断罪と贖罪について/坂田


うさぎが寂しいと死ぬってのは嘘なんだよ。

からり。と彼女が笑う。

うさぎは元々群れで生活する動物ではないからね、だから寂しくて死ぬわけがないんだよ。

寂しくて死んだと勘違いしたのは、多分、旅行かなにかでうちをあけたときに、いつの間にか死んでいたからじゃないかな?

餌を沢山置いておこうが、うさぎは1日にこれだけ食べる。なんて加減出来ないからね。最初に全部食べて、飢えて死ぬのさ。

それに見てご覧よ。神威が寂しくて死ぬと思うかい?神楽だって寂しい思いは沢山してきたさ。でも死ななかった。納得するには十分な実験結果だろう?

「実験って、なんだよ。」

なにを隠そう、最初に二人に暴力を教えたのは私でね。師匠とまでは言えないが、というか君の前では師匠なんて死んでも言いたくないからね。

神威のやつにはやつが鳳仙の元に行くまでずっと喧嘩の仕方を教えてきたし、神楽には親父があまり帰らなくなった時から、身を守る術を叩き込んでみた。

二人とも程よく私になついてくれたから、なついたところで捨ててやったんだよ。でも二人は寂しさで死んだりしなかった。寧ろ更に強くなったと言っても良いくらいだ。

「お前は、あいつ等を何だと思ってんだ。」

「よく言えば玩具、悪く言えば道具だね。」

それだけ言うと、先程の演説が嘘のように、黙り込み、今度はふわりと笑った。にやりじゃないところがまたいやらしい。

これも実験か。どこまでいけば俺がキレるか、それを試しているのか。質の悪い。

「お前、他に何をしてきた。」

「他は何もしてないよ。見てきただけ。師匠を殺されたからと世界に復讐しようとする愚か者や、世界に自分を認めてもらうためと奮闘する中途半端な政治家や、愛する男を待って婚期を逃した女や、その女のひねくれた弟の消化しきれない気持ち、なんかをね。皆君の知り合いだろう。皆馬鹿げてるし狂ってる奴等だよ。君に出会う運命にある人間は皆こうなるのかもしれないね。うん、つまりさ」

君が死ねば、皆幸せになるんじゃないかな?

酷く優しい声色で、酷く残酷な台詞を彼女はあっさりと吐いた。にっこりという効果音つきの笑顔は、ただただ愛らしく、とても俺より年上には見えない。

「それでも君は、生きたいのかな。周りに不幸を撒き散らしながら、」

「それを償えるようになるまで、俺は生きるよ。」

「じゃあ地球が滅亡してもまだ生きないと足りないね。」



2010/08/13
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