解答用紙はいつも白紙/臨也
「下手に頭が良いと、変なことを頭良さそうに語るから嫌だよね」
「自分で言います?」
「誰も俺のこととは言ってないよ」
臨也さんはそう言うが、あからさまに、明らかに、私にとってそれは臨也さんのことだった。臨也さんは多分、というか絶対私がそう思うのをわかっていながら、言ったのだろう。想像通り。とでも言うように笑っている。
「ほーんと、臨也さんって性格ひん曲がってますよね」
「君には劣るよ」
「それをあなたにだけは言われたくなかった」
確かに、私はかなり性格が歪んでる。でも基本的にそれは臨也さんのせいなのだ。臨也さんにつられた、というわけではもちろん無いが、臨也さんが臨也さんであったから、私はこんな私にならざるおえなかった。
あの日、臨也さんに出会ってなくても、それでも私はこんな私になっていたかもしれない。でも、加速させたのは確かに臨也さんだった。
『君は何が知りたい?』
(私は、)
『想い人の行方かな? それとも、自分が騙されていた事を教えて欲しいのかな?』
さらりと、無償で、彼は私に事実を告げた。騙されていた事なんて、とっくに気付いていた。でも認めたくなかった。なのに、彼は半ば強制的に、それを認めさせた。
そこから歯車が狂いだし、私はこのザマだ。あのペテン師の行方追うために学校を辞めて、見つけ出したその男を臨也さんに手伝ってもらって懲らしめた。
そしてその後、勝手に学校を辞めたせいで、家を追い出された上に、なんのやる事もなくなった私を待っていましたとでも言うように臨也さんは引き取り、自分の住むマンションに私を置いてくれている。その理由は未だにわからない。彼は、私に身体を求めてくるわけでもないのだ。
「今更なんですけど、臨也さんは私を家事やらせる為だけにここに置いてるんですか?」
「勝手に家事をやり始めたのは君だろ? 嫌なら止めていいよ」
「じゃなくて」
「俺には君が必要だから傍に置いている。これが答え。納得した?」
「納得しませんよ。私は、なんであなたに私が必要なのかが知りたいのに」
あなたの口から聞きたい、ただ一つの答えがあるの。私はそんな乙女チックな事を言ってるつもりはない。
私は本当にただ知りたいだけなのだ。私の普通だったはずの運命を曲げてくれちゃった、最悪な恩人が、なぜ自分を傍に置くのかを
「うーん、正直に言うとさ、俺にもわからないんだよねえ」
「は?」
「質問タイムは終了。俺はちょっと出掛けてくるから。留守番は頼んだよ」
わからないってなんだよ。そう思った。喜べばいいのか、喜んでいいのか、私にはそれがわからない。
「私はあなたの口から、確かな一言がききたいだけなのに」
先ほどの乙女チックな台詞と似たような単語の組み合わせだが、意味は全く違う。そんな台詞を、出掛けようとしている臨也さんの背中に投げかけた。
「とりあえず、帰ってきたらね」
その返事に期待した私には、本当は彼の口から聞きたいただ一つの言葉があるのかもしれない。
2011/07/23
私が書く臨也にしては恋愛要素がある(?)話です
臨也を好きになった最初の頃に書いたやつだからだと思われます