中編 | ナノ

▽ 15






「じゃあ、一言ずつ言ってくか!」



ホーリーロード優勝を記念して、表彰式やら取材やら何やらを終えて、やっと部員だけの時間がやってきた。

新キャプテンの松風から始まり、スタンドで見守ってくれていた神童、と涙ぐみながらも、いや皆涙を流しながら、挨拶をしていった。

三年生は特に長く語っていて、いい感じにしめてくれたなあと思っていたなまえだったが、ふと狩屋と目が合う。

うん?何か用かな?



「マネージャーさん達も、一言ずつ、お願いします…!」
「そうだな、じゃあ…」
「なまえ先輩は最後ですよね!」
「え?」



嬉し涙だけど涙は涙だから、頑張って堪えていたなまえに、狩屋が何か企んだ顔で言う。

こ、こういうことか。

何か言い返すべきかと口を開こうとしたなまえだったが、時すでに遅し。

もう他のマネージャーが話始めていた。

ち、ちくしょう、最後って…ちゃんと締めないとカッコ悪いじゃないの。

何を話そうかと思いを巡らせていたなまえだったが、



「…じゃあ、最後はなまえちゃんに」
「!
も、もう回ってきた?」



元々口数の少ない茜の後だから、直ぐに回って来た様子。

あれ、葵ちゃんと水鳥、なんで抱き合ってるんだろう。

ちゃんと話聞いとけばよかった。



「えーっと、…最後って、結構みんながいいこと言っちゃった後だからやりにくいんだけど
ねえ、狩屋くんわざとだよね?」
「なに言ってるんですか、
確かにわざとですけど…なまえ先輩だからですよ!」
「……頑張って、話そうと思います、」
「みょうじ先輩、頑張ってください!」
「あ、ありがとう、輝くん」



なまえは自然と下がってしまう顔を持ち上げて、一人一人にピントを合わせてみる。

恥ずかしいけど、別に悪いことじゃないんだし、ちゃんと話さないといけないよね。



「正直に話すと…わたしは、ちょっと悔しいです」



一瞬で頭を過る出来事たちに、なまえは思いを巡らせた。



「みんなで辛い練習を乗り越えたとき
何かを成し遂げたとき
悲しい思いをした仲間がいることを、みんなが理解して助け合って、嬉しい思い出をたくさん作れたとき
一緒に勝利を掴んだとき」



つい昨日のことのように思えることばかりで、あっという間に過ぎてしまった日々が愛しく感じた。

最初はこんなにみんなと溶け込んで話すことすら出来なかったのに、何だか不思議な感じがする。



「マネージャーだからこそ、一番近くで見てきて
一緒に悔しがって、泣いて、笑ったけど
でも、何だかみんなが遠い気もして」



なまえがそう口に出すと、隣で茜や葵、水鳥の肩が動いた。

ああ、同じ気持ちだったんだね、となまえが目線を合わせると、葵ちゃんの目から
ぽろりとまた涙が流れた。



「何で男の子じゃなかったんだろうって
どうして一緒に、強くなれないんだろうって」



そんなことないです、と天馬が声を上げた。

それを静かに止めてくれた三国に、なまえの目も少し潤んできたのが分かった。

ああ、やっぱりわたし、弱いなあ。



「そう思ってしまうから、上手くいかないときのみんなが余計にもどかしくて
余計なことまで言っちゃうときもあったと思うけど」










この勝利は

そんなわたしたちマネージャーも含めたみんなの


SUCCESS!


(だって、思ってもいいですか…?)
(もちろんですよ!!
なまえ先輩!)

(ったく、そんなこと考えてたのかよ、馬鹿だなみょうじ)
(な!
し、失礼だよ倉間くん!)
(頭はいいのに結構勘違いして無茶したりするからなあ、みょうじは)
(錦くんまで…!)
(……いじられキャラだったのか)
(え?何か剣城くん、勘違いしてない?!)
(なまえ先輩、その、俺…!(ぎゅ))
(ええ輝くん?!今更そのネタ来るの?!
ちょっとまた狩屋くんの仕業でしょう?!!)





遅くなってしまってすみません。
2012夏企画、kiryuさまへ。

もし人違いなら申し訳ないのですが、以前の(一回目の)アンケートにもご参加くださったkiryuさまでしょうか?
間違ってなければ、リクエストは中編か成代であったと記憶していましたので、今回中編のサクセスで書かせていただきました。
管理人の好きなものでいいと…なんて良心的なリクエストだろうと思い、いろいろと何にしようか迷ったのですが、
かなり私的な話、停滞しつつあるこのサクセスの、しかも最終話を書かせていただくことに決めました。

最近、私生活でいとまが中々出来ず、時間を作れずにこのようなだらだらとした更新しか出来ずにいるのですが
これからもご贔屓にしていただけると嬉しいです。

企画:kiryuさまのみフリーです。

12_10_22 [完]ここに至るまでの皆様のご観覧、ご声援に感謝!