成代 | ナノ









※シンドバット成り代わり・女主





両手を後ろに組み、んーっと伸ばしてみると、固まった背中や腰、肩が悲鳴を上げる。



「なんかジジくさいっすよ、あだ名さん」
「失礼だよ、マスルール」



だって、ここ最近書き物ばかりで、身体が固まってしょうがないんだもの。



溜め息と一緒にそう吐き出して、頬を少し膨らませたなまえはそのまま机に突っ伏した。

すると、何を思ったかマスルールはなまえの頭を撫でた。



「…別にすねてるわけじゃないよ?」
「(…仕草がいちいち子どもっぽい)」



と、言いながらも口を尖らせているなまえに、マスルールは頭を撫で続けてみた。

だってこの人、流されやすいんだ。



「……気持ちいい、」
「(…やっぱり)」



先ほどまでは不服そうにしていたなまえだったが、気がつけばマスルールの手に擦り寄るような仕草をしていて、目まで瞑っていた。

幸せそうな顔をされてしまえば、マスルールも悪い気はしないので手は動いたまま。

暫くそんなほのぼのとした空間が時を支配した。



しかしふと、マスルールは気がついた。

あれ、もしかして不味くないか…?

年上には思えないくらい可愛らしいが、この人を寝かしてしまったら、監視として命じられた自分が責任を咎められるのではないか…?

一瞬マスルールの頭の中に過ったのは、まるで般若のような形相で怒るジャーファル。

自分が仕えるのはこの人だけど、怒らせたら怖いのはあの人だから、しょうがない。

これぞ自然の摂理。

マスルールがそっと手を止め、離すとなまえの瞼が上がる。



「…マスルール?」
「…俺、ジャーファルさんに怒られるのだけは嫌なんで」
「王さまが文官に負けた!?」



しょうがないなあ、わたしもジャーファルの雷は嫌だし。



未だに頬は膨らませたままだが、再び羽ペンを握ったなまえは、ゆっくりと身体を起こした。

まあ、なんだかんだ言って素直なんだよな、この人。



いつも通り腕を後ろで組み、立つマスルールを確認したなまえは机に向かった。

上司がサボっていたら、部下に示しがつかないもんね。

でも、わたしは…



「サボっていたつもりは無いんだけどなあ……」
「……そればっかりは、俺もどうしようもできません」
「何でジャーファルには分からないのかなあ
ただ遊んでいたわけじゃなくて、ちゃんと国民の意見を聞きに行っているだけなのに」
「……」



シンドリア国民が誇る王さまは、実に献身的であることで有名だ。

わざわざ変装をして、街の様子に耳を澄ましに行くのはほぼ毎日のこと。

美しい中世的な顔立ちと、愛想のいい人柄は誰にでも好かれるし、ただでさえ目立つ紫色の髪で、実は国民達はいつも気がついているのだが、そこまでして国民のために尽くそうと奮闘する王の姿に、王のためといつも気づいていないフリをしているというのは皆が知っていることだった。

まあ、必死に隠している姿が一生懸命でかわいいというのもあるが。



「…あだ名さんは、今でも十分いい王さまっすよ」
「ふふ、マスルールは優しいね
でもわたしなんて全然だよ」



民のため、より良い世界を作るためにこの国を造ったのだから。

もっと国民のために、力になりたいんだ。



そう語ったなまえがどこか儚げで、今にも消えてしまいそうな気がして。

マスルールは無意識のうちに、なまえの腕を掴んでいた。



「マスルール?」



この人はたまに、凄く分からなくなる。

皆に求められ、愛される国王。

幾度、命懸けで闘う最強の迷宮攻略者・七海の覇王。

笑顔は純粋な子どものように無垢で、部下を束ねるその姿はいかなる屈強な男よりも頼れる。

不思議とどの姿も相応しく見え、どの姿も相応しくないように見える。

それでも―――――あなたは俺たちの光だから、どうか……



「早く終わらせてください」
「…なんか最近、マスルールまでジャーファルみたいなこと言うのね」



頼りないとか、弱いとか、そんなことで人を切り捨てるような人じゃないことは分かっているけど―――――この人は守りたい人だから、そばにいなくては。



「国ん中ならいいっすけど、またふらりと他の国にでも行かれたら―――――心配なんすよ」
「それもジャーファルみたい」
「……」
「みんなが心配してくれてることは分かってるよ
でも、もっとたくさん世界を見て、知って、何かをおこしたい―――――それがわたしっていう生き物なの」
「……」



子どものように愛らしい笑顔なのに、その目には強い意志が宿っていて。

ああ、この目が俺たちが一番惹かれた姿だ、とマスルールは掴んでいた腕を無意識のうちに強く握った。

すると、ファナリスである己の手をやんわりとそつなく外したなまえが、その瞳にマスルールを映して言う。



「ま、今はこれを早く終わらせて―――――マスルールのためにパパゴラスでも一狩りしてきましょうかね!」



本当にこの人は、



「!…俺も行きます」
「ありがとー」















僕の心を容易く操ってしまうね


(…じゃ、)
(お待ちなさい、あだ名さま
……仕事が終わったのはいいことですが、その手に持っているのは…?)
(なまえ特製・パパゴラス捕獲用網です!
マスルールとちょっと森まで行ってくるね!)
((…以前没収したはずなのに)
…マスルール、あなたまで?)
(…っす)
(確か今日は八人将皆、夜には揃うよね!だから皆で食べよう?
ジャーファル、料理長に材料は任せてって伝えといてね!)

(はあ…
まったく、あなたという人はしょうがない人ですね)

わたしたちのため、と分かれば文句は言えないですよ。







短い。
そして冒頭がどっかで書いたような…骸んときか。
ネタすくねーな、俺…。

デフォ名は四大精霊の風からシルフでどうでしょう。
風のように自由気儘。
不思議とことが上手く運ぶ。
どんな向かい風でも味方につけてしまう。
そんな人、それがシンドバット!(どや)


13_02_12


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