成代 | ナノ









※成神成り代わり・女主





ビートを刻みながら、全身を使ってボールをキープしながらドリブルでピッチ内を駆け抜ければ、わたしの知る限り、わたしからボールを奪えた人はいない。

全速力で走っても、ボールは足に吸い付いて離れないかのように、ぴったりとくっついている。



「成神!勝負だ!」
「はい?
なんか言いました、デコ見先輩?」
「ああん?
喧嘩売ってんのかてめぇッ…!」
「抑えろハゲ、」
「ハゲてねぇ!」
「ちょっと先輩、こっちこないでくださいよ
デコに反射した照明の光で目がやられますから」
「んなわけあるか!」
「だからうるせえんだよ、へん…ハゲ」
「おい咲山、わざわざ言い直すなよ!」


「お前たち、話が進まないからいい加減にしろ」


「源田せんぱーい、
あのデコ先輩がいけないんですよー」
「成神ぃい!
お前、覚悟しろ!」



部活の紅白戦は、結構頻繁に行われていて、今日も例外ではなかった。

一軍だけで紅白戦を行っているから、人数の都合上、普段以上にピッチ内を上がっていく事がある。

こういう時くらい、本気でやったって罰は当たらないだろう。

因みに本来わたしは、守るのが専門のDFなんだけど、ドリブルの方が得意である。

だから、MFがやりたかったのに、一軍はほぼ先輩達で構成されているから、我が儘は言っていられない。

二番目に得意なDFでも、一軍に入れたのだからいいのだ。

……………多分。



「ッ……、相変わらずすばしっこいなぁ!」
「う、っさいっすよ…!」
「な!」



わたしの小さい身体は、小さい頃からの無駄な柔軟性で、辺見先輩のチャージなんて、簡単に避けれますよ。

ジャンプで避けて着地した時の一瞬の隙を狙って、咲山先輩のスライディングが飛んでくるのはびっくりしたけど。

てか先輩達いつのまにタッグ組んだんすか。

まあ、二人共敵チームだから、協力するのは当たり前っすかね。



「ナイス成神!」
「、佐久間せんぱーい」
「おっし、任せろ」



でも今回は敵チームに鬼道さんと源田先輩がいるから、圧倒的に不利じゃんよ。

こっちのストライカーはペンギン中毒の厨二病患者しかいないんだぞ。

向こうで五条先輩とか、万丈先輩がよくやったとか言ってくれてるみたいだけど、先輩ごめんね、全然嬉しくない。

わたしもチームプレーでもしてみようかなって思ったから、近くで大袈裟にアピールしてくる佐久間先輩にパスをした。



「あ、?」
「ちょっと佐久間せんぱーい、何してくれてんすか」
「ナイス鬼道!」
「今鬼道さん敵チームっすから
何ボール取られたくせに応援してんすか」
「成神、顔怖い
笑ってー」
「ごめん無理ー」



あのペンギン野郎、なにボール取られてんだよ。

あー、わたし頑張ったのに。

デコの光に負けず、立ち向かって行ったのに。



「もう、佐久間先輩大嫌いっす」
「は、…え?!」



しょうがないから、もう一回頑張りますか。




















「……マジ疲れた、」
「お疲れー、」



ユニフォームが濡れるのも構わずに水道の水を頭から被って、気が済むまで水を口に含んで、喉の渇きを潤す。

胡坐をかいて、地面に座り込んだわたしに、タオルとボトルを手渡した洞面は、当たり前のようにわたしの膝に座った。

もふもふと髪を触って遊んでいると、気持ちがいいのか、表情を緩ませた洞面は笑顔でドリンクを飲んでいた。



「ちゃんと拭かないと、風邪引くぞ」
「あ、今やろうと思ったんすけど」
「…貸してみろ」
「ありがとーございます……?」



わたしのタオルは源田先輩の手元に移動して、ただされるがままにしていると、頭に、首に、洗いたてのふわふわのタオルの感触が心地よい。

ヘッドホンから流れる音楽を止めて、タオルが奏でるただその優しい、不規則なリズムに酔い痴れる。

ドリンクを口に含もうとしたけど、水で満たされたお腹には入らないだろう。



「源田、成神を甘やかしすぎだぞ」
「そうか?
ま、成神は我が部の紅一点だからな」
「………いい意味でうけとっておきますね」
「うん?」



帝国学園には、女子サッカー部もあるんだけど、わたしは総帥に認められて、最強とも謳われる男子サッカー部の一軍に属している。

もちろん、ライセンスも持っているし、それなりに頑張ってるつもり。

だけど、やっぱり女だから、舐められる。

源田先輩の言葉に、皮肉はこもっていないのは分かるけど、やっぱり気にしてしまうのが人間であって。

ま、(あんなに微笑んでる)源田先輩はそんなことは全く考えてないだろうけど。



「やっぱり成神はかわいいな」



わたしは、顔に出やすいタイプなので、どうやら見られてたらしい。

赤くなったり、青くなったりしていたところを見られてたのか。



「かわいくないっすよ」
「かわいいよ」



お世辞にしてはくどいですよ、先輩。

そう、口に出すと、源田先輩は「お世辞なんかじゃないさ」と爽やかに言い放つもんだから、わたしの顔は赤くなった。

やっと汗がひいてきたのに。

ちくしょう、これだからイケメンは。



「よし、終わった」
「…ありがとうございます」



タオルをついでに片付けてくれるのか、源田先輩はわたしの分のタオルも持って、ベンチへ置きに行ってくれた。

優しいなあ。



「成神ー」
「なに?」
「僕も成神はかわいいと思うよ?」
「みんなしてなに、頭でも打った?」
「もーう、信じてよー」



ぷーっと頬を膨らませて、訴えてきた洞面は、わたしなんかよりもよっぽどかわいい。

そう思って、さっきよりも乱暴に頭を撫でると、いつのまにか洞面は笑っていて。

わたしも撫でられるのは、気持ちがいいから好きだし、洞面も気持ちがよかったのかな。

機嫌を直してくれたなら、いいか。



「な、成神」
「はい?
なんですか佐久間先輩」


「お、おれも…お前のこと、か、かわ‥」
「あ、ペンギン」
「え?
あれ、さっきちゃんとゲージにしまってきたはずなんだけどなぁ」
「佐久間先輩、ちゃんとしてくださいよー」



みんなして、なんだ。

新手のいじめか。

でもまあ、頭の中がほぼペンギンで満たされている佐久間先輩は、あっという間に騙されてくれた。

さりげなく、ゲージのロックを外してくれた咲山先輩、ぐっじょぶ。


あんまり言われ慣れないこと、言われたくないんすよね。

わたしこれでも、女の子なんで。















ぼくら同じ歌をあいした


(本当は嬉しいっすけどね)












にゃるくんは大好きです(´`)

この子は、頭もいいので
人に気に入られる術を自然に身につけています

みんなに好かれているんだけど
素直に受けとめられない
もう少しでツンデレにレベルアップ、といったところですね

まあ、滅多にデレませんけど(笑)

MF志望で、ドリブルが得意っていうのは管理人の勝手な捏造ですのであしからず



お題:alkalismさまより


11_04_20








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