サプライズの前の話/沖神(微本誌ネタバレ)


「何しに来たアルか」

「お前に彼氏が出来た(本誌的な意味で)っつーんで、ちょっとみに来てやったんでさァ」

「はあ? お前なに言ってるアル。キモいネ」

「冗談でィ。誕生日だっつーから、成長した姿を見に来たんですけど」

万事屋に、前置き無しで訪れた沖田は、台詞をそこで一旦止めて、彼女の胸元に目をやる。

「残念なところは変わんねェようで」

「お前、それ姉御の前で言ったら殺されるネ。これでも成長したアル」

いつもならここで逆上する神楽だったが、今日は機嫌がいいのか、そう言い返しただけだった。

それもその筈である。今日は朝から誰にも誕生日を祝って貰っていないのだが、彼女は事前に、うっかり口を滑らせた晴太から、早くから彼女を避けるように出掛けた銀時と、それについて出て行った新八が、彼女の誕生日の為に、サプライズを用意していることを聞いていたのである。

それが嬉しくて楽しみで、彼女の機嫌は殊更良かった。

「今日は旦那、居ないんですかィ?」

「銀ちゃんは朝から出掛けてるアル」

「お前の誕生日だってーのに冷たいんですねィ」

「いいネ、その内帰ってくるヨ」

彼女のその反応に、沖田は内心、旦那、バレバレじゃねーですか。と思う。

彼も、サプライズには参加せずとも、銀時がそれを企画しているのを知っていたのだ。なので、あえて鎌をかけるようにその話をしたわけなのだが、この反応からすると、彼女はわかっているのだろう。そう判断したわけだ。

しかし、彼からすれば、それをどうにかしてやる義務もなければ、必要も見出せないので、自分の用事を済ますために、その話題を流し、話を進める。

「家族で住んでたとき、テレビとか新聞は見てたんですかィ?」

「? パピーは見てたネ」

「ふーん、まあ、なんにせよ、いい家庭だったんでしょうねィ」

「なんでアルか?」

出て行った兄や、亡くなった母、そして今話に出た父のことを少し思い出しながら、彼女は彼の言葉に対しての疑問を口にする。

「いい家庭でもなきゃ、親が地球の暦の上での誕生日なんて、娘に教えやせんぜ」

地球には資源が多く、他の星々に比べれば穏やかな気候で過酷な環境ではない。

その為、攘夷戦争の末、開国させられた地球は、貿易の盛んな星となっているわけだ。

そして、もちろん自転周期、公転周期などの違う他の星には、他の星の暦があり、その国では、主にそれが流通しているのが現状であるわけなのだが、やはり、ニュースなどでは、地球の暦が出ていることも多かった。

多分、神楽の両親は、そういった方法で、地球暦での彼女の誕生日を知り、彼女に教えたのだろう。

「旦那が言ってやしたぜ。お前が、自分の誕生日を地球暦で言えてビックリしたって」

「マミーが教えてくれたネ。パピーのも、家族皆の言えたヨ」

兄の名前を出そうとして、躊躇し、結局家族皆という言葉で誤魔化した神楽に、事情を知る由も無い沖田は気付かなかった。

「で、結局なんの用アルか? 胸の成長見に来ただけなら帰るアル」

「オレも、サボりの途中なんで、これ以上ここで時間無駄にしたくないんでねィ。そろそろ帰りまさァ」

そう言いつつ、ポケットをゴソゴソと漁る沖田に。神楽は少し不信そうな顔をする。

「お前のとこ、犬いただろィ?」

「定春のことアルか?」

「アレにそっくりなぬいぐるみのストラップがあったんであげまさァ。お前、傘だったかに、なんかストラップつけてたろィ? アレと一緒につけときなせェ」

意外な人間からのプレゼントに、驚いた顔をする彼女。

プイ、と顔を背けた沖田に、神楽はありがとな。とくしゃりと笑った。

「あ、爆弾か何かし掛けてあったりしないアルか?」

「そんなちっせえのに、器用な真似出来るわけねェだろィ。そもそも、テメー殺すなら、もっと正面から行きまさァ」

「それもそうアルな」

神楽は、そう言うと、早速番傘を取り出し、ストラップをつけ始めた。

それを満足気に眺め、つけ終わったことを確認すると、彼は、じゃあな、と万事屋の階段を降り始める。

すれ違った新八に、挨拶をし。これから始まるのであろう、バレバレのサプライズパーティーの行く末を想像しながら、沖田は自分がにやけていることに気付き、屯所に戻った後、それを誤魔化すように山崎のバトミントンの羽根を破壊する作業に勤しむのであった。



2012/11/03
神楽誕生日おめでとう!相変わらずの捏造設定サーセン!
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