あまいあまい




少なくとも俺は、最高に幸せな時間だと思う。


「まだ髪濡れてるじゃねぇか」


膝に乗せた平助の頭をそっと撫でる。
湿り気どころか、まだびしょびしょだ。


「えー。だったら左之さんが拭いてよ」

「お前なぁ…」


ため息をつきながらも、可愛い恋人のわがままなら聞かないでもない。
平助をどかしてタオルを一枚持ってくると、ソファーに座った俺の足の上に嬉々と座ってくる。


「左之さんにこうされるのとか撫でられるの好きだな。俺、頭触られるの大好き」


そんなことを満面の笑みで言ってくるのだからたまらない。
また今度もやってやろうかななんて、まさかこいつ計算じゃねぇだろうな?


「おし、だいたいいいんじゃねぇの?」

「さすが左之さん。あ、そう言えばプリンあったよな?食べよう左之さん!」


ぴょんと俺から降りて、冷蔵庫の中に入れてあった箱を持ってくる。


「はい、左之さん」

「ん、ありがとよ。そうだ平助」

「ん?」


プラスチックのスプーンで一口分掬って平助の口元に運ぶ。
平助は反射的に口を開いてパクリと食べた。


「うめー!!」

「お前ホントに好きだよな」

「ホントにうまいんだって!左之さんも食ってみろよ!」


平助はお返しとばかりに、俺がしたように一口掬って俺に食べさせようとする。

が、


「なぁ平助、さっきのこと忘れたのか?」

「さっき?」

「お前の髪の毛乾かしたこと。あれのお礼もしてもらわねぇとな」


いまいち理解が出来てないらしい平助の耳元でポソッと言うと、たちまち顔を赤くする。


「大したことじゃねぇだろ?」

「…何で、俺ばっか」

「お前ばっかじゃねぇよ。つーか、甘え放題なお前が悪い」


ニヤリと笑って出来ねぇなら仕方ねぇなと言えば、平助はさすがにムキになって出来るし!とプリンを口に含む。

平助が俺の首に腕を回して、そのまま唇を重ねる。


「ふっ…んう…んん」


俺の口内に平助の舌と少し温かくなったプリンが入ってきた。
小さな塊を飲み込んだのが平助にもわかったらしく、舌を引こうとする。


「んんぅ!?」


俺は平助の頭をしっかり手で押させて、逃げようとする舌をうまくに留めながら、平助の口内を味わう。


「…甘ったりぃな」

「口移しだけって左之さんが言ったんじゃん!」

「あ?“だけ”だなんて言ってねぇぞ。いいじゃねぇか、頭触られんの好きなんだろ?」

「そういう問題じゃ…んっ!」


まだ反論しようとする平助を無理矢理黙らせる。


「こういう時の常套手段だな」

「…ずりぃよ左之さん」

「ほらほらヘソ曲げてんな。口、開けろよ」

「え?ん…ぁ」


カップ半分くらいのプリンを口にかきこんで平助にキスをした。
たぶんしばらくの間は終わらないだろう。




あまいあまい君との時間




怒る暇なんて与えない。
あげるのはプリンと――





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