伝えたい言葉






「初めましては?」
「Nice to me too」
「じゃ、ありがとう。」
「Thank you」
「ふふ、土方くんは覚えが早いね。」
「ったく…明後日には英軍から銃の指導を受けるとか突然言い始めたのは大鳥さんだろうが。」

広間に足を運ぶと、何やら大鳥さんと土方が話し込んでいた。
近々英軍の偉い人が来るって言ってたし、向こうの事でも教えてもらってるのかな。
そう思った僕は引き返そうとするも、
「お、総司じゃねぇか。」
という土方さんの声に、思わず立ち止まってまう。

「んな所で突っ立ってねぇで、お前も来い。」
「勉強中じゃないんですか?」
「お前も少しくらいは学んでおけ。」
「いやですよ、そんな面倒な事。」
「いいから来やがれ。」
「…強引なんだから、」

僕は文句を言いながらもお邪魔します、と大鳥さんに声を掛けて広間へと入る。
文机に広がる、難しそうな書類。
瞳を通しても、異国語で書かれた其れは到底読めそうに無い。

「もう英語話せるんですか?」
「簡単な言葉だけならな。だから大鳥さんに教わってんだ。」
「ふぅん…副長ともなると大変ですね。」

僕はあくまで他人事。
土方さんみたいに面倒事を背負い込むのは御免だし、たった二日で英語が話せるようになるとも思えない。

軽く息を吐きながら文机を眺めていると、突然掛けられた声に僕は顔を上げる。

「総司。I make you happy through life. 」
「…はぁ?解る訳無いじゃないですか。」
「別にいいんだよ。俺が言いたかっただけだからな。」

涼しい顔で笑いながら、土方さんは目の前の書類を整える。
それらを持つと、そのまま部屋へ戻った。

残された僕と大鳥さん。
大鳥さんは隣でくすくすと笑っている。

「…何ですか。」
「いや。沖田くんは愛されてるんだなぁと思って。」
「はぁ!?な、な、何言って…!!」
「だって今、土方くん、−−−−−−−−」





「土方さん!!」

広間を出ると、僕は廊下を駆け抜けて土方さんの部屋へと向かう。
声を掛ける事もせず襖を開けると、当の本人は文机に向かいながら先程の書類を読んでいた。

「総司、どうかしたのか。」
「どうかした、じゃないですよ!!」
「…何だ、大鳥さんの奴、喋っちまったのか?」

どうしようもねぇな、何て言いながら土方さんは書類を読み進める。。
僕は畳をに腰を下ろすと、土方さんから目を逸らして俯いた。

もう全く意味が解らない。
何で、何で僕が照れなきゃいけないの。

そう思うけど、心臓の音はやけに大きく高鳴り、顔に熱が集中する。


「土方さんの馬鹿…。」
「あぁ?」
「何で…あんなこと、言うんですか、」
「何でって…本心だからに決まってんじゃねぇか。」
「英語の勉強って…あんな言葉、明後日使う気なんですか?」
「んな訳ねぇだろうが。てめぇに言いたかっただけだ。」

1つ1つの言葉に、どきどきする。
僕以外聞けない、英語で伝えられる言葉。

それでもやっぱり…


「………日本語で、言って下さいよ、」
「あぁ?」
「土方さんの口から、聞きたい、です……。」

自分で言って恥ずかしくなる。
さっき大鳥さんから教えて貰ったから、訳だって知ってるのに。
これじゃまるで、自分から土方さんに告白を強請っているようなもの。

「ったく、仕方ねぇな。」
「…え?」
「やっぱりこうゆうのは、直接言わねぇとな。」


土方さんは立ち上がると、畳に座る僕の正面に腰を下ろす。
かち合った真剣な眼差しに、胸が熱くなった。


「総司、俺が一生幸せにしてやる。」
「……はい。」

左手を取られ、手の甲にゆっくりと土方さんの唇が触れる。


「他の人には、言わないで下さいね…?」
「当たり前だろ。お前だけだ。」
「…約束ですよ?」

二人愛し合った記録は、どこにも残せ無いけど。
寄り添って生き抜く保証なんて、何処にも無いけど。。


その言葉を、瞳を、笑顔を。


独り占め出来る僕は幸せだって、心から思える。


僕も大好きです、土方さん。





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