成代 | ナノ









※狩屋成り代わり・女主





「あ、」
「おはよう、狩屋」
「…おはようございます、霧野センパイ」



一見女の子のようにも見える容姿をした、一つ上のセンパイ。その人は、わたしが想いを寄せる―――――霧野蘭丸センパイである。桜色の髪を二つに結っている時点で、そこらの女の子よりも可愛いってどういうことだ。たまに女の子同士で話している錯覚に陥るのは仕方がないと思う。可愛すぎるセンパイが悪い。わたしがそんな霧野センパイに想いを寄せるようになったのは、簡単な話だった。俗に言う一目惚れというヤツである。一回意識してしまえば、それ以降も意識してしまうのが人間。人を信じれなくなったわたしでさえ、恋をすることが出来るらしい。それが、わたしも他と同じように人間なのだと物語っているようで、少し苛ついた覚えがある。わたしが人間であることには変わりはないのだけど、裏切るような他の人間達とは一緒にしてほしくない気がしたのだ。



「…どうかしました?」
「え?」
「何か、元気がない気がして」
「そうか…?」



霧野センパイは可愛い容姿をしているのに、物凄く男前な性格をしている。そこがまたギャップ萌えだとかで、魅力になっている。わたしもその魅力にどっぷり浸かっているのが事実であって。そう、頭から腰辺りまで、もうどっぷりと。だからたとえ片想いだとしても、センパイに向けられるベクトルには、苛々するのが当たり前な訳で。今もそうだ、センパイに向けての黄色い声や視線がある。その中にはわたしに対する、嫉妬とか妬みとかのヤツも少なからずあった。まあ、それはいい。でも、センパイを困らすのは許せない。わたしのその使命感みたいな正義感も、ヤツらと同じようなものだとは思うけど、センパイを困らすのは絶対に許せない。ふざけるな。センパイに近寄るな。いつからだったか、センパイに対する一方的な愛情を凶器に変えて、わたしも負けじとヤツらに立ち向かうようになっていた。すると、今日もヤツらもまた張り合ってくる。はあ、まだ足りないのか。わたしの愛が足りないから、センパイを守れないのか。そんな自責の念のような歪んだモノが日に日に積もっていくのを、わたしはいつも感じていた。



「狩屋こそ、大丈夫か?」
「え?」
「なんか最近、いつも張り詰めた顔してるからさ」
「……知ってたんですか」
「?」



わたしは過去にいろいろあったから人を信じれない、歪んだ性格を持つことになった。人を信じれないから嘘とか、その場しのぎの作り笑いが得意なのが現状である。そんなわたしでも、霧野センパイは気に掛けてくれる。凄く嬉しい。それでも、素直になれずに、変なことを言ってしまうわたしは、所謂天邪鬼というヤツなわけだ。だから余計に、一方通行な想いが募ってしまうのだ。ほら今も、精一杯笑いかけようとすると、何故か顔が強張る。素直になりたいけど、歪んだ性格と、一方的な恋心が邪魔をする。はあ、わたし、バカだ。



「別に、センパイには関係ないですよ」



素直じゃないわたしは、また思っていることとは真逆のことを口にする。そんなわけない。わたしがいつも考えてるのは、センパイのことだけなのに。行き過ぎた一方通行の想いになってしまった今、言えるわけがない。言ったら嫌われて、ハイさよならがオチだ。分かってる。分かってるから、わたしはひたすら隠す。それが最善の、わたしにとって一番傷付かない為なんだから。



だから―――――



「そんなこと言うなよ
サッカーはチームワークだし、俺たちは同じポジションでもあるんだぞ?」



期待するようなこと、言わないで。



「狩屋が不調だったら、みんなが心配するだろ?」



優しい言葉をかけないで。



「そんなこと、知りませんよ…!」
「!」



これ以上、センパイを傷つけるようなこと、言いたくないんです。



「わたしのこと、何も知らないくせに」
「狩屋…?」
「わたしはいつも…素直じゃなくて、可愛くない、こんななんだから、何もかわりありません!いつも通りです!」
「…」
「ほっといてください!」



ああ、嫌われた。もう、終わった。センパイに黄色い声をあげているヤツらが笑っている気がした。うるさいうるさいうるさい!
何かを言おうとしたセンパイの腕を振り切って、走りだそうと足に力を入れる。早くここから居なくなりたい。その一心だった。



「狩屋は可愛いぞ!」
「?!」
「狩屋は、言うことは素直じゃないけど、気持ちがいつも顔とか身体に出てて、可愛いぞ!」
「な、なに言って…!」



わたしの肩をがっちりと掴んで、目の前に来たセンパイ顔が、口がそう発した。



そんなこと言ったら、わたしはまたセンパイから離れられなくなるでしょう?










私の世界の爽雑物を全て取り払うと、



残るのはセンパイだけなんですよ?







爽雑物は「まじりいった余計なもの」という意味です。

うわあ、なんだコレ。
ヤンデレとか書いたことないから、どうしたらいいかわからなかったとかいう言い訳を……
本当は、

霧野「最近、なんか見られてる感じがなくなったんだよなあ
よかったよかった」
成主「そう、なんですか
よかったですね!(わたし、頑張った!)」

みたいな感じ
つまり、裏で色々働く狩屋
を予定していたとかいうまた言い訳を(;´∀`)
それでもヤンデレなのかは分からないままですが…

遅くなってしまいましたが、これからもご贔屓にしていただけると嬉しいです!

前サイト3周年企画:マキさまのみフリーでした!




12_01_16






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