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夏が近づく。
朝から太陽が眩しい程照りつけていて、なんだか気分は下向きだったけど、なまえはぱしんと自分の両頬を叩いて、気持ちを引き締める。
嗚呼、今日も暑いけど、頑張らなきゃ。
「あ、なまえさん! おはようございます!早いですね!」 「今日は早く目が覚めちゃって… 今日も元気だね、葵ちゃん」 「えへへ…」
なにやら衝撃を感じて振り返れば、なまえの腰の辺りに空野葵がひっつくように抱きついていた。
実は暑さのあまりに目が覚めてしまって、余計に機嫌が悪かったのだけど、純粋で無垢な―――可愛い可愛い葵を見れば、そんなことはなまえの中からは吹き飛んで行ったみたいだ。
やっぱり年下は可愛いなあと思いながら、特に引き剥がす必要もないので、なまえは抱きつかれたまま足を進めていると、葵は器用にもなまえに抱きつきながら、ちゃんと着いてきていた。
すごい、陰ながらなまえは葵に拍手した。
「なまえさん、あの…お願いがあるんですけど…!」 「なに?」 「もうすぐ、中間テストが近いじゃないですか それで……その、‥‥」 「………勉強のこと?」 「はい! なまえさん、学年主席だって聞いたので…教えてもらえないかなあって」
なんでそれを知ってるの。
とは、なまえの目の前で満面の笑みを浮かべている葵には言えるはずもなく。
と、いうより情報を流したのが誰なのかは大体予想がつくので、なまえは溜息を吐いていた。
水鳥か、茜のどちらかである。
まあ、一年だからわからないことも多いだろうし、役に立つとは分からないけど、過去問とかあげようかな。
そう、なまえが口に出せば、葵は飛び上がって喜んでいた。
か、可愛い…。
こんな可愛い子の為なら、お姉さん、なんでも出来る気がしてきたよ!
おっと、自重しろわたし。
なまえは自分自身に突っ込みを入れた。
「じゃあ、空いてる日とかあったら、教えて?」 「いつでも大丈夫です!」 「そう? じゃあ、……―――カシャカシャ! あ、茜、おはよう」 「…………なまえちゃんの寝起き顔ゲット、」 「まーた変なもの撮って…何が楽しいの‥ ちゃんと消しといてよ?」 「それは無理、」 「なんで即答なの…!」
なまえは、二年になってすぐ、サッカー部のマネージャーになった。
理由は知らないが、新学期早々一斉に部員もマネージャーもやめてしまったらしく、人手が足りなくて困っていると聞いたから、親友の水鳥と一緒に……というよりは、水鳥に強制的に入らされたのだ。
だから、元々なまえには入る理由は無かった。
気が付いたら、入らされていたのだから。
帰宅部、いや、元帰宅部のなまえでさえ、雷門中サッカー部は、サッカー強豪校として、全国に名を馳せていることくらいは、それなりに知っていた。
まあ、それよりも、美形が多いことで有名でもあった。
なまえの新しいクラスには、サッカー部キャプテンの神童と、霧野がいるのだけど、現に彼らだけは、いつも女の子の視線が集まっていた。
去年までは、普通に囲まれていたりしたらしいのだけど、最近はファンクラブがそれを阻止する動きがあるらしく、そこまで騒がれたりすることはなくなった。
でもマネージャーって、結構恨まれたりしそうでいやだなあ、なんて考えているなまえは普通なのだ。
「あ、部活始まっちゃう‥!」
何気ない話に華を咲かせていたなまえたちは、葵の一声で少し歩を早めた。
楽しい時間って、時間が過ぎるのを忘れちゃうからなあ。
あ、今わたし年寄りくさかった。
なまえは少しうなだれた。
「急ごっか」 「はい!」 「……(こくり)」
さあ、部活に行こうか。
SUCCESS!
(あ、葵ちゃん、また後で相談しようね!) (はい、なまえさん!)
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