成代 | ナノ









※松川成り代わり女主





「これより、平成○○年度、青葉城西高等学校入学式をはじめさせていただきます―――――」



桜咲く、春。

この日、宮城県にある私立青葉城西高等学校の入学式が、残念ながら雨模様の中決行されていた。

春という季節ながら、雨のせいか少し肌寒い天気だ。

真新しい制服に身を包んだ新入生はやはり誰でも緊張しているのだろう、なんとも初々しい姿を来賓席へ、教師へ、親へ、そして在校生へと見せていた。

本来玄関前に目立つように貼り出されるクラス分けは下駄箱に貼り出されていて、新入生は出席番号順に、新しいクラスごとに固まって座らされていた。

きょろきょろと辺りを見渡してみる―――――一応皆が体育館のステージ側へ視線を揃えているので、あまり目立たぬように、控えめにではあるが。

すると自分の前の列に、周りよりは少し目立つ髪色の生徒が座っているのに気がついた。

青葉城西は、出席番号は男女混合の五十音順と決められているため、自分の前には男子も女子もいるのだが、その髪色は女子が好みそうなかわいらしい色だと思った―――――しかし、その生徒は男子だ。

しかも彼はそこそこ背が高いようで、周りの男子よりは高い位置に頭が出ているように見えるのだから余計目立つ。

男子であんな色にわざわざ染めるわけないだろうし、地毛なんだろうなあと思うが、同時に雨の湿気で広がり放題の自身の癖毛を触ってみる。

まあ、これも面倒だけど手入れとか慣れたし、彼は注目とかされることに慣れてるんだろうなあ、なんてどうでもいいことで結論が出た。



長い校長や来賓の話がやっと終わり、だんだんと姿勢をよく保つのが辛くなってきた頃、式も終了した。
新入生はこれから各自教室に入り、説明が続くらしい。

まあ、そうだよね。

まだ式しか終わってないんだし。

元より眠そうだとか、やる気がなさそうだとかよく言われてきたこの顔だが、きっと余計に面倒くさそうな顔してるんだろうなあ。



「席はー…とりあえず前期最初のテストが終わるまで番号順な
座席表作り直すの面倒だし」



黒板に書かれていた通りに席につき、最初のホームルームが始まった。

初日とはいえ、午後に入学式を開始したため、あまり時間はないようだった。

保護者達はそのまま体育館で説明を受けているらしいが、きっとそちらは校長だの長い話ばかりする人の話が続いているのだろう。

それに比べれば、まあ楽か。

この担任なんかテキトーそうな人だし。

さらっと明日からの通常授業の時間、必要なものなどの確認があり、なんとなくもう少しで終わりそうだな、と思っていた時。



「じゃあ…まあ、ちょっと時間余ったし、チャイム鳴るまで隣とか周りの席のやつとしゃべってていいぞ
立ち歩くのは無しだ」

先生、テキトーで楽そうだと思ったのに。

なんだか勝手に裏切られた気持ちになって、はあ、と溜息をもらした。

実はわたしは人見知りです。



「お隣さんは入学式早々溜息ですか?」
「え、…あ、ごめん」
「いーよいーよ、俺もちょっとめんどくせーなって思ってたし
どーせ明日、自己紹介だのなんだのの時間あるだろうに…」



ニヤニヤとした笑いを浮かべ、話しかけてきた隣の席の生徒は、驚いたことに式の最中に自分が見ていた彼だった。

近くにいるとさらに背の高さが際立つ。

でっか!ほんとでっかい!

少し興奮が戻ってきた自分を落ち着かせ、とりあえずいい印象になるようにゆっくり話出してみる。

そりゃあ、しゃべれと言われて溜息つかれたら失礼だし、悪い印象に映るだろう。



「あ、えーっと…松川なまえです
眠たそうな顔してるってよく言われるけど、これ通常だからよろしく」
「なにその自己紹介、ウケるんだけど
俺はねー、」





―――――花巻貴大、



「初対面で、見た目も名前もかわいい感じなんだね〜、なんて言ってきたんだぞコイツ
フツー、男にたいしてかわいいなんて言わないデショ」
「プハッ!
やべえ、松川その頃から勇者だったんだな」
「…それ、どういう意味ですかー?」



時は三年経ち、なまえ達は高校三年生になっていた。

なぜ、入学式の話を今更していたかといえば、花巻との出会いをしつこく尋ねられたからである。

たいして面白い話でもないのに。



「大体、タカだって、最初の頃はずっと『お隣さん』呼びだったでしょ」
「なんかいいあだ名思いつかなかったんだからしょうがないじゃん?」
「別にわざわざあだ名で呼ばなくたっていいでしょ」
「あだ名だって、今のに落ち着くまでにいろいろ呼んできただろ?」
「いやあ、及川くんが『マッキー』だなんて独特なの付けるからさ、
なんかこう…対抗意識?が芽生えたといいますか?」



また盛大に吹き出して笑う岩泉くんに、なぜか恥ずかしくなってきたのでやめてよ、と言うだけ言ってみるけど、彼は笑いのツボにハマるとなかなか抜け出せないタイプの人だから言っても無駄だろう。



「ち、ちなみに今まで付けたあだ名のレパートリーは?」
「んーと、『花』とか『巻』とか、『たかちゃん』とかだったか?」
「ほとんどそのままじゃねえか…!」
「さすがにこの見た目のゴツさで、花とたかちゃんは痛すぎるからやめてもらった」
「大丈夫だ花巻!どっちかといえばかわいい系だって…!」
「それはどこを見て言ってるのかな?岩泉クン?」

それにしても、よく覚えてたね、と口にすれば、なんとも含みのある表情でタカはこちらを向いた。

これは、何か企んでる時の顔だ。



「な、なに…?」
「いやあ、まあせっかくもらった、俺 だ けのあだ名なんでね、
大事にさせてもらってますよ」
「……なんか今日、みんなおかしいね」



タカのこの企み顔は、なかなか口を割らないタイプの厄介なやつの方だ。

岩泉くんだって、いつもはわたしたちのことにはあまり興味がなさそうで触れて来ないのにわざわざ触れてくるし。

一番変なのは、この話題を振ってきた及川くん本人が、全くしゃべっていないことだ。

ちょっとしゃべったと思えばすぐ俯いてしまって、なんだか負のオーラを背負っているようにも見える。



「大体俺らの仲良しさんは、今始まったことでもないじゃん?」
「!!
で、でも!なんか悔しい…!」
「あ、やっと及川くんしゃべったけど…話が見えない」
「松川も相変わらずだしなあ、ほんと…!」
「もう!なんなのみんなして!?」



なんとなく、自分だけが状況を理解できていないことが分かったため、不機嫌オーラを漂わせてみたけど、タカも岩泉くんもニヤニヤしたままだし、及川くんはわたしにたいしての反応だけ皆無だし。

なんなの、本当に。

三人から顔を背けて紙パックのジュースのストローをかしかし噛んでいると、お、拗ねてるだなんてまたタカが笑う。

そういえばこの癖、バレてるんだっけ。

見た目に反して子どもっぽいことが多いのが面白いらしい。

どこが。



「これはチーズインのハンバーグでも奢ってやらないと、機嫌がなおらないタイプの拗ね方ですかね、専門家の花巻さん」
「そうですね〜、これはこれは…!
それよりも厄介な拗ね方かもしれませんね」
「ほう、それはどのような…?」

「「3日ほど口をきかないでくださいますか?」」

「いぇーい、あったりー!」
「さすがですね花巻さん!一字一句間違いのない正解です…!」
「もーう!
岩泉くんまでなんなの!!」



タイミングをはかったわけでもないのに、振り返って絞り出した言葉を告げれば、また楽しそうにタカは笑う。

なんか悔しい!



「え、それってもしかして俺も含まれてる?!」
「え?なにが?」



やっと反応を示してくれた及川くんは、なぜか焦った顔でこちらを見ていた。

それって?無視する云々のやつ?



「え、及川くんは実害なかったから別にいいけど…」
「そうデショ及川さーん
あなたも同罪でーす」
「残念だったな及川!」
「ま、まじで?!
えー……」
「あれ?また話聞いてくれてなかった感じ??」










蝶々のとまる唇

(ま、俺らが付き合ってる時点で及川が入り込む隙間なんてねえけどな)
(わ、分かってたけど!!
ちょっとくらい希望持たせてくれてもいいじゃん?!)
(自分で聞いといて、自分で落ち込んでるようなメンタル野郎には無理だろ)
(岩ちゃん酷すぎる!!!)

((なんでわたしから離れたところで話し出すんだろう…))







花巻とカップル、及川が不憫、
このテーマで書いてみました松川です!!
ネタ提供ありがとうございました!
さらに気がついたら自分で、成主にも不憫要素を追加し、少し不思議ちゃん要素も追加しました。
デフォは一華(いちか)ちゃんでどうでしょう!
花巻くんとあだ名で呼び合ってることとか仲良すぎることにずるい!と言い出した及川くんからお話が始まってるんですけどね、その描写も要素も無かったよねw( ^ω^ )
中途半端感ありすぎですみません!自己満足なのだよ!!!

花巻と松川の話し方があまり分からないので
個人的にかわいい、チャラい感じを花巻、
反応薄い、ノルときはノってくるのが松川と意識しながら書いてます!どうでもいいよね!!

ほんとまっつん、マッキーの色気がやばくて青城やべえわ……。
本命は岩ちゃんですけどね!聞いてないですよねごめんなさい!!

お題:カカリアさま


14_12_20


21_09_20
Pixivへ移動完了しました。







《戻る》

「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -