幸せの場所/坂田


「坂田くんお誕生日おめでとう」

坂田銀時は、私の戦友である。

もじゃもじゃした銀髪に、だらけた態度。昔はこんなんじゃなかったかと思えばそんなこともなく、ことあるごとに、変わらないなあなんて思わせてくれる人である。

まあ、その点においては、晋助もヅラも辰馬くんも変わらないけれど。

そんな彼の二十何回目かの誕生日。私はテロ活動を休み、お祝いの為に坂田くんのお家に遊びに来ていた。

まあ、お祝いなんてのは二の次で、基本的には彼を勧誘する為なのだけれど。

「そんなわけで心機一転、攘夷活動でもどうだろう」

「いや、どんなわけですかァ? オイ」

ったく、オメーは口を開く度にそれだな、と坂田くんは私を睨みつける。おお、怖い。

自分専用の椅子に深く腰をかけ、鼻くそをほじる坂田くん。まあ、正直言うと、私だってこいつだけは勧誘したくないというか。こいつの仲間だと思われたくないというか。

それでもうちの上の人が、白夜叉の知り合いならオメーが勧誘してこいやとかなんとか言うんだから仕方が無い。ああ、もう面倒くさい。あそこ以外に居場所があれば、すぐにでも辞めてやるっつーのに。

「いやー、坂田くんだって最近暴れたりないんじゃないの? ほら下半身の息子さんだって暴れたい筈だよマジで」

「えっ、いや、おま、……ゴホン。テロリストになってもそっちが暴れられるかなんてわかんねェだろーが!」

「坂田くん今ちょっと揺れたでしょー。うちの子、実を言うと女の子多いんだよねえ。白夜叉なんつったら入れ食い状態だよ? どう? 魅力的じゃない?」

「女の子の発想じゃないよね? オメーも相変わらずっつーか、いや、何もいうまい……なんにせよ、銀さんはそんなことじゃ」

「あーまあ、はいはい、わかってるよ坂田くん。いやー、私もこれお仕事だから言ってるだけだし。正直毛髪陰毛男になんて、うちの可愛い子達を捧げたくない」

「え? 俺誕生日に真っ向から喧嘩売られてない?」

「まあ、そこは置いといて、坂田くん。誕生日だし、何か願いを叶えてあげよう。金のかかることと、勧誘を辞めること意外ならなんでもいいよ」

「それ抜いたらオメーに頼みてーことなんてねェよ」

「うん。わかってて言った」

「やっぱ喧嘩売ってるよな、うん」

しっかし、願い事な……と、坂田くんは椅子から立ち上がり、ソファに座ってる私の向かい側へと移動すると、なにやら真剣に悩み始めた。

なるほど。わかってて言ったという私に対して、ちょっとした反抗ということか。

「じゃ、オメー、材料全部用意はしてやるからケーキ作ってくんない? まあ、銀さん自分で作れるけど? 誕生日に自分で作るっつーのもさみしいもんがあるからね?」

「え、なに、坂田くん誕生日に死ぬ気なの?」

「え? お前相変わらずなのそこも? だが安心しろ。料理と見せかけた毒物に対しての耐性はあるから。坂田さん一家は全員」

「いや、どんな家庭だよ」

まあ、ケーキの材料くらいは自分でお金だしますよ。と、私はとりあえず立ち上がり、外に出ようと玄関にむかったところで、恐ろしい音を耳にする。

これはうん。サイレンだ。

ケーキなんて呑気に作っていられそうにない。

「あっははは、坂田くん大変だ……真選組の人達が……」

「え、なにそれ。人の誕生日になんつー人達お招きしてくれちゃってんの?」

「とりあえず押入れにお邪魔してもいいだろうか」

「いや、そこ女の子のプライベートな空間だから怒られんぞ」

「じゃあどうしろっつーの!」

「んー、そうだな、まあ、脱げ」

「はあ!?」

と、驚いたと同時にソファに押し倒された。

ご無沙汰の筈の彼は、慣れた手付きで私の着物を脱がして行く。

いや、待て待て待て。

「ちょ、坂田くんなにすんっ」

叫びかけたところで、手のひらで強引に口を塞がれる。

カラカラと玄関の扉が開く音がして、近づいて来る足音。

私を捕まえに来たにしては、のんびりとしたものである。

「旦那ァ、パトカーぶっとばして誕生日祝いに来てやりやしたぜィって、なにしてんでィ」

「え、見てわかんない? お取り込み中ですー」

「誕生日祝いに来て、まさか強姦の現場に立ち会っちまうなんて……世の中わかんねーもんでさァ。ところで、旦那、この辺にテロリストの平尾って女が彷徨いてるって話なんですけど、知りやせん?」

「いや、全く知らねーけど。総一郎くんちょっと空気読もうね。今盛り上がってるとこだから」

「まあ、旦那が知らねェっつーなら、面倒臭えしそういうことにしときまさァ。とりあえず見かけたら連絡くだせェ。土方さんには適当に言っておくんで。それから、自分の女の躾はちゃんとしといた方がいいですぜ」

私を余所に話が進んで行くというより、私を余所に話が終わってしまった。

真選組の沖田っぽい人は、それだけ言ってさっさと万事屋から出て行ってしまったのだった。

「って、わけで、銀さんこれから躾に入ろうと思います」

「はあ!?」

「千紗子の仲間になりゃ、あれ? 息子さんが大暴れできるんだっけ?」

「ちょっと待て、とか言って絶対あんたっ」

「仲間なんて、お前がうちの子になりゃいいだろーが。勧誘は辞めなくてもいいけど、向こう辞めろ、な? 願い事一つきいてくれるんだろーが」

「っ! ああ! もう! このもじゃもじゃがァ!」

まあ、つまりなんだ。

なんにせよ、他に居場所できちゃったなら、向こうは辞められるということである。

「くそ、それなら、とりあえずなんか私顔も名前も割れてるから、」

「はいはい」

「せめて名前はちゃんと坂田にしてよね」

もう坂田くんなんて呼べないじゃないか。



2013/10/10
もじゃもじゃ誕生日おめでとう!祝いたくもねーけど祝いますよーバーカバーカ。
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