※葵成り代わり・女主
「なまえー、早く行こうよー」
「待って、日焼け止め塗ってから…」
「えー、そんなの別にいいじゃん」
「よくないの
女の子にはスッゴく大切なんだから」
なまえが真剣な顔で答えると、天馬はたいして興味のなさそうに、ふーんと声をもらした。
「でもさ、出てきてから結構時間掛かっちゃってるからまずいよ」
「分かってるって」
練習に必要なコーン類を取りに来たなまえの手伝いとついてきた天馬となまえは、相談や雑談をしながら探していたせいか、探しに出てきてから既に二十分は経とうとしていた。
さすがにやばいと天馬は既に探し終えた大量の器具を抱え、なまえに早く帰ろうと促す。
しかし、忙しい練習時間。
更衣室で一度は塗ったものの、もう時間は幾分経ったし、思ったよりも日が強い。
嗚呼、なんてことだ。
「…別に、先に行ってていいよ?」
「!
え、あ…ま、待つよ、俺待つから!」
「…そう?」
慌てたような、何処か怯えたようにも見える天馬を軽く受け流しながら、なまえは倉庫に積まれた段ボールの上に座って日焼け止めを腕に塗り広げた。
ちょっと天馬の様子が怪しいような気もするけど、まあいいや。
最近、異常気象だの温暖化だので世間を賑わしているこの太陽さんは、全く人間に、特に女子に優しくない。
紫外線なんて、女の敵以外のナニモノでもないのだ。
おかげで日焼け止めの支出が半端ない。
ただでさえ少ないお小遣いの中からやりくりしているのに。
「なまえ、今日って何のメニューやるの?」
日焼け止めを塗ることをやめる様子が見えないなまえを見て、天馬は諦めたように器具を床に置いて、なまえの座る近くに腰を降ろした。
だってなまえ、昔から一度言い出したら聞かないんだから。
「今日は、次の相手がディフェンスに力を入れてる学校だから、対策として…
そのファイル、見ていいよ」
「な、なんか今途中で諦めなかった?」
「だって、天馬…言葉で説明するより、図とかあったほうがいいでしょ?」
「た、たしかに…」
伊達に幼馴染みしてないんだから、となまえが溢すと、何処か嬉しそうに天馬も俺も同じこと考えてたと笑ったが、直ぐにその顔は引き締まる。
まるで、何かに怯えているかのように。
「どうしたの?天馬
なんかさっきからへ、ん…」
流石に二回も同じような表情をしていれば、心配になる。
日焼け止めを塗る手は止めなかったが、なまえは首から上を天馬の方に振り返ると―――――また怯えたような顔をしている。
だから何があったの、と天馬の視線を追ってみたなまえは、首を傾げた。
「あれ、剣城?」
「…」
倉庫の扉に手を掛けて、こちらを覗きこんでいる剣城がいた。
しかも凄い形相。
走ってきたのか、息を切らしたままヅカヅカと倉庫内へと入ってくる姿は、何故か怒っているようにも見える。
「なまえ、お、俺、やっぱり先に行くね…!」
「え?
あ、なんか待たせちゃってごめんね、天馬」
「ぜ、全然!」
天馬は何故か逃げるように先に行ってしまうし、剣城は相変わらず不機嫌オーラを撒き散らしながら―――――
「おい、」
「うん?」
なまえの目の前までやってきた。
ちょっとちょっと、いきなり現れて不機嫌オーラを撒き散らされても困るんですけど。
しかし別にそれとこれとは関係ないとでも言わんばかりに、なまえの日焼け止めを塗る手は止まらない。
あと脚だけだ、早くしないと。
「…人が心配してやったってのに、当の本人は呑気に喋ってやがって」
「うん?」
はー、とおもいっきりため息を吐いた剣城に、なまえはやっと日焼け止めを塗る手を止めた。
勿論、塗り終わったからです。
「お前、分かってんのか?」
「えーっと、…」
正直に言えば、全く分からない。
でも、天馬がなまえにたいしていつも以上に優しかったり、必死になって何かをしてくるときは、大抵剣城が何かしら関わっていることが多いということをなまえは知っている。
何故剣城が、と聞かれれば、理由は簡単。
剣城はなまえと付き合っているからである。
しかしなまえは、過保護な親並だと思っているのだが。
だから、過保護な剣城に言われたから、天馬は何をしていたか考えればいい。
確か、出てきてから結構経っているから早く帰る、だったっけ。
つまり、どういう……。
「……心配、してくれたんだよね?」
剣城が何かにたいして怒ったり、聞いてくるときは、確実に正解しないとまた怒られたりする。
言葉で聞いてないんだから、分からなくたってしょうがないじゃない、となまえはいつも思っていたりする。
外れたらまずい、となまえは恐る恐る剣城の顔色を伺ってみる。
怒るとお母さんよりも怖いんだよなあ。
「……ったりめえだろ
こんな暑い日に、倉庫に行ったっきり戻ってこねえなんて言われたら
普通ぶっ倒れてんじゃねえかと思うだろ…?!」
「ふふっ、…」
よかった、当たっていたみたいだ。
なまえは安心と、心配していたことを素直に言えずに恥ずかしがっている剣城に、笑みが溢れた。
ああ、そっか。
お母さんなら心配していたことを隠したりしないもの。
それにわたしが、こんなにも心配してくれたことを嬉しいだなんて思わないもの。
「な、なに笑ってんだよ!
ほら、早く行くぞ!!」
それ、貸せよとなまえの手に握られていた器具類を取り上げるように持ち上げた剣城の赤くなった耳を見てしまったなまえはまた、笑みを溢した。
まったく、
素直じゃないんだから(でも、そんなところも大好きなんだよなあ)
もしかして、なまえを一人残すのが余計に心配させることになるから、天馬は残ってくれたのだろうか、なんて考えたなまえだったが、事実は少し違っていた。
(なまえに何かあったら怒られるし、でも二人っきりでいるともっと怒られるなんて…もう俺、どうしたらいいんだよ、)
2012夏企画、瑞希さまへ
素直じゃない=心配なんだけど、直接関わるのは恥ずかしいから大抵天馬を(脅して)つかう、な剣城でした。
前から葵書きたかったので、すごくテンションがあがりすぎまして。
個人的に葵と剣城がすきなので、こうもピッタリ当ててくるなんて、貴方はエスパーなのかと思いました!
すみません、冗談です!(笑)
変なテンション故によく分からない出来に…あ、はい今まで通りの低クオリティです、すみません(m´・ω・`)m
この度は企画に参加して頂いてありがとうございます!
これからもコロナをよろしくお願いします!
では、まだまだ暑い日が続きますので、お体に気をつけてくださいね!
2012夏企画:瑞希さまのみフリーでした!
12_08_07
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