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「はっ、…ぉっと、…」 「ひかるー、大丈夫ー?」 「は、はいッ…!」
雷門サッカー部において、一番成長が著しいのは、一番経験が少ない影山輝である。 飲み込みが早いというか、見たものを直ぐに自分の物にしてしまうその洞察力が素晴らしいのである。
それに、かなりの努力家と来た。
純粋で人の言う事を直ぐに信じてしまうのはまあ、ちょっと残念だが。
「あはは、またやってるよアイツ…!」
輝よりも少しだけ早く入部した狩屋マサキは、超人じみたフィジカルと瞬発力で、きらりと光る才能を持っている。
しかし嘘をつくのがしょっちゅうで、性格に少々問題があった。
そんな二人に向けられた視線があった。
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「みなさーん! そろそろ休憩にしましょー!」
葵の元気な声を合図に、ちらほらと集まってくる部員。
しかし、未だに納得がいかない表情で、ボールと向き合っている輝。
「あー、疲れたー!」 「おつかれさま、」 「あ、ありがとうございます…!」 「あれ、みょうじ無視なの?ひっでー」 「ウソだって、 はい、浜野さん」 「さんきゅー!」
努力家な輝だから、無理をしそうで。
なまえは様子を見に、近くまで駆け寄ったが気が付かない様で。
声を掛けるとやっと反応を示した輝に、なまえは驚いた。
よっぽど夢中だったようだ。
その姿を見て、練習熱心だと褒める先輩達に囲まれ、照れるように笑う輝。
なまえは少しだけ、眉を寄せた。
無自覚でやってるのか、彼は。
「うーん…」 「どうしたんですか、みょうじセンパイ?」
人の良さそうな笑みを浮かべた狩屋マサキは、なまえの後ろから可愛いく見えるように顔を出して尋ねた。
もちろん、これは計算である。
「あ、狩屋くん」 「何か、悩んでるみたいですけど…」 「ちょっと、ね」
なまえは近寄って来た狩屋を見て、意外そうな顔をした。
嘘を吐くくらいだから、自分勝手な子かと思っていたのに。
人のこと、よく見てるなあ。
「輝くんがさ、練習に夢中になりすぎて、周りに気が付かないところがあるから ………いいことなんだけど、どうにかならないかなあって、思って‥」
呟くくらいの小さな声で、そう溢したなまえを見て、狩屋は声になるかならないかの微妙なトーンで何かを呟いた。
ん?聞き返しても笑って誤魔化される。
ホント、不思議な子だなあ。
「そんなに気になるなら、影山の気を引くようなこと、すればいいじゃないですか?」 「気を引く?」 「はい サッカーのことから、興味を外させる程インパクトの大きなことをするんです」 「……なるほど」
そうすれば、一時的にでもサッカーのことを忘れるだろうな。
ほお、狩屋くん、意外とキレ者だなあ。
例えば?となまえが言葉を続けると、狩屋は一瞬企んだ顔をした。
それに気が付いたなまえだったが、次に狩屋が発した言葉に驚いて、そんなことは頭からずるりと抜け落ちてしまった。
―――――抱き付いてみたらどうですか?
なまえはこれでも二年生の首席である。
だから、それが何を意味するか何て、分からない筈がない。
輝くんも思春期だし、ちょっとウブなとこあるから、効果はありそうだけど。
わたしにそんな度胸があるのかどうか。
「…えいっ」 「うわ?!!な、何で俺なんですか!」
単に狩屋は、輝が驚くことを狙って行っただけだったのだが
「え、ダメ…?」 「は?」 「わたし、いきなりは恥ずかしくて無理だから、狩屋くんで練習しようかと」 「(やる気なのかこの人?!) お、俺で練習しないでください!!」 「な、仲間でしょー?」 「単なる部活の先輩後輩でしょう?!!」 「狩屋くんが言い出しっぺっていうか、教えてくれたんだからさ、最後まで付き合ってよ」
SUCCESS!
結果的には、狩屋が驚くことになったのであった。
(!もう、先輩!) (見捨てないでよ狩屋くん!)
((仲いいな、あの二人))
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