欲情スパイラル


余裕ありすぎる女って嫌だよな。

例えば、クラスの男子だけで盛り上がってた下ネタトーク、所謂猥談ってヤツを女子に聞かれたとして、女子がきゃあきゃあいいながら、最低だの言ってきて、男子は焦りながら言い訳して

「どんなAVが好きなのかと思ったらやっぱ巨乳モノなわけね」

そういう青春なんてのをオレのベッドの下から発掘したそれを動揺もせず眺めて、無防備にベッドに腰を掛け、ケラケラ笑う彼女は送っていないに違いない。

「彼氏がAVとか嫌じゃないわけ?」

「エロくない男のが気持ち悪いよ」

「そうじゃなく、オマエ以外でヌいてるってのは」

何言ってんだオレ。とか思ったけれど、彼女相手にかっこつけるのは最早無意味だし。むしろここで照れる方がかっこわるい。

気持ちを落ち着けるように彼女が買ってきたポテトチップスを口に放り込み、咀嚼する。ごくんと飲み込めば、焦りも身体の奥に消えて行った。

「榛名さ。本当に私以外でヌけてる?」

「は?実際このA……」

「このAV女優を抱いてる想像してヌいてるわけじゃないと思うなー。想像するのは淫らに乱れる私じゃないの?」

自信過剰だと言いたいけれど図星だったり。しかも図星ってことに今気付いた。

自分はもっと即物的なヤツだと思っていたのに。

言い返そうにも喉が乾いて、うまく声を出せる気がしない。

「榛名くんさ、私のこと大好きだよね」

「うぜ」

案の定掠れた声。伸ばしたハズの語尾はきっと彼女に届いていない。

それでも伸ばした腕は届く。

抱き締めて押し倒すことは容易に出来た。喉が渇いているのだ。

強引に唇を重ねて、その隙間に無理矢理舌をつっこめば、流石の彼女も少しはしおらしくなるだろう。

オレを感じて跳ねる身体も、何から何まで愛おしい。大人らしく、大人しくしてれば良かったのにな。

余計なことばかり言って、オマエは自分の余裕の無さをオレに晒していることにいつまでたっても気付かない。




「なに?アンタの見てるAVの中には強姦モノでもあるわけ?」

「は?抵抗しなかっただろオマエ」

「抵抗した。バカ、サイッテー」

朝は余裕あるフリすら出来ないくらい全く余裕無いよな。と笑ってやれば、枕を全力で投げつけられた。痛くも痒くもない。

「早く服着ねーと襲うぞー」

「服着てる最中に欲情するでしょ榛名は」

「あ?なに、つまり誘って」

「無い!服着るから出てけ!」

仕方なく言うことをきいてやる。まあ、確かに脱ぎかけだの着かけだの、半裸ってのはイヤらしいし、欲情するってのは間違っていない。

余裕が無くても、彼女はわりとオレのことをお見通しで。それは多分、愛。

「あ、榛名。ちょっとやっぱ中入って来て」

「あ?」

「背中のファスナーが上がらないの」

またベタな。そう思いながらファスナーを上げてやれば、彼女は振り向いて上目遣いでオレを見る。

オマエ結局どっちなんだよ。余裕あんの?それともないわけ?

「ねえ、欲情しない?」

しないわけねえだろ、バカ。

そのまま彼女を押し倒せば形だけのぬるい抵抗。それがまた燃えるということを彼女は理解しているのだろうか。



2011/05/02
何故か微妙にやらしい話を書きたくなりました。
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