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「会長! 白紙で提出するとは、どういうことですか?!」 「まーまー、さっちゃんそうかっかしないで」 「さ、さっちゃん?!! ふふふざけてないで、真面目に答えてください!!」 「無駄だよ、椿ちゃん 今日の安形は特にこうなんだ」 「…いつもの三割増で、面倒くさいんだよね」 「会長ー?!!」
ふわあ、と大きな口を開けて、ためらいも隠すこともせずに欠伸をした安形なまえは、いつもに増して眠たそうな顔をしていた。
結局安形はやる気が出ず、白紙のままのプリントを椿に提出すると、案の定怒られた。
いつもが七割なんで、今日はプラス三割で十割なんです。
ごめんなさーい。
のんきにそう呟くくらいの声で謝れば、あなたは会長でしょう?!とまた怒られてしまった。
安形と椿の討論を眺めている榛葉道流に助けて、と視線を送った安形だったが、溜息で返された。
うわあ、こりゃまたひどい。
「……考えてはある」 「なら、書いてくださいよ!」 「それが面倒くさいんだって」
分かってないな、椿ちゃんは。
ちょっとだけ榛葉の真似をして、おどけてみた安形。
それを知って、余計に椿の機嫌が悪くなった。
「なんで会長はこうも面倒くさがりなんですか!」 「いやあ、天成なものなんで」 「あはは、さすが安形って感じだけどね?」 「それって、貶されてるのかな…? まあ、いいか」 「いいんですかッ?!!」
椿が何か言っているが、気にする素振りも見せず―――――事実、気にしていない安形は、顔の近くでひらひらと例の紙を揺らした。
「道流さーん、書いてくんない?」 「…もう、しょうがないなあ安形は」 「助かるー」
にひひっと実に楽しそうに笑った安形は、身体を机に持たれるようにした。
あー、楽だ。
顔から上だけは一応、上げた状態である。
「まず、予算案は……」
淡々と述べ始めた内容は、驚くほど完璧につくられていて、流石学園一の秀才と呼ばれる程だ、と榛葉は感心しながらペンを走らせた。
「ん、これで…いいかな?」 「おほー! さっすが道流さん、字綺麗だね」 「まあね、……じゃなくて内容の方だって」 「…うん、オッケーだよ じゃ、椿くんお願いしまーす」 「か、会長…」
爪隠し
いやー、楽だったー!
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