お題箱よりパラレルアップデートのゼアルルート@

城前は一気に攻勢をかけた。相手ターンに《NO.53偽骸神HeartーeartH》を破壊したのだ。

「エクシーズ素材が存在しないこのカードがカードの効果で破壊されたこの瞬間!墓地のこのカードをエクシーズ素材としてエクシーズ召喚!《NO.92偽骸神龍Heart-eartH Dragon》!」

「相手ターンにエクシーズ召喚だと?!」

「このカードは戦闘では破壊されず、このカードの戦闘によって発生する自分への戦闘ダメージは代わりに相手が受ける。相手のエンドフェイズ時、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除く事で、相手フィールド上の、このターンに召喚・特殊召喚・セットされたカードを全てゲームから除外する。エクシーズ素材を持っているこのカードが破壊された場合、このカードを墓地から特殊召喚できる。この効果で特殊召喚した時、このカードの攻撃力はゲームから除外されているカードの数×1000ポイントアップする!おれはモンスター効果を発動だ!さあ、全てのカードを除外してもらおうか!」

「ぐうっ」

「互いに除外されているカードの枚数×1000だから、攻撃力は16000!」

「ターン、エンドだ」

「一気にいくぜ!おれのターン、ドロー!」

《NO.39希望皇ホープ・ルーツ》と《NO.93ホープカイザー》を並べていく。城前の手にあった《NO.77ザ・セブン・シンズ》が変化する。剣の意匠、手の甲の模様といった細部にその面影が残っているが、Sの字が刻まれた時点で新たなカードだとわかる。

「受けよ、縦横無尽なる希望の力!これが新たな時代の天地開闢!」

「ナンバーズを書き換えただと!?」

「ランクアップエクシーズチェンジ!エクシーズ召喚!こい、《SNO.希望皇ホープゼアル》!ルール上、このカードのランクは1として扱う。このカードは手札の《RUM》通常魔法カード1枚を捨て、自分フィールドの《希望皇ホープ》モンスターの上に重ねてエクシーズ召喚する事もできる。このカードのエクシーズ召喚は無効化されない。このカードのエクシーズ召喚成功時には、相手は効果を発動できない。このカードの攻撃力・守備力はこのカードのエクシーズ素材の数×1000アップする。相手ターンに1度、このカードのエクシーズ素材を1つ取り除いて発動できる。このターン、相手は効果を発動できない。さて、どういうことかわかるよなあ?」

相手は青ざめた。《No.92 偽骸神龍 Heart−eartH Dragon》と並べた場合、相手は新たにカードを出してもそのエンドフェイズに全て除外され、結果的に何もできなくなるのだ。

勝負は決した。

「ったく、鍵がまるごとナンバーズとかありかよ、反則だろぉ」

城前はたまらずその場にずるずると座り込んだ。

「ざまーみろ、NO.96!これで一気にナンバーズ回収できたぜ」

発光しながらいくつものカードたちが城前のもとにやってくる。残念ながら今回の首謀者であるナンバーズは取り逃がしたが十分すぎる収穫だろう。

《No.77 ザ・セブン・シンズ》

《No.81 超弩級砲塔列車スペリオル・ドーラ》

《No.95 ギャラクシーアイズ・ダークマター・ドラゴン》

《CNo.15 ギミック・パペット−シリアルキラー》

《No.87 雪月花美神クイーン・オブ・ナイツ》

《No.7 ラッキー・ストライプ》

《No.11 ビッグ・アイ》

《No.24 竜血鬼ドラギュラス》

《No.39 希望皇ビヨンド・ザ・ホープ》

《CNo.73 激瀧瀑神アビス・スープラ》

《CNo.69 紋章死神カオス・オブ・アームズ》

《No.54 反骨の闘士ライオンハート》

今回入手に成功したナンバーズたちをみて城前は疲れたように笑った。

最後に城前の前に降りて来たのは、《No.78 ナンバーズ・アーカイブ》ゼアルの記憶の貯蔵庫にして皇の鍵の中核を担う大事なカードである。もちろん今回の首謀者がこのカードを奪いに皇の鍵に侵入しなければ、ゼアルと会うときや回収したナンバーズを保管するために向かうあの空間そのものがこのカードだとは思わないだろう。

皇の鍵を内側から侵食して破壊し、今度こそゼアルの命と引き換えに自由になろうとしたナンバーズどもをなんとか引き止めることに成功したのだ。ナンバーズはもちろんカオスナンバーズまで内包している《No.78 ナンバーズ・アーカイブ》はそれほどまでに強力なカードだったということだろう。このカードを奪われたら本来反発し合うはずの二つの力が共存できる異空間は成立し得ない。それほどまでに薄氷の上に成り立っているらしい。

「ったく100枚じゃねーのかよ。カオスナンバーズもゼアルの記憶っつーなら100枚どころの話じゃないじゃねーか。この調子だとオーバーナンバーズまで対象になりそうでこえーなおい」

『まだまだ私と君の旅路は続きそうだな、克己』

「!」

城前は慌てて周りを見渡す。

「ゼアル、その声はゼアルだよな?大丈夫か?」

『ああ、ありがとう、克己。君のおかげで私はようやく実体を取り戻すことができそうだ』

「え、まじで?」

『ああ』

城前はようやく新しいカードが目の前にあることに気づくのだ。《SNO.希望皇ホープゼアル》が目の前に存在している。手を伸ばした城前は意識を白に塗りつぶされた。

視界はいつもの光に満たされた魔法図書館である。ナンバーズの名前が刻まれたたくさんの本が貯蔵され、空白があちらこちらにある。

『克己!』

「うわあああっ」

いきなり押された城前はたまらず浮遊する手すりもない大理石の足場にしがみついた。後ろから引っ張られてなんとか城前は尻餅だけですんだ。

「落ちたらどうすんだよ!」

『す、すまない、そういうつもりじゃなかったんだが』

「あーもーびっくりした。まだ心臓ばくばくいってんじゃねーかゼアルのばかやろ」

『ごめん、克己』

「ったくびっくりさせんじゃねーよ、馬鹿」

悪態をつきながら城前は振り返ってみる。そこには叱られてしょぼくれている子供のようなホープゼアルの姿があった。

「ごめんなさいできたし許してやるよ」

頭を撫でてやるとゼアルは嬉しそうに笑った。

「さーて、ゼアルが実体化できるようになったってことはだ。カオスナンバーズがゼアルの記憶なのははっきりしたけどよ……」

ナンバーズ、カオスナンバーズを本棚に戻していきながら城前はぼやく。アストラルなら記憶のかけらはナンバーズだけだったのだ、きっと。ただ遊馬とアストラルに分裂前のゼアルの記憶は、ナンバーズ・アーカイブのあの図書館によればカオスナンバーズも対象のようだ。もしかしたら、アストラル世界とバリアン世界がまだひとつだったころに生まれたのがゼアルという存在で、アストラル体がバリアン体を追放したことで生活できなくなり、アストラルと遊馬に生まれ直したのかもしれない。そこまで考えて嫌な予感がして城前は固まるのだ。遊馬の影響を受けて純粋なアストラル体ではなくなったという理由だけでアストラルは殺されそうになったはずだ。ゼアルはカオスナンバーズを使うアストラル体である。それだけで死罪に値するのでは?冷や汗がとまらない。とんでもないことに気づいてしまった。

『大丈夫か、克己?顔色悪そうだ』

「なあ、ゼアル。どこまで思い出したか教えてくれよ」

『?』

「アストラル世界とバリアン世界に別れちまったのは、ゼアルが生まれたあとか?」

なんでそんなこと聞くんだろうかと不思議そうにゼアルは首をかしげる。

『ああ、そうだ』

城前は血の気がひいた。

「ゼアルはアストラル世界の使者らしいけど、カオスナンバーズも使うんだよな?」

『ああ』

「……ぶっちゃけさ、アストラル世界にいっても大丈夫なのか?」

ゼアルは固まった。そしてためいきをつく。

『……君は本当に私より私のことをよく知ってるんだな、克己』

「このままアストラル世界に行ったら殺されちまう!んなのありかよふざけんじゃねえ!」

城前はたまらず叫んだ。

「一番気に食わねえのはんな大事なこと思い出したのに、平然としてるてめーだ、ゼアル!」


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