成代 | ナノ









※虎丸成り代わり5・女主





「なまえちゃーん!」
「ふぇ?」



いきなりのことに驚き過ぎたわたしは、思わず変な声が出てしまった。

恥ずかしい、と下を向いたけど、近寄ってくる春奈さんにはもうかわいいんだから!と抱きつかれた。

か、かわいいとか…!



「赤くなっちゃって、やっぱりなまえちゃんかわいい!」
「そ、そんなことないですよ…!」
「もう、音無さーん!いつまでやってるんですかー?!!」
「なによ立向居くん……嫉妬?」
「な、何言ってるんですか!
早く行きますよ…!!」
「全く、素直じゃないんだから…」
「?」



午前、午後と一日中サッカーに明け暮れる毎日。

メンバーにはサッカーをすることが楽しいと思っている人ばかり集まっているからなのか、それほど苦ではないみたいだけど。

実質自由時間といえば―――――ほとんど無いに等しかった。

そのためなのか、少しの空き時間に皆が仲良くなろうと話し始める。

もちろん、一人だけ歳が低いわたしでも、例外ではなかった。



歳が近いからなのか、一番絡んでくるのはマネージャーの音無春奈さん。

特に重要な話ばかり、というわけでもないので、いつも気軽に話し掛けてくれる。



「なまえちゃん、今日ね…!」



いつも楽しい話題ばかりを持ってきてくれる春奈さん。

わたしは、お姉ちゃんがいたらこんな感じなんだろうなあと勝手に考えているけど。

なんかちょっと、乃々美姉ちゃんとは違うんだよなあ。

乃々美姉ちゃんはずっと一緒にいるから、なんだかお母さんにちょっと似てきた感じがするし。



わたしは今、食事の支度が出来たことを知らせにきてくれた春奈さんと一緒に食堂へ向かっているわけだけど。

そういえば、さっきすれ違った立向居さんは、心なしか顔が赤かった気がした。

春奈さんと話したらああなったわけだし、もしかしたら……。

後で聞いてみようかな。



「なまえちゃん、すごく嬉しそうな顔してるけど、どうかしたの?」
「い、いえ…!
さ、早く行きましょう春奈さん!」















**********





「みんな揃ったな!
じゃあ―――――」



いただきます!



「あ、なまえちゃんの隣、初めてだ」
「あ、そういえば…そうですね!」



わたしの隣に座っていたヒロトさんが、ニコニコといかにも嬉しそうな反応をしてくれたものだから、わたしも嬉しくなってしまう。

つられて笑いながら食事をしていると、反対隣からも笑い声が聞こえた。

振り返ってみれば、こちらもまた楽しそうに笑っている姿があった。



「二人して楽しそうじゃん?
俺も混ぜてくんね?」
「(綱海さん…!)
そ、そういえば綱海さん…ポジション違うから、あんまり一緒になること少ないですもんね」
「おう!
FWの練習はたまーにしか混ぜてもらえねえからな」



優しい感じのヒロトさんとは違って、にかりと眩しい笑顔をしている綱海さん。

歳が3つも違うからなのか、年上というのがよく感じられる―――――こう、なんて言うんだろう。

包容力というか、頼れる感じというか。

春奈さんがお姉ちゃんなら、綱海さんはお兄ちゃんかなあ。



ご飯を口に運びながら、頷いたりして会話に参加する。

ふと気になっていたことを思い出して、わたしはわざわざ箸を置いて、綱海さんの方を振り返った。



「あの、綱海さん…!
こ、今度…ご迷惑じゃなかったら、必殺技見せてほしいです」
「ん?そんなこと簡単なもんよ!
いつでもいいぜ?」
「ほ、ホントですか…!
ありがとうございます!」
「二人して仲良く話しすぎー!ずるいよ綱海くん!
なまえちゃんもほら、手止まってるし!」
「あ、わわ……そうでした」



男女の差なのか、わたしは綱海さんみたいなダイナミックなシュートをうつことが出来ない。

だから、少しでもポイントというかコツというか、何かを掴めればと思っていた。

よかった、約束ですよ!と念を押すように言ってみると、綱海さんに豪快に頭を撫でられた。



それを見ていたヒロトさんも加わって、改めて話していると、あっという間に食事終了。

早いなあ、と思っていると、くいっと引かれた腕。



「木暮、さん?」
「あのさ、これから一年組で自主練するんだけど
なまえも来る?」
「え……?」















**********





「本当に、いいんですか?」



「ここまで来といて何言ってるんだよ」
「来といてって…連れてこられたんですが」



宿福から少し離れた場所高台にあるゴールの前には、木暮さんが言っていたかのように中1メンバーが勢揃いしていた。



「たまには木暮もいいことするっスね!」
「た、たまにはって何だよー?!」



壁山さんが木暮さんをからかうようにそう言うと、予想通りの木暮さんの反応に皆さんが笑う。

わたしにはその笑いの真意はよく分からなかったけど、皆さんが楽しそうだからいいことなんだろうと結論付けた。



「実はね、なまえちゃんと―――――話したくって」
「へ?」



話すって、会話するということ?

今にもシュート練習をはじめそうな勢いで、皆さんいらっしゃったのに。

どうして、と尋ねようとすると、立向居さんが春奈さんよりも一歩前に出て、口を開いた。



「また音無さんばっかり!
お、俺だってなまえちゃんともっと話したいのに!」
「……あ、ありがとうございます…?」



立向居さんがそう言うと、壁山さんも栗松さんも、木暮さんも賛同するように騒ぎだした。

どうやら事実みたいだなあ。



「…でも、わざわざこんなことしなくても、言ってくださればいつでもお話出来ますよ…?」
「なまえちゃん、残念ながらそれは間違ってる!」
「へ?」



「あなたはもうちょっと、自分に人気があることを自覚しなさい!」
「……へ?」



びしぃっとわたしに人差し指でぐいぐいしてくる春奈さんに、わたしはまたよく分からずに声が漏れた。















野なかの姫さま


(ま、そんなところがかわいいんだけどね!)
(だ、だからかわいくなんて…!)

(結局音無さんばっかり、ズルいっスー!)
(そうでやんすよ!
折角木暮が誘ってきてくれたのに!)
(……なにか?)

(((((ひいっ!)………何でもないです))))












特に指定がありませんでしたので、我が家の成主で
落ちは一年組にしました!

前サイトの3周年企画:ルイ様のみフリーでした!

お題:alkalismさまより


12_04_09






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