みょうじなまえ。 その名を聞いて、周りがぱっと思い浮かぶのは、かわいらしく眩しい笑顔―――――とか、そんな少女マンガのような展開ではない。 クラスのマドンナ?―――――いや、どちらかといえば、地味で目立たない方だ。 かわいいとか美人とか言われる類いでもないし。 ブスではないけど。 普通だ、普通。 文武両道?―――――小テストの追試に行く姿をよく見かけるし、確か部活は室内の部活だった。 何だったかはよく覚えていないけど。 よく覚えていないくらい、目立たない。 マンガやドラマに例えるならば、主人公のクラスの風景とかに出てくるモブキャラ。 それも、名字くらいしか決まっていないくらいの。 そんな存在。 しかしそのみょうじなまえの小さな存在が、今の南沢にとって大きなものになったのは、勿論理由があった。 最初こそは興味本位だった。 自慢ではないが、南沢は世間でいう「モテる」「モテない」にわけるとすれば、「モテる」方の人間だった。 小さな頃から周りに騒がれていれば、嫌でも自覚するのだが。 それを利用して―――――笑っておけば、大抵のことは乗り切れる―――――上辺だけの関係を適当な作ればいい。 そんなくらいにしか、南沢は周りのことは考えていなかった。 それが、南沢篤志・中1の秋。 元々、内申書にいいと聞いていたサッカーをやることしか考えておらず、南沢の毎日は授業、サッカー、塾、サッカー、授業、サッカーの繰り返し。 変化のない生活に、味気なさを感じていた時だった。 その日、南沢はただぽーっと窓際の席から見える空を眺めていた時、周りが「かっこいい」だの何だの言い始めて、ちらりと教師の方を見た南沢は、勿論授業中であるから明らかに不機嫌な顔をしているのが分かった。 南沢が授業を聞かずに外を見ているのと、周りが騒がしいことが原因だろう。 ああ、そろそろ怒るんだろうな。 そう思って一通り問を見た南沢は、にやりと怪しげな笑みを浮かべた。 ああ、これならもしあてられても解ける。 「次―――――みょうじ」 「…ぇ、」 南沢は自分が聞いていなかったからと、あてられることを覚悟していて、完璧に答えて教師を馬鹿にしてやろうとまで考えていたのに。 しかもみょうじ……って、何処の誰だ。 南沢が探そうとした時、ガタンと真後ろから音がした。 「……?」 「…惜しい、通分出来るぞ」 「あ、…………です」 「よし、いいぞ、座れ」 答え終わり、座った途端に小さくほっとしたような声がした。 南沢の真後ろから。 幾度となく行われた席替えの度に、隣、前、後ろと女子があたると騒がしくなるのが南沢にとって当たり前だったから、嫌でも顔と名前は覚えていた。 それなのに、南沢が覚えていないということは―――――彼女が騒がなかったからなのか、単に興味がなかったからか。 それにしても、南沢に今興味が湧いた。 自慢するわけではないが、騒がれない自分がいることが不思議で仕方がなかった。 みょうじなまえか。 よし、覚悟しとけよ。 「え? ってことはわたし、恨まれてたわけ? 話したことも無かったのに?」 「恨んでたわけじゃねえよ ただ…興味があっただけだ」 「何か所々にモテ要素を入れてきてるのがムカつくわー」 「何だよ…嫉妬か?」 「………………」 「……だから何だよ」 「……そういうの言わなきゃ、普通にかっこいいのに(ぼそり)」 「え? 俺がかっこいいって? そんなの当たり前だろ?」 「(そういうところは敏感に聞き取るのね)はいはい …ていうか、最初の方のわたしの扱い、何か酷いよね いや、かわいくないのは自覚してるけどさ…あんたズバズバ言いすぎだって」 「はあ?何言ってんだお前 今の俺が今のお前を好きなんだから、俺が良ければ関係ねえだろ」 「……」 「なーに赤くなっちゃってんのなまえチャン?」 「あー!もうちょっと一回黙ってくれない?!」 いや、お前ら両方黙れよこのバカップル! だいぶ前に書いていたやつが出てきたのでもったいないのであげました(笑) 一応、本編の後で二人の出会いを振り返っているという設定です。 ヒロインからの南沢の印象は、本当に興味ない感じになってつまらないのでやめました。 本当にこの子、南沢さん眼中にいれてあげてよね…(´=ω=`) 14_03_02 |