中編 | ナノ

▽ 10







「たいちゃーん!」
「!
ば、ばかかお前はァアア!!」



三国が顔を真っ赤にさせて物凄い勢いで席を立ち、廊下に走って行った。

いつも冷静で、同級生を通り越して保護者的な存在である三国が、珍しく怒った。

車田は、聞き慣れた声が聞こえた気がして、興味本位で窓から廊下に顔を出した。

すると



「あ、車田先輩、こんにちは」
「みょうじ…?」
「はい、みょうじです」
「わざわざ、三年の教室まで……どうかしたんだど?」



あ、やっぱりみょうじだ。

三国と同じで、普段から落ち着いた雰囲気を放つみょうじも、テンションの高い時を見るのは珍しい。

ああ、確かこの二人って、幼馴染だったっけ。

車田と同様に興味本位で、車田の隣に顔を覗かせた天城と一緒に尋ねてみた。



「えっと、ただ…」
「なんでもない!なんでもないよな、なまえ!」
「へ…た、たいちゃん、何を焦って‥?」
「それだよバカ!」
「もう!さっきからバカバカってひどいよ!
いくらわたしでも傷付くんだからね?!」



真っ赤な顔の三国が、必死になって抗議している姿が面白くて。

車田と天城が笑うと、内容を理解している訳ではないが、なまえもつられて笑った。

それがまた気に入らないのか、三国は益々不服そうな顔をした。



「そんな用事くらいなら、わざわざ言いに来なくたってメールでもいいだろ?」
「それは……そうなんだけど」
「何だよ三国、わざわざ隠さなくたっていいだろ?」
「二人が幼馴染の枠には収まり切らないくらい仲がいいのは十分に知ってるど」



天城の言葉に、少しだけ恥ずかしそうにした三国を見て、益々楽しそうに車田は笑う。

コイツ、真面目だからこそうぶなんだよなあ。



「いや、……」
「今日、たいちゃんの‥三国先輩の家に泊まるんです」
「なまえの両親の出張が重なって、なまえが一人になる日は俺の家に来るのが恒例っていうか…」
「へえ…」
「そこまで、仲が良かったのか」
「親同士が特に仲がいいんですよ」



みょうじは嬉しそうに、三国は恥ずかしそうに。

それぞれの感情を表しているのを見て、車田と天城は顔を見合わせた。

似てないようで、こいつら似てるよなあ。



「本当にお前たち仲いいな」
「そう、ですか?」
「なんか……兄妹みたいだど!」
「ん?どっちかっていうと、親子じゃないか?」
「!
お母さん!」
「な、こんな娘はいらない!」
「ひどいよたいちゃん!
ここはノるところだよ!」



普段はかなり大人びでいて、そうやって年相応にふざけている二人を見るのが珍しかったからなのか、車田と天城も自然と笑みを浮かべた。










SUCCESS!


(なんか、仲の良さを見せ付けられただけだったな…)