成代 | ナノ









※虎丸成り代わり2・女主





「どうしたの?
乃々美お姉ちゃん…」



わたしは、「虎の屋」の一人娘だし、お母さんは病弱だから、わたしが「虎の屋」を切り盛りするのは当然のことだと思っている。

近所のお弁当屋さんの看板娘の乃々美お姉ちゃんが、よく手伝いに来てくれるけど、わたしの家の問題だから、わたしは合宿所から自宅を行き来する毎日を送っている。

ずっと、わたしが守りぬいてきた。

女手一つで、わたしを産んで育ててくれたお母さんのためにも。

辛いこともあったけど、毎回食べに来てくれる近所の人たちはみんな優しいし、頑張ってよかったと思えることだってあった。

だから、わたしは頑張れる。

例え、大好きなことから逃げていたとしても。


今日も、練習を早めに抜けさせてもらって、自宅へ急いだ。

料理を作らなきゃ、ご贔屓にしてくださっているおばあちゃん達のところに出前も届けなきゃ。

やらなきゃいけないことがある。

わたしを、待ってくれる人がいる。



「お、出前かい?なまえちゃん」
「はい!」
「虎の屋の定食は上手いもんなぁ」
「ありがとうございます!
最近定食の新作が出来て、結構好評なんですよ!
よかったらまた食べに来て下さいね」
「なまえちゃんにいわれたら、いくっきゃないよなぁ」



出前の帰りに出会った近所のおじさんと立ち話をしていると、段々と夕陽が沈んでいくのが見えて、慌て店に戻った。



(出前は終わったし、)

(あとは店だけ…!)



鉄の中華鍋をふるいながら、次の注文の品を確認する。

乃々美お姉ちゃんがとってくる注文も、量が多くなってきた。

やばい、忙しい時間帯になってきた。



「なまえちゃーん
お客さんだよー」



わたしが夢中になって中華鍋をふるったり、店の中を駆け回っていると、乃々美お姉ちゃんから声がかかった。


またクラブチームの人かなぁ。

わたし、忙しいからもうやめたのに。

試合に出たって、恨まれるだけだし、出ないとわたしがいないせいで負けたとか言われるし。

なんにもわたし、悪いことしてないのに。

しょうがないじゃない。

楽しくないサッカーなんて、やりたくないんだから。

少なからず、いい気持ちではなかったけど、店の中で出すような大きな声で返事をして、笑顔で振り返れば、そこには



(え、円堂さん)

(豪炎寺さんに、マネージャーさんたちまで…)



(ど、どうして……)



イナズマジャパンの人たちが、わたしを心配して駆け付けてくれたらしく、店の手伝いまでしてくれた。



「一人じゃ大変だろ?
もっと俺たちに頼っていいんだぜ?」
「いえ!
毎日岡持持って出前にいくのも、結構なトレーニングになりますから!」



真面目とか、そんなんじゃない。

わたしは、お母さんやみんなに、出来るだけの恩返しをしてるだけ。



「当然のことをやってるだけですから」



こんなんだからわたしは、小学生のくせに、妙に大人びてると言われるのだ。






**********






「俺たちを、チームメイトを信じろ」



試合中に、真剣そのものの顔で言ってくれた豪炎寺さんや円堂さんを信じて、わたしはフィールド内を駆け抜けた。

そんなわたしに立ちふさがる敵チームのDF三人。



(三人くらいなら、)

(抜け、れる…!)



「おっとイナズマジャパン宇都宮、圧倒的な身体能力と超絶テクで、DF三人を
ごぼう抜きだぁあ!」
「さすが、このFFIに最年少で代表入りしただけのことはありますね」
「女子だからといって、侮れないぞ宇都宮!」



解説席から、驚いた反応が起こったのが聞こえる。

へへっ、こっちは毎日の出前で、足腰鍛えてるんだから!



「いきますよ、
ずっと封印してた、わたしの必殺シュート!」



―――――タイガー、ドライブッ!



久し振りに放ったシュートで、ちょっとぶれたかななんて思ったけど。

おもいっきり、サッカーを楽しめた。



(やったよ、お母さん…!)



試合後、一人ガッツポーズで喜んでいると、円堂さんに頭を撫でられた。



「すげぇななまえ!」



やりすぎちゃったかな、なんて思っていたのに、予想以上に皆さんが喜んでくれて、わたしは頬が緩みっぱなしだった。



「あ、僕もやりたい」
「?!」
「もう、赤くなっちゃって
なまえちゃん可愛いんだから」
「か、かわ…」



(う、なんか恥ずかしい…)



気が付けば、いろんな人に頭を撫でられていて。

楽しいのかな、?

わたし、背小さいし、ちょうどいい位置にあるから、とか?



「こんなに凄いのに、なんでFFに出てなかったんでやんすか?」
「え?」
「そうだな、出ていてもおかしくない実力だ」
「やっぱり女の子だからとか?」
「え、いや、そういうわけじゃ…」



勝手に皆さんの中で膨らんでいく話に、わたしはついていけないでいた。

それよりも、今、豪炎寺さんに認められた?



(FFに出ていてもおかしくない実力って、)



「なあ、なんでだ?」


結局は皆さんの中では結論が出なかったようで、一人違う世界に飛びかけていたわたしに、声がかかった。


「その、…出られないんです」
「やっぱり、女子だからか?」
「だから、それは違うっていうか…」



(あれ、もしかしてわたし、話してなかったっけ?)



「FFは、中学生の大会じゃないですか」
「だから…?」
「……わたし、まだ小6ですから」

「「「えぇええェエエ?!!」」」
「「「小6ぅう?!!」」」















10000色の空を覚えた


スタジアムの真上に広がる快晴の空に
わたしは嬉しさを覚えた。

(それにわたし、まだ本気だしてませんから!)

((なんか生意気になった?!))
((でも、か、かわいい))

わたしが小さすぎて、年齢を聞くのを皆さんがためらっていたとか
密かに豪炎寺さんと鬼道さんが顔を赤らめていたなんて
わたしはもちろん、知らなかった。












つ、続いてしまった…!



お題:alkalismさまより


11_05_08






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