▽ 11
「先輩、今日は珍しく素直ですね」
南沢は久しぶりに訪れた場所で、久しぶりに再会した後輩にそう言われた。
「……あ、いいいえ、悪い意味、とかじゃなくて、その…!」 「必死すぎんだよ、ばーか」
南沢の後輩―――――みょうじなまえは、相変わらずはっきりとした性格の持ち主だった。
確かになまえの言う通り、らしくないことだとは思ったが。
「たまには、な」 「……ちょっと遅い気もしますけど、まあ先輩らしいというか」
いいんじゃないですか?
どことなく上から目線だということは、南沢はあえて言わないが。
まあ、こいつも素直じゃないからなぁ。
「やめてから気付くなんて、馬鹿だよな」
呟くくらいの小さな声で発されたならば、なまえはスルースキルを発動したのだけど。
明らかに聞こえるように言っている相手―――――南沢をスルーするのは不味いだろうと、返事を考えるも、学年一の才女であるなまえにも、相応しい言葉が見つからなかった。
「…先輩の場合、気がつくのがたまたま遅かっただけですよ」
―――――その時になってみないと分からないことの方が案外多かったりしますよ。
そう口に出した時、なまえは南沢を視界から外した。
わたし、上から目線で何言ってんだろ。
直ぐにでも取り消したほうがいいかもしれないと、再び顔を上げた時。
「なにやってんすか………南沢サン」
―――――助っ人がいなくなったら、助っ人の意味ないでしょ。
プイッと言い逃げのような形で、走ってやってきた倉間は早々と立ち去ってしまった。
何だあれ、ツンデレか、とかなまえが思ってしまったのはしょうがない。
「………彼も、素直じゃないですね」 「…それを言うならお前もだよ、」 「はい…? 何か言いました?」
「別に」
SUCCESS!
((この人でも弱音はくんだ…) 変な南沢さん…) (あ?こっちは聞こえてんだけど?) (!(しまった!))
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