27話ネタで島くん夢
「俺のターン、ドロー!俺は魔法カード《魔獣の懐柔》を発動するぜ!自分フィールドにモンスターが存在しない場合、カード名が異なるレベル2以下の獣族の効果モンスター3体をデッキから特殊召喚する!この効果で特殊召喚したモンスターの効果は無効化され、エンドフェイズに破壊される!このカードの発動後、俺は獣族以外のモンスターが特殊召喚できなくなる!」


ロンリーブレイブはデッキからカードを3枚掲げた。


「俺は《おとぼけオポッサム》と《素早いムササビ》、《モグモール》を特殊召喚!《おとぼけオポッサム》の効果を発動するぜ!このカードよりも高い攻撃力を持つモンスターが相手フィールド上に表側表示で存在する場合、このカードを破壊する!そして、ライフポイントを1000支払い、手札から《森の番人グリーン・バブーン》を攻撃表示で特殊召喚するぜ!!」


巨大なゴリラがうなりを上げた。


「ここで、永続魔法《補給部隊》の効果を発動だ!1ターンに1度、自分フィールドのモンスターが戦闘や効果で破壊されたとき、デッキからカードを1枚ドローする!さらにさらにぃ!スキル《代償》を発動だ!自分のライフポイントが1000減るごとに発動できる!自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送り、ライフポイントを300回復する!」


ロンリーブレイブは乗ってきたぜ、と笑顔になった。


「さあ、いくぜ!!こい、未来に導くサーキット!アローヘッド確認、召喚条件は地属性モンスター2体!俺は《素早いムササビ》と《モグモール》をリンクマーカーセット!サーキットコンバイン、リンク召喚!リンク2《ミセス・レディエント》!このカードが存在する限り、フィールドの地属性モンスターの攻撃力・守備力は500ポイントアップ!そして、《怒れる類人猿》を攻撃表示で召喚!」


これで《森の番人グリーン・バブーン》の攻撃力は3100、《ミセス・レディエント》は1900、《怒れる類人猿》が2500に跳ね上がる。


「だが、これでは《インヴェルズ・グレズ》の攻撃力には届かない!」

「それはどうかなぁ!俺は魔法カード《野生解放》を発動!《森の番人グリーン・バブーン》の攻撃力は4900に跳ね上がるぜ!《インヴェルズ・グレズ》の攻撃力を上回るパワーだ!!」

「ぐうっ」

「さあ、これで決着だぜ!いけ、まずは《インヴェルズ・グレズ》に《森の番人グリーン・バブーン》を攻撃!!」

「うわああああっ」

「他の奴らにも攻撃だ!まずは《怒れる類人猿》!!《インヴェルズ・モース》を攻撃だ!」

「まだ、まだだ!俺は罠発動!《ヘイト・バスター》!自分の悪魔族モンスターが攻撃対象に選択されたとき、攻撃モンスターと攻撃対象モンスターを破壊し、攻撃モンスターのもともとの攻撃力分のダメージをあたえる!!」

「んなあっ!?」

「さあ、2000のダメージを受けろ!!」

「うあああっ」

ぐらつくがロンリーブレイブはなんとか持ちこたえた。

「ここでスキル《代償》を発動だ!カードを墓地に2枚送り、600ポイント回復するぜ!」

「ぐ」

「反撃だ!《怒れる類人猿》が戦闘によって破壊されたこの瞬間、俺は墓地の獣族モンスター2体を除外して、《森の狩人イエロー・バブーン》を手札から特殊召喚!!追撃だ!《森の狩人イエロー・バブーン》で《インヴェルズを呼ぶ者》を攻撃!」

「ぐあああっ」

「これで終わりだ、《ミセス・レディエント》でダイレクトアタック!!」

「うわああああっ!!」

「いよっしゃあ!!」


ガッツポーズをかざしたロンリーブレイブは、サイバースの風の向こうに消えたハノイの騎士にざまーみろと笑うのだ。ハノイの騎士にアナザーウィルスをばらまかれそうになって、逃げ回っていたユーザー達が近寄ってくる。


「すごい、ほんとうに!」

「あのハノイの騎士をやっつけちゃうなんて!」

「俺はロンリーブレイブ……いや、俺1人の勇気じゃない。みんなの勇気がこの勝利をもたらしたんだ」


初めてのスピードデュエルでの初勝利がハノイの騎士、もう高揚しきったロンリーブレイブの発言は加速していく。おおお、と観衆は期待の眼差しを向ける。


「今日から俺は、ブレイブマックス!みんなの勇気が新しい俺を誕生させたのだ!」


もう高まりきったテンションである。まーっくす!と振り上げた腕、みんな大喜びで大歓声となる。新たなニューヒーロー誕生のニュースが速報になるのは時間の問題だった。


「……ざっとこんなもんよ」


ちら、と和波を見たロンリーブレイブ改めブレイブマックスは、目を輝かせている和波によっしゃと心の中でガッツポーズする。


「すごい、すごいじゃないですか、ロンリーブレイブ……ううん、ブレイブマックス!!初めてリンクヴレインズにいって、初めてスピードデュエルして、ハノイの騎士に勝っちゃうなんて!!!」

「だろー!」

「大ニュースじゃないですか!」

「だろー!!これはもうトレンドワードまちがいなしだろ」


ちょっとだけ、いろいろと改変とか脚色とかはしたものの、ハノイの騎士に勝ったのは事実だ。初めてのリンクヴレインズ、しかもスピードデュエル、そしてハノイの騎士とのデュエル。すべて事実だ。ちょーっとばかし手札事故があったり、スキルの発動に手間取ってDボードから落っこちそうになったりしたけど。


「でも、ほんとによかったぁ……僕びっくりしたんですよ。ブレイブマックス、約束の場所にいないんですもん」

「あーごめんごめん、ログインしたらテンション上がっちゃってさー」

「一緒にチュートリアルやろうっていったじゃないですかあ!!」

「そう怒るなよ、ごめんってば。だってアバター作るためにリンクヴレインズにログインはしてないけど、チュートリアルはめっちゃ聞いたから飽きてたんだよ」

「もー、もしキミがまたアナザーになっちゃったら、僕はどうしたらいいんですか」

「それは心配いらないぜ。俺はもう、あのときの俺とは違うからな!!」

得意げにブレイブマックスは笑うのだ。


島が学校に復帰したのは、一週間後のことだった。熱中症の次はアナザーである。入院しすぎだ。

デュエル部はアナザー事件が終息するまで休部状態である。暇を持て余した島は和波を誘ったのだ、リンクヴレインズに行かないかと。初めは遊作を誘ったのだが、断られた。アナザー事件がまだ横行し、ハノイの騎士による治安悪化は継続中なためらしい。ついでに一人で行けず怖がってるなら行くなと忠告されてしまったが、島は頑として譲らなかった。


感傷に浸る間もないほどの焦燥感だった。だらだらとすぎていく毎日に戻るのは嫌だと思った。リンクヴレインズに行けないのは、いつだったか遊作にいいあてられた自信がないからだった。でもそれは島自身の問題でしかない。異論にすらしかならない答えだった。自分はずるいやつだ。気づけばただの臆病者になっていた。そんなんじゃ嫌だと叫ぶ自分がいると島は気づいてしまった。ここで自分に負けられるか、と思ってしまった。playmakerみたいな自分になるために、今までの自分とおさらばしようと思ったのである。


「そろそろ教えてくださいよ。どうして突然リンクヴレインズに行きたいって思ったんですか?」

「よくぞ聞いてくれました!じたばたしてでも意地でもやらなきゃいけないことに俺は気づいちゃったんだよ!」

「え、なんです?」

「和波には話したっけか、フィーアのこと」

「あ、はい。君をアナザーにした寂しがりやの女の子ですよね」

「おう」

島がフリーデュエルスペースで出会った小さな女の子がいた。その子は両親に放置され、毎日さみしい日々を過ごしているらしく、デュエルしたら懐かれたのだ。そのうち遊ぶようになったら、実はその女の子はとっくの昔に死んでおり、寂しさのあまりアナザーになったユーザーの一部を連れて行っていたのだ。島は全然自覚がなかった。フィーアとデュエルばかりしていた。playmakerに助けられたときに正体を暴露されたフィーアはひとりにしないでと泣きながら消えた。どうやら島がデュエルしていたのはアナザーウィルスに感染したプログラムそのものだったらしい。こうして無事に目が覚めた島だったが、泣きじゃくる女の子にまたデュエルしようと約束してそれきりになってしまったのだ。

「あの時の涙は俺の最初の後悔だったんだ」

「ブレイブマックス……」

「そんな顔すんなって、和波。俺は大丈夫だからさ!今ここでログインしなきゃ、今までと同じだと思ったんだよ。端末からplaymaker応援するだけでいいのかって思っちゃってさ、藤木のやつにお前の限界はそこまでだっていわれてムカついたってのもあるし!俺だって男だぜ!ここまでいわれちゃ、ログインしないわけにはいかないだろ?ずっとフィーアとデュエルしたし、ちょっとは上手くなったんじゃないかとは思ってたんだけどよー、まさかここまでうまくいくとは!あはは!」

「そうですか、それなら僕はなにも言わないです。応援しますよ、ブレイブマックス!僕もがんばります!」














「和波、ちょっといいか」

「はい、なんでしょうか」

「おまえ、最近島とリンクヴレインズにいっただろ」

「はい、そうなんですよ、やっと島君リンクヴレインズデビューしたんですよー」

「俺が島に忠告したの見てるくせに止めなかったのか」

「僕はそのあと誘われたんですよ。一緒にハノイの騎士倒そうって」

「……たしかにハノイの騎士のウィルスも、グレイ・コードのウィルスもワクチンを配布するサイトができた。患者は減ってる。でもハノイの騎士によるplaymakerとゴースト狩りはまだまだやってる。あぶないとは思わなかったのか」

「うーん、藤木君のいいたいことはわかりますよ?でも島君、それで結構焚きつけられちゃったみたいで、やる気満々だったんですよ。ほっといたら1人でログインしちゃいそうだったから、ほっとけなくて」

「……あの馬鹿」


その場の勢いでログイン、の前に和波に相談してくれた、と考えた方がいいのだろうか、この場合、とちょっと遊作は考えた。


「でも、よくわかりましたね」

「お前、俺のデュエルディスクと同期設定なのわすれてないか」

「あ」

「ほんとに大丈夫なのか、お前」

「なら藤木君も島君と一緒にログインすればよかったじゃないですか、藤木遊作として」

「できるわけないだろ」

「うーん、でも僕は守りたい人の側にいたい方なので藤木君の意見はもっともだと思いますけど、コレばっかりは賛成できませんね」

 
眉を寄せる遊作に和波は困ったように頬をかいた。


「あんなかたくなにリンクヴレインズにログインしなかったのにいきなりだな」

「ああいうのはタイミングが大事なんですよ、藤木君。島君は僕がちゃんと学校に通い始めてできた、はじめてのデュエル仲間で友達なんです。もう2回も僕のせいで巻き込んじゃってる。僕はずるいから、友達をやめる気はないですし、スピードデュエルデビューに付き合えって言われたらついてきますよ」


互いに譲ることができないものだ、と遊作はわかったらしく、説得を断念することにしたようだ。


「藤木君もきます?」

「いい、いらない」

「素直じゃないですね」

「……なんの話だ?お前にだけは言われたくない」

「え、なんでですかっ」


遊作はちょっとだけ笑った。


「というわけで、今日は島君に付き合ってリンクヴレインズにいってきますね。グレイ・コードの怪しい動きとかがあったら、すぐに知らせます」

「ああ、気をつけろよ」

「はい。でも本当に藤木くんも素直じゃないですね。《サイバース・ウィザード》島君に預けちゃうほど気にかけてるのに」

「まて、和波、今なんて?」

「え?」


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