短冊に想いをこめて




学校の帰り道、陽が傾いているのに暑さは和らぐことはなく頬を撫でる風も生ぬるい。
鞄の中から聞こえるメールの着信音に気付いた沖田は携帯電話を取り出した。


「醤油を買ってきて」


母からの用件のみのメールに、解ったとだけ返信して沖田は自宅近くのスーパーに立ち寄ることにする。
店の入口では、大きな笹が立っていた。
風に揺れる緑葉の間に見え隠れするのは色とりどりの鮮やかな短冊達。


「…………」


彦星と織姫が1年に1日だけ会うことを許された日が近い。沖田は笹を見上げて恋人である土方を思う。毎年盛大な七夕祭が行われ、多くの恋人達が集まる。
その七夕祭に一緒に行きたいと沖田は土方を誘ったが、土方には仕事を理由に断られてしまった。


「一緒に行きたいな」


ポツリと呟きながら沖田は母に頼まれた醤油を探す。
学校で毎日会っているし、週末も土方の家に遊びに行く。空の2人とは違い1年に1日しか会えないわけではない。
けれど七夕祭に一緒に行けなくても良いとは思えなかった。
学校では周囲の目もありイチャイチャは出来ないし、週末は週末で土方はパソコンに向かい沖田は彼の背中を見つめていることが多い。
レジで会計を済ませると、店員が1枚の短冊を沖田に手渡した。
6日までに買い物をしてくれたお客様に短冊を渡して店先の笹に飾って貰うサービスを行っているらしい。恋人の瞳と同じ色した短冊に沖田は願い事を書きこんだ。


「土方さんと一緒に天の川が見れますように」


七夕は恋人達が愛を確認する行事だと沖田は思う。彦星と織姫のように互いの想いを伝え合う日ぐらい仕事より自分を優先して欲しいと短冊に願いを込めた。


天気予報は当日、雨だと言っていたが沖田は晴れますようにと心の中で唱えながら短冊を笹に括りつけて、茜色の空を仰いだ。










Written by 千景さま





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