成代 | ナノ









※霧野成り代わり・女主





女の子なら誰しも好むであろう、桃色の髪を二つに結って、前で鞄を両手で持つ姿は、誰もが認める―――――美少女というヤツであった。
うん、なまえは可愛い。
毎日、会うたびにそう考えてしまう神童拓人は、ある意味病気である。

「おはようたっくん!」
「おはよう、なまえ」
「いつもありがとね、わざわざ迎えに来てくれて」
「別に、構わない」
「やっぱり優しいね、たっくんは」
「……そんなことはないさ」

ふにゃりと笑ったなまえに、思わず神童は顔に熱が集まるのを感じた。
なまえはご機嫌なようで、頭の低い位置に結ばれている髪も、楽しそうに揺れている。
そんな様子を見て、自然と笑顔になってしまう自分に、神童はしょうがないと開き直っていた。
だって、なまえが可愛すぎるのが悪いんだ。
結論はいつも同じだなんて、そんな馬鹿な。
神童は毎朝かなり早く起き、自身の身なりを整えると、送迎をしようとする使用人を振り切って、なまえの家の前で待つのが日課である。
運がいいと、なまえのお母さんに見つけられて、家の中で待つことも出来たりする。
そんなときはもう、悶え死ぬんじゃないかと、自分が心配になる。
特に心臓が。
なまえはパジャマのままだったり、急いで朝食を頬張っていたりと、普段きちんとしているなまえが唯一素になっている時。
無防備というか、寝呆け眼で危なっかしい姿が、なんとも愛らしいのだ。

神童は、なまえの幼馴染みというポジションに、日々感謝していた。
周りからはいつも羨ましがられるし、自分がもしそうでなかったら、相手を恨んでいるだろう。
幼馴染み故に培われた信頼は誰にも負けない自信があるし、自分もなまえのことを知っている自信があった。
それが一方通行な片想いだとすれば、神童はかなり痛い人間なのだが。

「今日、寒いんだってさ
練習、屋内グラウンドだったらいいよね」
「ああ、そうだな(後で監督に頼みに行こう…!)」

密かに決意を固めている神童の心知らず、なまえはご機嫌に歩を進めていく。
その姿を見て、神童の頭の中は再び同じ内容で満たされた。
ああ、なまえ可愛い。


「あ、神童に霧野ー!」
「あ、浜野くんおはよー
速水くんもおはよう」
「…おはようございます」
「はよー!
…ん?どーしたの神童?」

「いや、なんでもない
おはよう、浜野、速水」

浜野と速水が、なまえと神童の後を追い掛けるようにやってきて、並んで歩き始めた。
あからさまに不機嫌になり、眉間に皺を寄せていた神童だったが、なまえが振り替える前に顔を戻した。
ああ、せっかく二人きりだったのに!

「ちゅーか今日寒くね?」
「ぼ、僕なんて下にジャージ着てきちゃいましたよ」
「あ、そうか
今日体育ないもんね
あー、じゃあそうすればよかったなあ」
「いやいやいや、女子はスカートなんだからダメでしょうよ」
「………いいなあ、」

ぷーっと頬を膨らませ、不機嫌だと主張するなまえに、神童は自身の頬が緩むのを自覚した。
はっと気が付いて慌てて冷静さを取り戻すと、なまえはずっと正面を向いて歩いている。
よかった、見られてなかった。
神童が安心したのも束の間。
さりげなく、かなりさりげなくだが、浜野が行動を起こした。

「まあまあ、それはしょうがないちゅーかさ」

幼子をあやすように―――――ぽんぽんとなまえの頭を撫でたのである。
ダメだ、それはダメだ!絶対!
お、俺なんて恥ずかしいからって、学校ではなまえのことを名字で呼ぶように言われているし、自分も名字で呼ばれてるんだぞ!
かつてはいつも手をつないで一緒にいたから、仲良し兄妹みたいだと近所で評価だったんだぞ!
で、でも最近は……

神童のネガティブオーラを感じとったのか、隣で歩く速水が青い顔をしていたなんて、この時の神童は知らなかった。

「あれ、どうしたの神童?」
「ちゅーか、顔色悪くね?」
「い、いや、なんでも…」
「えー?ウソでしょ!
もう、いっつも神童は1人で抱え込んじゃうんだから!」

少しだけ先を歩いていたなまえと浜野が不意に振り返ると、ネガティブオーラ全開の神童と、それにつられて顔色を悪くした速水がいた。
なんというカオス。
大丈夫だと笑って答えたが、どうやらなまえは納得していないようで。
眉を少しだけ下げて、神童に向き合った。

「元気出して神童!
ほら、もう学校着くよ!」
「あ?」
「!」
「き、霧野さん、大胆…です」

なまえは、神童の手をとって走りだし、呆気にとられて立ち止まってしまった浜野と速水をおいて、校門を突破した。










鈍感デュエット



身体を動かせば気持ちも軽くなる、そう小さな子どものような考えだったというのを後で知った神童が、より一層なまえに対して照れるのは、もう少し後である。







悶えるシン様だなんて!
こっちが見てみたいわこんちくしょー!
あ、すみません取り乱しました…

霧野は男であんなに可愛いんだから、女の子だったらもうやばそうですよね!

かなり遅くなってしまいましてすみません!

前サイト3周年企画:サキさまのみフリー!




12_01_28






《戻る》

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -