成代 | ナノ









※榛葉成り代わり・女主





「なあなまえー」

「なーに?安形くん
…椿ちゃんなら見回り行ったよ?」

「あー、どうりで静かなわけだ…ってそうじゃねえよ!」



おー、ナイスノリツッコミ、となまえが拍手をすると、安形は気に入らないといった様子でなまえを見た。



「人が話してるところを途中で遮るなって」

「ごめんごめん」

「(コイツ謝る気あんのか…?)」



手をひらひらと振っただけで、なまえの視線は机上のまま。

何してんだ、と気になった安形はなまえの机上を覗いてみた。

あ、やべ。



「あ、安形くんやってくれる?」

「(それって、俺の…)………わりぃ」



安形の記憶の片隅にあったそのプリントは、紛れもなく安形のやるべき仕事で。

どうやらなまえが代わりにやってくれているようで、安形は少し小さくなった。

立場がありませんので。



「…よっし、これでいいかな
終わったよー」

「なまえさんはお優しいですわね
だから生徒たちにおモテになるんですわ」

「これくらい別に優しくなくたって出来るよ…?」

「DMF
-だまれ 無自覚 ふわふわ頭-」

「何かいきなり罵倒された?!」



よく分かんないけど傷ついたー、と頬を膨らませたなまえに、安形はばっと顔をそらした。

くそ、このすっとこどっこい!

周りの心情、なまえは知らず。

みんなしてわたしのことからかって遊んでるのね!ひどい!

と、勘違いを始めた榛葉なまえ―――――彼女は、開盟学園のプリンセスと名高い。
それは彼女の万人受けする可憐な容姿と、紳士的な性格によって必然のようにその名がついた。

性格について本人は無自覚で、容姿については特に理解していない。

つまり、無自覚で人を誘惑しているのである。

ほんとにタチの悪いヤツだ。



「あ、何言おうとしてたか忘れちまった」

「…なんか、流石安形くんって感じだね」



頑張って思い出して、と笑いながら言われた安形は、なまえから顔をそらして思考を巡らせた。

あー、えっと……



「ただいま戻りました!
校舎内、特に異常ありません」

「お疲れさま、椿ちゃん
これ、安形くんが出し忘れてたヤツ、お願いね」

「あ、ありがとうございます……もしかしてまた榛葉さんが…代わりに…?!」



会長、何でまた榛葉さんにやってもらってるんですか!と、見回りから戻ってきた椿が言おうとしたが―――――



「あ、あの…会長はどうかしたのですか?」

「…珍しく、考え事してるの」

「……何だよなまえ、珍しくって
こっちはちゃんと聞こえてるぜ?」

「あれ、マジですか」



完全に考え中。

周りのことが見えていないような様子だった安形に驚いた椿は、内心驚きを隠せていなかった。

あ、あの会長が…やっとやる気を……!



「あ、思い出した」



安形がぽろっと呟いた。

その表情は、明らかに何かを企んでいる時の顔だと気が付いたのは、安形の正面にいた浅雛だけだったが。



「なまえ、今日この後付き合え」

「この後…?」



この後って…



「見回り付き合えってこと?」

「いやいや、なーに言ってんだよ
見回りなら今椿が行っただろうが」

「じゃあ…他に何かすることあったっけ、ミモリン」

「(会長は、放課後のご予定のことを言っているのでしょうが……)
分かりませんわ、……特に無かったと思いますけど」

「だよねぇ……」



まさか、こんなはじめから止まってしまうなんて思わなかった、と安形は溜息をついた。

まあ、なまえはこういうヤツだからなあ。



「だから、放課後の話だって
ほれ、これ……サーヤからもらったからよ」

「!
駅前のケーキ屋さんの割引券?!
え、いいの…?!」

「おう、一緒に…」

「ありがとう安形くん!
ねぇねぇミモリン、デージーちゃん、今度一緒に行こう?」

「あり……?」



俺、付き合えって言ったよな?

安形は自分の記憶を探してみたが、間違いはなかった。

あれ、なんでこうなって…



「嬉しいですわ
ね、デージーちゃん?」

「会長、哀れ」

「珍しくデージーちゃんが単語以外の言葉をしゃべった…!」

「いや、これも単語だし
てかお前のせいな」

「え?
なんでわたし……?」

「や、やっと会長がやる気を出してくれたと思っていましたが……違ったようですね
遊びの約束等、余所ごとを持ち込むのはやめてください!」










銀河群泳



(はあ………もう俺帰るわ)
(か、会長ッ?!
まだやることが残っていますが…!!)
(ダメだよ安形くん、頑張ろうよ)
(お前のせいだ、ばーか)
(え?!
何でまたわたしのせい?!!)
(会長!
なんでもかんでも榛葉さんに当たるのはやめてください!)
((椿くんも、鈍感ですわね))







プリンセスとの折角のデートチャンスなので、ミモリンも助け舟を出しませんでした( ´艸`)
ミチルはホント、苦労人だと思うから
敢えてこの子は相手に苦労させる人にしました!(笑)


お題:alkalismさまより


12_06_12


21_11_29
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