成代 | ナノ









※円堂成り代わり・女主





「すっごい楽しかった!」
「もう、なまえちゃんったら!
サッカーのことになると、周りが見えなくなるんだから!」
「ごめんね、秋……」
「もう慣れました!」
「………際ですか」



ナイツオブクイーンからの招待を忘れて、汚れた格好でサッカーをしていた彼女は、イナズマジャパンのキャプテンである円堂なまえである。

今どきの女子には珍しく、色恋やお洒落には全く興味のないサッカー馬鹿。

周りにはそう認識されている。



「遅れてしまって、申し訳ありません」



マネージャーである木野秋をおんぶして、ナイツオブクイーンのパーティー会場に到着した彼女に、ナイツオブクイーンのメンバーは呆れ顔だった。

ドレスを着た秋はともかく、なまえは正装どころか、泥だらけのユニフォーム姿なのである。



「そちらのレディに新しい靴を、
彼女に……ドレスの用意を」
「はい、ただいま」



堪らなくてエドガー・バルチナスは執事に言い付け、なまえを連れていかせた。

招待なんてしたのが間違いだったか。

そう顔に書いてあった。

しかしそれは、後に後悔することになる。















「お待たせしてしまって、すみません」
「!」
『キャプテン?!』
『円堂?!』



なまえは普段付けているオレンジのバンダナを外した代わりに、全体的にカラーをオレンジで纏めていた。

普段出していない肩や腕を思い切って出したノースリーブのドレスに、レース遣いの細かいストールを緩くかけて。

髪はポニーテール気味に高い位置で纏め、シュシュをあしらう。

夜のパーティーなのだからと、メイクは少し濃いめなのだが、それも彼女にぴったり合っていた。



簡単に言えば、普段の泥だらけのユニフォーム姿からは想像出来ない程、綺麗だったのである。



「くそ、」
「ふふ、風丸くん、イライラしてるね」
「………木野だって、そうだろ?」
「そうね……みんなの目、潰しちゃいたいくらいだけど、なまえちゃんが悲しむからやめておくわ」
「!
ああ、………そうだな」



円堂なまえは、普段はサッカーのことしか頭にない「サッカー馬鹿」であるが、心はちゃんとした乙女であるから―――――一人前に、女子力は持っている。

ただそれを皆に見せていなかっただけであって、出来ない訳ではないのだ。

そのことを知っていた幼馴染みの風丸とマネージャーの木野は、言うまでもなく不機嫌であった。

俗に言う、嫉妬というヤツである。



なまえが通された部屋には、色とりどりのドレスと装飾品が置かれていた。
貸してくれるって言ってたし、いいよね。

よく見ればアイロンにメイク道具まである。

うわあ、風丸みたいなあの人が全部用意してたら気持ち悪いなあ。

そんなことを考えながら、なまえはパーティーに相応しい身なりに整えたのであった。



「なまえちゃん、綺麗…!」
「ありがとう」



褒められれば、素直に喜ぶ。

普段、サッカーボールを片手に笑う彼女の姿ばかり見ていたからなのか、夜の光と大人の雰囲気漂う環境だからなのか。

小さく遠慮がちに笑う円堂の姿は、何処か大人びていて。

誰もが呼吸するのを忘れた。

なんて、シリアスな雰囲気は直ぐに打ち壊されることになる。



「なまえちゃんなまえちゃん!
これ食べて?美味しいよ」
「こっちの方がうまいぞ!円堂」
「ちょっと綱海くん、僕が先になまえちゃんに持って来たんだけど…!
邪魔しないでくれる?」
「んなこと関係ねーって!
俺だって、円堂の為に持ってきたんだぜ?
早いうちに食わなきゃ冷めちまうだろ?
だから吹雪が退いてくんね?」
「ふ、二人ともありがとう
(でも、流石にこれだけの量は食べれないかな…)」



何事も行動は早い方がいい。

先手必勝とはまさにこの事だと言わんばかりに、料理を手になまえに寄ってきた吹雪と綱海。

その下に下心があるなんて思ってもみないなまえは、素直に嬉しそうに笑みを浮かべた。



「ず、ずるいですよ吹雪さん、綱海さん!」
「なまえさんはみんなのものだよー!」
「あ、やっぱりみんなタキシードなんだね
スッゴく似合ってる!かっこいいよ!」



それに便乗してというか、寧ろ嫉妬してというか。

次々になまえの周りに集まりだしたイナズマジャパンメンバーに、エドガーは驚きを隠せなかった。

それは、今の今まで話していた冬花の存在を忘れるくらいに。

何なんだ、さっきまでは統一感すらなく、自由にバラバラに行動していたのに。

彼女―――――円堂がキャプテンだからなのか?

いや、違う。

キャプテンだからどうこうではなくて、円堂だからなのである。

そこのところを、エドガーが理解するのももう少し後。



「か、かっこいいだなんて…!」
「キャプテンは立向居だけに言ったんじゃないっスよ!」
「わ、わかってますけど…!」


「ちょっと皆さん、そこ退いてください!邪魔です!」
「じゃ、邪魔って…」
「音無さんって、はっきり言うとこあるよね」
「だってそれは「事実ですから」…はい、その通りです!」



あれ、先程まで自分と話していた冬花が、円堂のところにいる。
いつのまに。

紳士としてのエスコートを怠っていた己に鞭を打ち、エドガーはやっと身体ごと視線を円堂に向けた。

本当に、不思議な人だ。

本場仕込みの自分のエスコートが、ただ笑っているだけの円堂に負けたのが少しだけ悔しくはあったが。



「なまえさん、似合ってる…!」
「ありがとう!ふゆっぺもかわいいね!」
「あ、冬花さんズルいですよ!
キャプテン、わたしも似合ってますか?」
「うん、春奈ちゃんもスッゴく似合ってるよ!かわいい!」



えへへ、と照れ笑いする冬花と春奈。

あれ、おかしいな。

自分と居たときはあんな眩しい笑顔、見せてくれなかったのに。

おいエドガー、袖、握り過ぎた。

え、マジでか。



「あ、秋、脚大丈夫だった?」
「うん、もう大丈夫よ」
「スッゴく似合っててかわいかったのに、靴残念だね……ごめん」
「ううん、いいの
……あ、そうだ!
ヒールの高いのじゃなくて無理しない、わたしにあった靴探したいの
今度付き合ってくれる?」
「そういうことなら喜んで!」



くそ、レディとデートの約束だって?

さっきから、円堂にいろいろと負けている気がして、エドガーは紳士だとかそんなものは忘れていた。

つかつかと円堂に歩み寄ると、礼儀正しく声を掛けた。



「すみません、レディ」










紳士たるもの、勝負は正々堂々と

(これからちょっと一戦どうでしょう?)
(え?サッカーですか…!(きらきら))
(もちろん、サッカーで)

(ちょ、ちょっとあのエセ風丸くん、倒してきていいかな?)
(絶対何か企んでるでしょ、あのエセ紳士…!)
(あ、ダメだ、キャプテンサッカーっていう単語に弱いから)
(((あ、もうグラウンド行っちゃった)))












円堂はお洒落に疎いと誰が言った!
的な感じで、天然ではあるけど鈍いわけじゃないキャプテンに挑戦しましたが見事に撃沈しました…
途中から何故かエドガー視点になっていた…なぜだ!((ォィ

お待たせしてしまってごめんなさいが是非貰ってやってください!

前サイトの3周年企画:みかんさまのみフリーでした!


12_03_20






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