君の名を呼ぶ


「ごめん榛名。プレゼント用意すんの忘れた……。」

「ベツにいーけど。」

「え?マジ?」

絶対に怒ると思っていた為に、少し拍子抜けした。榛名にもいーとこあるんだなー。なんて思ったのたが……甘かった。彼は続けて、その代わり。等と言って来たのである。何をさせられるんだ私……!

「オレンこと名前で呼べ。」

「え、無理だよ。いつも言ってるじゃん。」

「いーからホラ。」

「無理無理無理無理無理!」

だってそんな……。も、も、も、…………希、だなんて呼べるわけないじゃん!ほら!心ん中でも無理なんだから!それに私彼女でもなんでも無いんだよ?単なる友達なんだよ?なのにそんなこと、

「オレが呼べっつってンだから早く呼べよ。」

「無理!絶対無理!」

「オマエ、秋丸のことなんて呼んでるっけ?」

「きょうへー又は、きょうちゃん」

「オレのことは?」

「はるな、バカ、ノーコン。」

「チッ、とりあえず今日ぐらい呼べよ。元希って。」

うわあああ!名前聞いただけで照れる!バカだこの人バカだ!(いや、私がバカだ。)私がそんな風に呼べるわけないじゃん!考えろよ!大体、クラスの女子に、も、も、元……きくーんとかって、名前で呼ばれてんだし、それで我慢しろよ。なんで私にも、と…………とか呼ばせたいわけ?意味がわからない。

「やだよ。なんでよバカ。」

「ベツになんでもねーよ!呼んで欲しいンだからしょーがねーだろ!」

「理由もわからずに呼べなんて無理だよ!彼女でもないのに!」

「じゃあ彼女になりゃあいーだろ!オマエは今からオレの彼女!ほら元希って呼べよ!」

「は?」

唖然とする私に、榛名は、あと十秒で呼ばねーとキスすっから。と、カウントダウンを始めた。え?今の台詞って、その勢いで言うこと?言った後、普通しまったって顔しない?そんなことを考えていると、カウントダウンは既に後三秒になっていた。

「さーん、にーい」

「ちょっと、榛名!待ってよ今の、」

「ホラ。早く呼べ。いーち」

「その前に質問に答えろ!このバッ……」

私、の台詞に被せるように、ぜろっ!と言うと。榛名は強引に私を抱き寄せ唇を重ねた。唇はすぐに離れたが、かなりびっくりしたし、いきなりのことにショックは大きい。雰囲気もくそもありゃしないじゃないか。ムカついたので思い切り睨み付けてやると、榛名はニヤリと笑いながら一言。

「じゃ、また十秒な。」

「は?」

「キスされたくなかったら早く名前で呼べよ。次は舌いれっから。」

「ちょっと待ってっ!なんでそうなんの?キスするとか意味わかんない!」

「彼女にキスしてなにがわりーんだよ。じゅー、きゅー」

「ああ、もー……。わかった名前で呼ぶからカウントダウンやめて!」

「なんでだよ。呼んだら止めてやるんだから同じだろ。ななー」

「うう…。も、も、も、も、と」

「もう後五秒だぜ。こりゃキス確定だな。よーん、さーん」

「も、もとっ」

「にー、いちー」

「もとき!」

そんなにキスすんの嫌かよ。と不服そうに、榛名は私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。カウントダウンが終わったことに私が安心していると、榛名は私を抱き締め、耳元で拷問のような言葉を囁く。あ、コイツほんとサイテーだ。

「今度から、榛名って呼ぶ度キスだからな。」

「は?」

「つーか、元希以外で呼んだらキスするって決めた。だからバカとかノーコンとかっつーのも罰ゲーム。」

自分のキスを罰ゲーム呼ばわりするなんて榛名は本当にバカだと思う。てか誕生日プレゼント買い忘れたくらいでどうしてこんな目に遭わなきゃならないんだろう。とりあえず今日は家に帰ったら榛名を名前で呼ぶ練習をしなければ。

「オイ、返事しろよ。」

「はいはいわかったってば。はるなのバーカ。……あ。」

「オマエ可愛すぎ。」

さてさて。家に辿り着くまでに、私は何回キスをされなければならないんだろう。

とりあえず、二桁はのる気がするなー。と、零になった榛名との距離を感じながら思った。



2011/05/24
一昨年の榛名誕生日企画に捧げたやつです。タイトルを微妙に日本語に変更。
×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -