねーなら水泳部に借りてこい。との事。バカじゃないのかコイツ。いや、だからバカなんだけど。

「水泳部は部活で水着使っちゃってるに決まってんでしょーが!」

「ああ?知るかよンなこと。早く借りてこい。んでさっさと着てこい。」

「借りてこないってば!大体、スク水でグラウンドまで来いっつーの?バカなの?榛名は。」

「借りてくんのが嫌なんだったら、オレの男子用のスクール水着着っか?ぺちゃんこだし問題ねーだろ。」

「大問題だわボケ!つかなんで休みの日にんなもん持って来てんだよ!」

「あ、わり。オレも持ってきてねーわ。やっぱ、水泳部に借りてくるしかねェな。」

というか、加具山先輩と秋丸先輩も、見てるなら榛名の提案を止めてくれよ……。そう思い、ちらりと視線を背後に向けると、既に二人の姿はなかった。二人とも逃げたらしい。

てか二人がいないなら、ベツに私がスク水着る必要なくないか?

「つか榛名。もう二人ともいなくなったから解放してくんない?」

「なんでだよ。」

「二人がスク水の良さを理解しないからこんなことになってんでしょ?で、二人はもういないから、私がスク水着る理由ないじゃん。」

「は?あるっつの。」

「どんな理由よ?」

「オレが見てーし。」

「それならベツに帰ってからでもいいでしょ?なんでわざわざ今なわけ?意味わからな……あ。」

言ってから気付いた。あれ?これ完全に着る流れになってるよね?スク水着る流れになっちゃったよね?じゃあ、今日帰ったら自分のスク水持ってうち来いよ。とにんまり笑う榛名は多分変態なのだと思う。そんな榛名にあれやこれやと色んな期待とかしちゃってる私も大概変態だけど。



2010/08/25
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