骨の髄まで捧げようと誓う

斎藤羅刹化

























ポタ、と雫が一滴こぼれ落ちた。
それは土に染み渡って色を変え、やがて渇いて消えていく。
だがそれよりも先に次から次へと新たな雫が土を濡らす。
月明かりの下、はっきりとは色の判別ができない。
しかしその雫が一体どんな色をしているのかなど、自分にはわかっていた。

(…痛い)

――けれども快楽すら感じるように思えるのは自分が狂ったからなのだろうか。
深くゆっくりと息を吸って、吐いてみる。
酸素が流れていくことも感じてしまえるような気がした。

「――…はじ、め…くん」

自分に抱きつく相手の名前を紡ぎ出す。
呼ばれた彼は視線だけをこちらへ向ける。
瞳の色は普段の彼が持つ深い蒼ではなくて、地面へとこぼれていく雫と同じ赤。
そして髪も紫がかった蒼ではなく、月に照らされて眩しく輝く白へと変貌していた。
彼は――そう、羅刹と化している。
欲望を剥き出しにし、渇きを癒すために血を啜っているのだ。
恋人である己、の。
本来の彼ならばおそらく血を拒んだだろう。
事実今までずっとそうしてきていたに違いない。
人間が食事をするのと同じように、羅刹には生きた血が必要なはず。
それなのに一度しか血を口にしたことがなかったのだから。

(我慢しないでって、あれほど言ったのに)

心の中で呟く。
羅刹ということを認めてくれれば、何かが変わったかも知れないのに。
もう、手遅れ。
本能的な悦びに満ちた彼は、この身体に流れる血が枯れてしまうまで啜ることだろう。
すでに死を直感していた。

「……」

力の入らない腕をなんとか持ち上げて彼の髪を梳くように撫でる。
すると一層強く噛みつかれた。
思わず顔をしかめてしまうが、今の彼は気にもとめない。
それでも、努めて笑みを浮かべるようにした。
本来の意識に戻った時、自分が死んでしまっていても。
笑みを浮かべていれば少しは救われないかと、願って。
そうしているうちに、どんどん意識が遠くなっていく。
見えている景色がぼやけていく。
音が聞こえなくなってい……


















































この命、誰かのために捧げるなら
誰よりも深く愛した、君のために



(さようなら)





僕との思い出だけは、君の中に残ると信じて





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