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なまえは、覚悟を決めた両手を目一杯に広げて立っている姿に、何処か懐かしさを感じていた。
「なんか、似てるなあ」 「似てる?信助がですか?誰に?」 「!松風くんか…! いきなり話し掛けないでよ、びっくりしちゃった」 「あわわ、す、すみません…」
部活の時間はとっくに終わっている、休日部活の午後。
マネージャーであるなまえは、用事があると言っていた葵の為、いつもより遅くまで片付けをしていた。
元々、サッカー棟の鍵を閉める当番でもあったため、茜や水鳥にも先に帰って貰ったから、いつもよりゆっくり丁寧にやっていたのもあるかもしれない。
帰ってお昼ご飯を食べないと。
自身のジャージやら、練習用のドリンクの粉、スクイズが入った、普通のマネージャーよりは重たいエナメルバックを肩から下げ、サッカー棟から出てきた時だった。
先程まで、先輩達の応援を受けながら、キーパーの練習をしていた西園信助が、未だにグラウンドに居たのである。
それを見守っていたのか、西園を見て立ち止まったなまえの隣に、松風が近寄って来た。
「まさか信助がキーパーになるなんて、俺、思ってもみませんでした」 「そうだね わたしも正直びっくりしたけど、まあたいちゃんが言うことなら間違いないかな」 「(たいちゃん…?)さ、三国先輩とみょうじ先輩って、そういえば仲いいですよね」 「うん、幼馴染だからね」 「そうなんですか! 俺も葵と幼馴染なんですよ」 「へー!そうなんだ!」
そういえば、葵ちゃんは何かと天馬天馬、言ってる気がする。
この言い方に何か…あるけど、この二人はまだ小学生が抜け切っていないところがあって、色恋とかそんな沙汰には関係が無さそうだ。
ちぇ、つまんないの。
珍しく悪人顔をしていたなまえに、松風は首を傾げた。
「西園くんはさ、体格とか力とかで大きい選手に負けちゃうこともあるかもしれないけど 何ていうんだろうな…」
―――――彼には安心して背中を任せられる気がするの。
「!そ、それ、俺にも分かります! 信助になら、安心してゴールを任せられるって 上手く言葉じゃ言えないんですけど、俺は信助を…信じてるから」 「キーパーってさ、大変なポジションだと思わない?」
ちょっと、わたしの個人的な話になっちゃうんだけど。
たいちゃんはさ、小学生のときから身体が大きくて、必然とキーパーばっかりやってたんだ。
わたしは最初、嫌だったなあ。
だって、キーパーって一見ただゴールの前に立ってるだけじゃない?
シュートを打てるFWの方が楽しいし、かっこいいでしょう?
それでもね、たいちゃんはずーっと文句も言わずにやってて。
一回、何で嫌だって言わないのか聞いてみたことがあるの。
そしたらね
「おれはキーパーがすきなんだ」
って言ったの。
驚いちゃったなあ。
たいちゃんは優しいから、ずっと言いだせずに我慢してたと思ってたから。
それでもね、きっとたいちゃんが優しくて頼れるから、みんなが安心してプレーしてるのが分かったの。
元からの性格からかな?
ちょっと、お母さんみたいなところあるでしょう?
「西園くんの場合は、ちょっとたいちゃんとは違うけど 西園くんはいつも頑張ってるから、その姿を見て、自分も頑張ろうと思えるから…みんなが信じてくれるんじゃないかな? たとえば、…やっぱり練習もそこそこしかしない人がキャプテンだとか言われたら、納得出来ないでしょう?」
確かに、と天馬は頷いた。
そうだ、いつも全力で頑張ってる信助だから、信じれるんだ。
「みょうじ先輩も、そうですよ」 「うん?」
(そうやって俺たちのことちゃんと見ててくれて、気が付いてくれるから、安心してプレー出来るんだ)
「この話、信助が聞いたら喜びま…!」 「ごめん天馬、みょうじ先輩 もう聞いちゃいました」 「あ、ごめんね 邪魔しちゃった…よね?」
なまえと松風のそばに駆け寄ってきた西園は、嬉しそうに笑っていた。
「ぼ、僕…頑張ります!」
なまえはその時の西園の表情が、何処かで見た誰かにかぶって見えた。
SUCCESS!
(あ、あの…ずっと気になってたんですけど みょうじ先輩のこと、名前で呼んでいいですか?) (うん、全然いいよ) (やったね信助!) (うん!) ((何でそんなに嬉しそうなんだろう……))
((でも、何だか癒される…!))
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