「短刀部隊のみんな、ここまで歴史修正主義者の残党を追い詰めてくれた。ありがとう。おかげで奴らは今屋外まで逃げようとしているとこんのすけから報告は受けてる。屋外に出るってことは、今までの室内とは戦場がまた変わってくるってことだ。よって今回から一度部隊を全て解体し、編成をかえようと思う」
主の発言にいよいよ僕達は歴史修正主義者の残党狩りが佳境を迎えていることを改めて実感するのだ。みんな主の言葉を一字一句聞き逃さないようにじっと見つめている。
「今回は大きな編成の変更になるから聞き漏らさないようによく聞けよ。いよいよ池田屋攻略が最終局面だ。池田屋攻略には短刀部隊が今まで尽力してくれたことはみんな知ってると思う。池田屋の戦況を一番把握してることもあるし、一番隊長は物吉貞宗を任命する」
大広間がざわめいた。この本丸が立ち上がってから、初期刀である僕がずっと一番隊長と近侍を務めていたこともあり、衝撃が広がっている。遠征にいくために誰かが代役をしたことはあってもほんの2、3時間の話だったから、僕が思っている以上に知らない刀剣男士が多かった。だからか、任命された物吉貞宗本人が固まっている。
「ぼ、ぼく?僕が一番隊長ですか?そんな、えええっ!?」
「なにを驚いているんだい?前手当部屋で話した時が来たってことだよ」
「そ、そんな、一番隊長の話までは聞いてないですよ、歌仙さんッ!僕、てっきり遠征の時みたいに、歌仙さんが2番隊に来てくださるのかとばかり......」
「そうかい?さっき主もいったように、池田屋について一番詳しいのは他ならぬきみだろう。他に適任はいないと思うけどね。それだけ正念場なんだよ。屋外に完全に出るまでは君たちが主戦力なのは変わらないわけだから。がんばれ」
「は、はいっ!ぼ、僕がんばりますっ!」
「おめでとう。今日から1番隊長はきみだ。近侍の仕事もがんばるんだよ」
「えっ、あ、そ、そっか、一番隊長ってそういうことですよね。が、がんばります!」
僕が進んで拍手したからか、周りの僕と主になにかあったんじゃないかって雰囲気はとりあえず治まった。
「次に隊員を発表する。次郎太刀と歌仙兼定」
「おう、アタシか!わかったよ、主。でもまだ外に出たってわけじゃないんだろう?大丈夫なのかい?」
「大丈夫、近江屋の屋上から屋外まで逃げようとしているからな。室内でも裏路地でもない」
「まってました〜、そうこなくちゃね!」
「雅が分かる者と組ませてくれよ?」
「前から思ってたが、お前のいう雅ってのは風雅か?風流か?」
「もちろん、そのどちらもさ」
「そっか、じゃあ今度小鳥丸たちと組ませてやるから真面目にやってくれよ」
「了解」
「小夜左文字」
「うん、わかった。そこに、敵(かたき)がいるのなら、僕はいくよ」
「いい返事だ。最後は前田藤四郎。以上だ」
「全力を尽くします」
「よろしく頼む」
「はい!」
「1番隊は以上だ。2番隊長はソハヤノツルキ」
「お、俺?ほんとに俺でいいのか、主?まだ畑仕事から抜け出せてないんだけど」
「それは歌仙も物吉貞宗も同じだから心配するな」
「でも岩融や巴形薙刀は?」
「それは前話したとおり、3番隊長と4番隊長を任命するつもりだから問題ない」
「そっか、やった。やっと守り刀の本領が発揮できる!」
「おめでとう。続いて隊員だが、大典太光世、小烏丸、大倶利伽羅、和泉守兼定、蜻蛉切、以上だ。連携を確認するためにあとから演武に連れていく予定だから、準備しておくように」
主は一呼吸おいて続きを話しはじめた。
「さっか話したが、岩融は3番隊長、巴形薙刀は4番隊長に任命する。太郎太刀は2番隊、石切丸は3番隊にいくように。残りの隊員は既存の部隊から戦力が均衡するよう振り直させてもらった。今からいうから部隊を間違えないようにしてくれ。3番隊からいうぞ......」
主が短刀たちの名前を呼んでいるのを見ていると、こそこそとソハヤノツルキが話しかけてきた。
「なんだい?まだ主の話の途中だろう?」
「これ終わったら、部隊の顔合わせと演武あるから今しかないんだよ。なあ、歌仙、主となんかあったのか?大丈夫か?」
「そんなに心配しなくても大丈夫だよ。これはこの本丸を立ち上がるにあたって僕と主で決めた行動計画の中に全部入ってる。時の政府からも許可はもらってるからね、今更変えられるもんじゃない」
「そうか?それならいいんだけどさあ......うーん......」
納得いかないという顔をしてソハヤノツルキはまじまじと僕を見る。
「俺が顕現した時の冗談すら笑いながら本体手にして威嚇してきた部隊長様とは思えないっていうか」
「元部隊長だよ、だいたいいつの話をしているんだ」
「たったの3週間前だよ......太郎太刀にも圧力かけたりしてんだろ、知ってんだからな俺。なにがあったんだよ」
「僕から主にお願いならしたさ。近侍のままだと出来ないことも沢山あるから、そろそろ他の刀剣男士と替えてくれってね」
「?!」
「そんな驚かなくてもいいじゃないか」
「なんだよ、なんだよ、ほんとになにがあったんだよ、歌仙......?天変地異の前触れか?勘弁してくれよな」
「きみも大概失礼なやつだな......。なにもないから安心してくれ」
そうこうしている間に解散となったため、平隊員となった僕はソハヤノツルキを送り出したのだった。