成代 | ナノ









※ジャーファル成り代わり・女主





「やっと見つけましたよ、シンさま」



大袈裟なほど肩を揺らしたシンドバットは、ゆっくりと後ろを振り向いた。

すると予想通り、にっこりと笑ったなまえがいた。

嗚呼、これが普通に、いつものかわいらしい笑顔だったらよかったのに。



「や、やあなまえ…いい天気だね」



シンドバットは片手を挙げ、にこりと笑って話し掛けてみる。

少しだけ、顔が引きつってしまっているのはしょうがない。

しかし一向になまえの表情は変わる様子はなく、明らかに怒っているのが目に見えて分かる。

おとなしく怒られるしかないのか。

引きつってきていた顔を元に戻して、シンドバットはおとなしくなまえの方に向き直った。

はい、観念しました。



「シン、まず自分から土下座が出来たのは褒めてあげます」
「じゃあ…!」
「それとこれとは話は別です
それに私がさせたみたいで気分が悪いです、誤解されたらどうすんだ、やめろ」
「…は、はい」



あんなにかわいい顔のどこからそんなドスの効いた低い声が出てくるんだろうか。

涙目のシンドバットには構いもせず、なまえは腕を前に組んだまま。

は、はい、直ぐにやめます。

嗚呼、いつからこんな辛辣で冷徹な子になってしまったんだろう。

さすが元暗殺者というべきか、直感というのか、特にシンドバットを探すのにはなまえはプロ級である。



「それで、自分からそのようなことをしたということは、この状況を理解してるんですよね?」
「…俺が逃げ出したのが悪かった、です」
「はい、よくできました!」



正座をして項垂れていたシンドバットの頭にぽんと、優しい衝撃。

見上げると、普段の優しい笑みを浮かべたなまえがいて。

ほ、今日は軽めに終わりそうだ、と安心したシンドバットだったが、その手が首の辺りまでゆっくりと下がってくると状況は一変した。

色っぽい撫で方ではあったけど。



「って、言うとでも思ったかこの裸王!!」
「!ら、裸王って…否定は出来ない、が…」
「本当にいい加減にしてください!あなたにしか出来ない仕事だから頼んでいるんですよ?!国王であるあなたにしか!!
どうしていつもいつも、逃げ出すんですか!」
「い、ま謝ったのに、…!」



ぐいっと引かれたのは間違いなくシンドバットの首。

犯人はなまえの手。

はい、御愁傷様です。



「いつになったら王としての自覚が生まれるんですか?!」
「わ、悪かった…だから首、を…!」



シンドバットは、必死に訴えた。

それはもう、王としての威厳云々は全くないほどに。

嗚呼、哀れな王。

いや、元はといえばシンドバットが悪いのだから、自業自得である。

いまだ冷ややかな目で見てくるなまえに、シンドバットは限界である。

勿論、生きるか死ぬかの境目で。

部下に殺された王とか、情けないわー。

そんなことは絶対に避けたい。



「…わ、悪かった、なまえ」



もう一度謝ってみた。

すると、シンドバットの首を絞めていたなまえの手の力が、少しだけ弱まって。

お、効果あったかとシンドバットが顔を上げると、なまえは俯いて表情が伺えない。

泣いているようにも見えて、シンドバットは心配になりなまえの顔を覗きこもうと手を伸ばすと―――――途端になまえの手で制され、シンドバットの手は宙を切った。



「なまえ…?」
「………シンは、何も分かってないです」


「シンが、いなくなってしまったのではないかと思うことが、わたしたちにとってどれだけ怖いことなのか」



俯いていた顔を上げたなまえは、今にも泣きそうな顔をしていた。

胸を打たれたような衝撃が、シンドバットに走った。

なまえ達八人将は皆訳ありの人間で、シンドバットによって救われた身。

何か辛いことでも思い出させてしまったのでは、とシンドバットにさらに焦りが募る。

普段あんなに強気ななまえが、滅多に弱みを見せないなまえが、泣いているだと…?!

まだ泣いてはいないのだが、普段からは想像出来ないほどの弱々しさに、シンドバットは戸惑っていた。

というよりも、女性の泣きそうな顔には特に弱いのがこの王である。

効き目は抜群!なまえに有効判定出ました!



「…すまない、なまえにそんなに辛い思いをさせていたなんて、気がつかなかった
だから悪かった、これからはちゃんと精進する」
「本当、ですか…?」



余りに儚げで、消えてしまいそうななまえを思わず抱き締めたシンドバットだったが―――――残念ながらそれは、良い判断だとは言えなかった。



「今、ちゃんと言いましたね?」
「…?」



途端にはっきりとしたいつもの声で話し始めたなまえに、シンドバットはまさかと思い腕の中を確認した。

そのまさかは、当たりである。



「捕まえましたよ、シン」
「!
なまえ、君は…!」
「今日は一日、離しませんからね」
「…やられたよ」



なまえからしっかり抱きつかれ、シンドバットは我が身が捕らえられたことに気がついた。

言われた言葉は恋人同士なら嬉しいだろうに、まあ所詮二人は上司と部下の関係で。

―――――今回もなまえの作戦勝ちであった。















太陽がいつか流れ星になる日

(本当になまえ、君には敵わないよ)
(何をおっしゃいますか、我がシンドバット王よ)
(……)







ジャーファル成主は女としての武器も使います!
まあ、女の子でもそんなに変わらないか…

マギ初だから、うまく書けなかった…。


お題:alkalismさまより


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