貴方はそうで、私はこう(成人設定)
例えば、と榛名は口を開いた。
「例えばな、お前のダメなところは、この前、お前のわがままでぶどう狩り行っただろ。人に車ださせて、日帰りで。こっちは朝からそれなりの距離運転して疲れてんのに、帰りのこと考えると、そりゃメンドーでたまんねーのに、お前はテンション低いだのノリが悪いだの、煩かったよな。そもそもお前は三連休の真ん中で、オレは前日仕事だったわけ」
「あー、うん。それで?」
「その上お前、帰りにワイナリー寄らせて、人が車運転するから飲めねーつっつーのに、ちょっと酔っ払って、車乗ってすぐに爆睡するし、行きはそりゃ、ずっとペラペラ喋っててウザいとか思ってたけど、帰りは静かで腹が立つってどんなんだよオマエ」
「榛名はわがままですね」
「そうじゃねえ!」
高校の頃みたいに声を荒げて、彼が何を伝えたいのかがわからない。いや、わかってるんだけど。どうしてこんな話になるんだろ。
「で、それがどうしたの。どうしてそんな話になったの」
「いや、だから」
「そんなに嫌ならプロポーズっておかしいじゃん」
「そういやそうだな。ってちげーよ、ちゃんと話し聞け。つーかなんでプロポーズ……」
「ありがちな、『こんなお前の面倒見れるのオレだけだから』みたいな内容ならプロポーズは断る」
「なにそれひっでえ」
「そういう風にされるのが好きなどMなので、結婚してくださいなら受けるけど」
「そんな情けないプロポーズねえだろ」
「嘘だよ」
そう言って、ため息をつきながら、ソファーに深く腰を掛けなおす。
榛名はそんな私を呆れたような顔をして黙って見ていた。
正直に言おう。私はホントは、彼の言いたいことなんてわかってる。
バカだなーって、そんなことわざわざ言わなくてもいいのに。って思ってる。
「そんなワガママ言えるのも、こんな冗談言えるのも榛名だけ。だから結婚してくれませんか」
「ありえねえ、おかしいだろ」
「これがかっこいいプロポーズです。わかったかな」
「かっこよくねーっつの。ホンット、お前って空気読まないよな」
答えも言わないまま、ノーコンが指輪のケースを投げてよこすので、私はそれを慣れた手つきでキャッチする。
「前置きなんていらないんだよ、榛名」
「あのなあ」
「私は昔っから、結婚相手は榛名以外にありえないなって思ってるんだからさ」
「そういう問題じゃねーっつの。大体、付き合い始めの時、雰囲気考えないプロポーズは嫌だっつったのオマエだろ」
「そうだっけ? でも、まあ、榛名がどんなワガママ言われても、結局許しちゃうのは私だけだってのはわかってるから」
「っと、オマエ、それ」
普通自分で言わねーよ。と、言いつつも図星を突かれて照れる榛名は本当に可愛いもので。
「ね、前置きなんていらないでしょ?」
2013/01/13
珍しく上手なヒロインを書きたくなった。でも、多分ベタ惚れなのはヒロインの方なんだと思う。