愛しく苦しいこの夜に

朝、目が覚めてリビングに向かうと、ラジオから何やら怪しげな音がしていた。父が何度かチューナーを合わせ直していたが、その音が止む気配はない。そこで初めてテレビをつけるとコガネのラジオ塔がロケット団に占拠されたというニュースが放送されていた。チャンネルを回してもどこの局も同じことを放送している。画面横のテロップにはラジオに関する注意書きがあり、それを確認した父はすぐにラジオの電源を切った。

どうやら今ラジオから流されているのはポケモンに有害な電波らしい。



『現場上空のカメラと中継が繋がったようです。どうやらこの人物がラジオ塔占拠の指揮をとっている人物ではないかとの情報が入っております。20代から30代と見られる男性です』



悪い夢だと思った。
眼を閉じてまたゆっくりと開く。

けれどそこにはやっぱり、あの人がいた。



「……っ…」



ああこんなことがあるんだ、と。私はテレビに映る彼を見つめたまま動けなくなってしまった。
彼はもう、私の知っている彼ではなくなってしまったのか。







彼の笑顔が、脳裏に浮かんで消えない。

愛しく苦しいこの夜に


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