まぶしい太陽、潮風に揺れる芝生と木々。
芝生広場につくと、何かから解放された感じがした。
きっと宮殿から離れられたからだ。
解放感に浸りながらも、日没までに怪鳥の情報を集めないと。
ウェンは歩き出した。
周りに子どもたちが走り回ってはしゃいでいる。
そういえば昔、まだ子どもの頃ここでよく転げ回って遊んでいた。
ウォルウールの暑さの中でも冷たいここの芝生が気持ちよくて毎日ゴロゴロしていたのが懐かしい。
そんな子どもの頃の思い出を思い出しながら、まずは近くにいた走り回っている元気なおじいさんから、話を聞くことにした。
「おいじいさん。ちょっといいか?
最近デカイチキンが暴れてると聞いたんだけどそれって本当なの?」
「……何を言ってる、チキンは肉屋に行けばあるだろう?」
「いやそのチキンじゃなくて、空を飛び回ってる」
「はぁ? 兄さんなに言ってるんだ。鶏は空を飛ぶことはできないよ」
ウェンの話とじいさんの話、絶望的に全然噛み合っていない。
こんな調子じゃいくら頑張っても怪鳥の情報をとれない。
「そ、そうだよな〜あぁ〜俺馬鹿だバカだ」
じいさんは不思議そうに首を傾げて、また元気よく走り去って行った。
じいさんだからボケているのか、はたまた……。
ウェンは異様な空気に包まれた芝生広場を見回した。
遊んでいた子どもたちも、子どもを見ている大人たちもウェンに目を向けていた。
アースの言うとおり口封じをしているのか……。
これだと貴族から情報を絞りとっているアースの方が情報集まりやすいような気がするが。
こっちは住民から住民から情報を無理やり絞りとるわけにはいかないし……。
――さて、どうしようかな。
ウェンは頭をぽりぽりかきながら、空を見つめた。
綺麗に澄んだ青空には街を脅かしている怪鳥の存在なんて全くない。
第一本当にそんな鳥はいるのか?
「……すみません」
怪鳥の存在を怪しんでいた時、誰かに声をかけられた。
後ろを振り返って見ると、そこには白い髪の毛の女性が立っていた。おそらく20過ぎぐらいだろう。赤と青の左右の色が違う不思議な瞳の色をした、素敵なお姉さん。
「……あの、もしかしてあなたが《あの子》を助けに来てくれた人?」
「あの子? (あの怪鳥のことか?)」
ウェンが首をかしげると、お姉さんはあたりを見回して何かを警戒した顔で小さな声で話始めた。
「《あの子》私の友達クーちゃんが怪鳥が出てからずっと行方不明なのよ」
「クーちゃん、ねぇ。……んでそのクーちゃんがいなくなった原因、その怪鳥ってどこにいるかわかる?」
お姉さんは笑顔で頷くとウェンの服の裾を引っ張ってスタスタと歩き始めた。
たぶん怪鳥のいる場所に連れて行ってくれてると思うのだが、そこに着いてもウェンは怪鳥の相手はできない。
もし相手にしたら、強行突破大好きアース“さん”になんて怒られるか、考えるだけでも怖い。
「君はなんで怪鳥のこと俺に教えたんだ? ……みんな黙ってるのに……」
確かに街の人の中にはルールに縛られるのが嫌でベラベラと宮殿の前で、皇帝の悪口を永遠と言う馬鹿な奴もいるが。
「みんなが言えないから。私が困ってるみんなのかわりに本当のこと言っただけ。
それにあなたは私が言ったこと騎士団に言うような悪い人には見えないし」
お姉さんはウェンを見てにっこりと笑った。
とりあえずこれは誉められていると思ってもいいのか?
「あ、ありがと」
どう返していいか分からないウェンも、とりあえずそう返して笑顔でお姉さんを見た。
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