※速水成り代わり・女主
ヘッドフォンから流れる音楽が途絶え、また新たな旋律が流れてきた。
ランダムに流れるようにしてあるからなのか―――――さっきはクラシックのおとなしい曲だったのに、次はロックだなんて。
そんな簡単に気分は変えられるものじゃないのにと思いながら、なまえはプレイヤーのボタンを押して、少しだけ音量を下げた。
周りの音が全く聞こえていないくらいの音量では聞いていないから、微かに何かの音を感じて、なまえは後ろを振り返ってみた。
すると、なまえの視界には―――――
「あ、速水ー!
やっと気付いてくれた…!」
「…ヘッドフォン付けてんだから、気付くわけねえだろ
考えろよバーカ」
「そっか!
………ちゅーか、倉間気付いてたなら教えてくれたってよくねー?」
「………」
「え?何で無視?!」
ぶんぶんと大きく手を振りながら近づいてくる浜野と、浜野の少し後ろを倉間が歩いているのが見えた。
あれ、もしかして呼ばれてたのかな。
「ごめんなさい、……何か用だった‥?」
プレイヤーの電源ごと切って、ヘッドフォンを首にかける。
さあ、いつでもどうぞ、と話を聞ける体制を作ったなまえだったが、目の前にやってきた浜野はただニコニコと笑っているだけ。
うん?何か楽しいことでもあったのかな。
「うん?
なまえが見えたから、呼んでみただけ〜」
「……そうなんですか」
一見彼氏彼女か!と誤解を招きそうな発言だが、浜野にはそういう気はないだろう。
ああ、この人はそういう人だった。
そういえば、学校では恥ずかしいからと拒否していた名前呼びが無くなっている。
この人、そういうところはちゃっかりしてるよなあ。
「これからどっか寄ってこうと思ってんだけどよ、なまえも行くか?」
「……いいんですか?」
「いいから誘ってんでしょーよ
もう、なまえは遠慮しすぎ!」
少し遅れてやってきた倉間の提案になまえは少し頭を巡らせ、予定の確認をした。
なまえの予定は空いていたが、二人には二人の予定があるだろうし、邪魔はしたくないと一度断りをいれたが、その必要はなかったようだった。
自分がされて嫌なことは他人にもしたくない。
いつでもなまえの行動基準は、まずそこだった。
だから、考えている分だけ返事が遅くなるし、考えすぎてネガティブにもなる。
なまえのその一面は、優しい性格故の長所であり、短所であったりした。
「俺はゲーセンか、マックかな
みんなは?」
「俺はどっちでもいいけど、どっちも最近行ったぜ?」
「マジで?!
じゃあ…釣り堀!」
「…それは昨日、行きましたよ?」
「あれー?そうだっけー?」
なまえは、自分と似ていて冷静な倉間とは考えが一致することが多いが、正反対だとよく言われる浜野とは、全く考えが一致しない。
相変わらず能天気なヤツだな、と倉間は浜野に対して溜息をついた。
ああ、浜野はあんまり考えてない感じがするからか。
「もー、二人ともそんな目で見ないでよね
俺だってちゃんと考えてるよ?」
「はいはい、」
「……」
「絶対信じてないっしょー?!」
不機嫌だと主張するように頬を膨らませた浜野に、思わず笑ってしまったなまえ。
それを見て、浜野は―――――
「なまえ、やっと笑った」
「…え?」
「おう、今日初だな」
にこやかに笑った。
皆が言うくらい、なまえはあまり笑わないらしい。
本人は無自覚なのだが、相手を気遣い過ぎるあまりに、気持ちが顔に出にくくなってしまっているのだ。
だから、一緒に居て楽しくても上手く笑えないし、かえって誤解を招くこともある。
まあ、それ故に周りではなまえの笑顔を何回見れたか、競っているだなんてもちろんなまえは知らない。
「もう、何年も一緒にいるんだからさ
なまえの表情の変化くらい分かるって!」
「おん、慣れたな」
「……二人くらいですよ、わたしのこと分かりにくいって言わないの」
「そりゃあ、なあ…?」
「そんなの当たり前っしょ」
君僕方程式:
君のことは僕だけが知ってればいい(…)
(…)
((…二人して黙っちゃった?))
(結局どこ行くー?
なまえのすきなクレープ屋でも行く?)
(…、(クレープ…!))
(決定だな、早く行くぞ)
((な、なんで分かって…?!))
速水成は、続かせる気なので、わざと変なタイトルにしました( ´艸`)
この子はちょっとネガティブすぎるけど、まあそのうちなんとかなるさ!(笑)
12_05_16
《戻る》