成代 | ナノ









※ベルフェゴール成り代わり・女主





「う゛ぉ゛おおい!!
あだ名のヤツ、何処行きやがったぁああ!!」



ボンゴレ独立暗殺部隊ヴァリアー本部に響き渡る大声に、広間で思い思いに過ごしていた隊員達の眉間に皺が寄る。

何度も繰り返され、次第にその声が近づいてきているのが分かると、タイミングを合わせた訳でもないのに、隊員達は一斉に溜息を漏らした。



「う゛ぉ゛おおおい!!
テメェら、あだ名見てねえかああ!!?」



遂に大声の主が広間の扉を開けて、目の前に迫って来た時、耐えられなくなったマーモンが口を開いた。



「…またあだ名が何かやったのかい?」



マーモンは聞いた方が面倒なことになるのは分かっていたが、聞かないことでいつまでも勝手に騒がれる方が迷惑な話だと呆れ顔である。



「あだ名のヤツ、また任務外のヤツ殺りやがったんだああああ!!
運の悪いことに、殺っちまったヤツが…」



―――――同盟ファミリーの幹部だったんだああ!!



「……まあ、あだ名だしね」
「…あだ名ちゃんだからしょうがないわよぉ」
「テメェらがそうやって甘やかしてるから、いつまでたっても成長しねえんだあああ!!」
「そうかしらー?」
「そういうスクアーロが一番甘やかしてるんじゃない?」
「あぁああ?!!
何か言ったかああぁああ?!!!」
「「無自覚だね/無自覚ねん」」



彼らの話題に上がっているあだ名―――――本名はなまえというが、彼女はヴァリアー隊で、ボスであるXANXASに次ぐ問題児である。

ナイフ、ワイヤーを巧みに使って相手を切りつけるその戦闘スタイルから、『切り裂き姫』と呼ばれている。

それが、女の子故に剣や銃の重さに耐えきれないというかわいい理由から誕生した戦闘スタイルだったが、今ではそれにたいしては右に出るものはいないと言われるほど、技術にかけている。

元々ワイヤーというのは頭がよく働かなければ、自らを追い込むことにも成りゆるものだ。

だから、幼少期から使いこなしているあだ名は―――――本物の天才なのだ。



「何かおやつないー?
あだ名、お腹すい、た…げ、」



そんな時、ギギーッと音をたてて、広間の大きな扉が開かれ、あだ名が顔を覗かせた。

まさか自分の噂をされているとは知らないあだ名だったが、あからさまに顔を歪めた。

だって、みんなしてじろじろ見てくるんだもの。

こんな時は悪い予感しかしない。

言い切れるのは、あだ名に思いやるふしが有りすぎるからである。



「なんか、やっぱりいいや
あだ名帰るね」
「って、逃がすわけねェだろぉおお?!」



親猫が子猫にするように首の後ろを口で掴む―――――スクアーロの場合は、あだ名の隊服の襟を掴んで、叱るように顔を覗きこんだ。

首閉まってるよー、殺す気ですか?

まあ、ここは暗殺部隊なんだけど。



「うぇー…苦しいよ、スクアーロ」
「こうでもしないと逃げるだろうがぁあ!!」
「うるさいなー、至近距離で怒鳴らないでよ、カスアーロ
あだ名、鼓膜破れちゃうよ、ちょっと静かにしてくんない?
てかもう喋るな」
「あ゛ぁああ?!!何だと…ッ!?」
「あらまあ、あだ名ちゃんったら…」
「憐れだね、スクアーロ」



ボスの口の悪さが移っちゃったのねえ、と呑気に身体をくねくねさせながら、ルッスーリアは自分の座っていた椅子にあだ名を座らせると、自分は奥へと行ってしまった。

何か捕まったみたいだなあ、と思ったあだ名だったが、ルッスーリアが去り際にあだ名ちゃんの分の紅茶とお菓子の準備してくると言うものだし、スクアーロから助けて貰ったから、おとなしく椅子に座ったまま。

珍しい、とあだ名を暫く見ていたスクアーロだったが、ふと我に帰り、あだ名に詰め寄った。



「う゛ぉ゛おおい!!
あだ名、お前また任務に関係ないヤツやっちまったらしいなあ?!
本部から苦情がひどいから、ボスの機嫌がすこぶる悪いんだぁああ!!
なんとかしろぉおお!!」
「なんとかって…あちらさんが勝手に怒ってるんだしー、あだ名は関係ないでしょ?
え?馬鹿なの?」



あだ名に冷めた目で見られたスクアーロは、う、と言葉に詰まった。

だが、よく考えれば



「勝手に怒ってるんじゃなくて、お前が怒らせてんだろぉお!?」
「まぁねー」



スクアーロはヴァリアー内で知られている通り、あだ名には甘い。

本人は無自覚にやっているらしいので、もちろん気付いてはいないのだけど―――――やられているあだ名は、もちろん気づいている。

だから、面倒な時は甘えてみるか激しく突き放すかすると、スクアーロの方が諦めるのだ。

もうちょっと強めに言わなきゃダメだったかなあ。

そういえば、さっきも突き放しちゃったし、甘えるべきだったか。



「でもさー、あだ名、怒らせようと思ってやったわけじゃないし?
だから、向こうが『勝手に』怒ってるんじゃない?」
「結果的には原因はお前だぁああ!!
いい加減に認めろぉおお!!!!」



きーん、とあだ名の頭に響いたスクアーロの大声に、あだ名はかっちーんと口で言った。



「あだ名、さっきから言ってるじゃん!
スクアーロうるさいよ、鼓膜破れちゃう!!」
「あだ名ちゃんが珍しく大きな声を出したわあ…!」
「これは完全に怒らせたね
なんとかしなよ、スクアーロ」



いい香りのする紅茶とお菓子を手に戻ってきたルッスーリアが、あだ名の目の前にそれらを並べたが目もくれず―――――あだ名はその眼こそは見えなかったが、スクアーロだけを睨み付けている。

身の危険を感じたのか、同じテーブルを囲んでいた隊員たちは、素早く椅子から立ち上がりその場を少し離れる。

それに気づいていないのか、気づいていてもどうしようもないからなのか―――――スクアーロはあだ名の視界の中から抜け出すことが出来ずにいた。



ヤバい、直ぐにでもナイフで殺られそうな雰囲気だ。

そう、身構えたスクアーロと幹部達だったが、プイッと顔を反らしたのはあだ名で。



「もう、ボスに言いつけてやる!」
「「「え?」」」



とんでもないことを言い出した。



「な、なに言ってんだぁああ?!!
ボスは今…」
「もうあだ名は決めたの!
止めたって無駄だからね!!」



何度も言うべきだったが、あだ名は頭がいい。

つまり、策士である。

スクアーロにしろ、ボスであるXANXASにしろ、あだ名にかかればまんまと言いくるめられてしまうのである。

だから、このヴァリアーで生きていくには―――――XANXASさえ味方につけておけばいい。

何て腹黒い子なんだろう、元々ですが。



昼間なのに薄暗い廊下を、暗殺者らしくない大きな音をたてて進んでいくあだ名。

お目当ての部屋の前に辿り着いたあだ名は、迷いもなく扉をノックしたが―――――あだ名は今の状況を忘れていた。

扉を開けた先に見えた、漆黒のオーラに、あだ名は自身の身体が震えるのを感じた。



『本部から苦情がひどいから、ボスの機嫌がすこぶる悪いんだぁああ!!』



スクアーロの言葉が蘇る。



「…なんだ、カス姫
随分遅かったが、謝罪の言葉でもちゃんと考え付いたか?」
「!
ボ、ボス……あ、あの…!」



絶体絶命。

あだ名の額から冷たい水が流れ、床に落ちた。

まるでそれが合図だとでも言うように、椅子を回転させたXANXASの視線があだ名とぶつかった。

ヤバい、これはマジでヤバい。



その時、あだ名の頭の中ではなく、直接耳に響く何かが―――――



「おいあだ名、話を最後まで聞けぇええ…ッ?!!」



あだ名はにやりとニヒルな笑みを浮かべた。

あはは、流石わたし。

姫にはどうにもならないことなんてないのよ。










真白の色の百年の

あだ名に倒れ込むように現れたスクアーロは、いつのまにか逃げ出していたあだ名の濡れ衣を受けたと、後にヴァリアーに語られた。







2012夏企画、雨音さまへ
ギャグというのか、何とも言えない感じになってしまいました。
落ちって絶対、甘い感じなつもりでしたよね…?
復活、久しぶり過ぎて、正直よく分からなかったです、すみません(;´∀`)
ベルは一人称が王子だから、この子は姫にでもしようと思ったんですが
それじゃあ普通すぎるかなあって思いまして。
結構素敵サイトさまで見かけるので…。
個人的に、自分のこと名前で呼ぶのが可愛いと思うので、そうしました。
かなり成代を裏切ってる感があります、ごめんなさい。

雨音さま、受験モードに入られたんですね!
受験か、懐かしい…(遠い目)
管理人からするとただひたすら勉強をしていた覚えしかありませんが、
人それぞれだとは思いますが、高校生活、楽しいですよ!
辛いのも、後でいい思い出になります!!
…偉そうに言って、すみません!

これからもコロナをよろしくお願いします!
勉強だけでなく、お体にも気をつけて雨音さまなりのペースで頑張ってくださいね!
復帰、お待ちしています。
2012夏企画:雨音さまのみフリーでした!


お題:alkalismさまより


12_09_12






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