中編 | ナノ

▽ 14







河川敷の大きく弧を描きながらかかる橋の下。

何度も当てたのか、そこには丸い跡がたくさん残っている。

その跡は、なまえがよく知る―――――



「あれ、倉間くん?」
「!みょうじか…」



サッカーボールと全く同じ形だった。



「自主練?」
「……ああ」
「まだ、グランド空いてるよ?」
「知ってる」



じゃあ、何で。

となまえは問い掛けようとして、何かに止められた気がした。

あ、そうか。

言っちゃいけないんだ。

きっと倉間くんは、一人で練習がしたいのだ。

若しくは、一人になりたいのか。

なまえは後者の方を考えて直ぐに、その考えを頭から追い出した。

そんなこと、考えすぎに決まってる。



「そう………じゃあ、無理しない程度にね」
「……ああ」



いつもに増して無愛想ななまえの同級生は、いつも通りの真っ直ぐな視線でボールを射ている。

今の雷門はFW多いから、レギュラー争い激しいもんなあ。

声を掛けたものの、邪魔をしたい訳ではなかったから、なまえは直ぐに離れようと思っていたのだけど、なんだか気になって。

というか、似ていて。



「……似てる」
「!
ま、まだいたのかよ?!」
「ご、ごめん…!」



口に出てしまった言葉の真意は分かっていたが、これは別にどうでもいい話題だと思う。

それでも、



「何がだよ」
「え?」



―――――何が似てんだよ。



突然発した言葉だったのに、倉間の耳にはちゃんと届いていたようで。



「ごめん、ただの独り言だから」
「気になんだろ、言えよ」



さっきまで倉間が蹴っていたボールは、いつのまにか動きを止めて、倉間の足に抑えられていた。

聞く気満々だ、この人。



観念したかのように、なまえは口を開いた。



「倉間くんが、南沢先輩に似てるの」
「は?俺が?」
「あ、別に背が小さいとかそういう意味じゃなくて…!」
「あ?
みょうじ…お前、一言余計なんだよ!」



本当は真剣な雰囲気を壊したくて、わざとふざけてみたなまえだったが、倉間は未だにその真剣な瞳をなまえから反らさなかった。

これは、逃げ道はないようだ。



「人がいなくなったことを、そう簡単に割り切れる人はいないと思うよ」
「…南沢さんと似てる話からどう繋がるんだよ
話が飛んでる」
「(意地張ってる)……へんなとこ意地はっちゃって、一人で抱え込むこととか
でも人一倍努力家だから、いつも一生懸命なとことか
だからいつもハラハラしちゃって、大変なんだからね!」
「………お前、よく見てんな」



だって、マネージャーですから。



なまえは精一杯おどけて言ってみた。

すると、倉間はツボにはまったのか、途端に笑いだした。

え、そんなにおかしかったかな。

なまえの眉が少し下がった。



「わ、わりぃ…
なんかさ……お前、へんなとこ鋭いくせに自分には鈍感だよな」
「へ……?」
「あー、分かってねーならいいわ」
「う、うん……?」










SUCCESS!


(あの一言がなかったら、誰でも誤解するっつーの)