成代 | ナノ









※ヒメコ成り代わり・女主





「あだ名さーん!」



一瞬反射で振り返ろうとしたあだ名だったが、思い止まってそのまま振り返らずに歩き続けた。
振り返ったら、この子絶対に今まで以上に調子に乗る。
うん、絶対。



「あだ名さーん!」
「こりないねぇ…」



げしっと一蹴。
自分に迫ってきたそれに、何の迷いもなく蹴りを入れたあだ名は、はぁ、と大きく溜息をついた。
どーしたんすかー?君のせいです。
しょうがない、と諦めたあだ名は、立ち止まって振り返った。
すると、予想はしていたが、尻尾でもあったら千切れそうなくらいに振っていそうなくらい、嬉しそうな垣内仁がいた。
何がそんなに嬉しいんだろうか。
わたしには分からない、とあだ名はまた溜息をついた。



「もう、なんなの」
「なにって…俺はあだ名さんともっとお話したいんす!」
「話なら登校んときも、休み時間も昼休みもしたでしょ?」
「それじゃあ全然足りないんすよ!」



それで足りないって、君はどれだけ構ってちゃんなの。
一応、自分は巷では有名な元不良であって、喧嘩なら誰にも負けない自信はあるのだけど。
何故だかこの手の話は、勝てないというかなんというか、苦手なのだ。
―――――恋愛、という話は。
人並みに恋をした経験はあると思うのだけど、自分の過去や纏っている雰囲気が、人を寄せ付けない故に、悲しいことに実際の経験は少ないもので。
はあ、なんで自分なんだろう。
目の前にいる仁は、あだ名が所属する人助けの部活の活動の一環で関わりを持ったのだけど、会ってすぐにあだ名に告白したという後輩である。
懐かれた、という表現の方が適切かもしれないが、しつこく寄ってくる彼はそう簡単に諦めてくれない。
本気なのか、とあだ名も驚いていた。
自分に好意を寄せてくれるのは有難いが、なんというか。
こうもストレートに伝えられると、この手の免疫も経験も少ないあだ名にとっては返答に困るのだ。



「あだ名さんあだ名さん!
今週末空いてますか?
空いてたら俺とデートしましょう!」
「空いてない」
「じゃあ来週末!」
「空いてない」
「…再来週末は‥」
「そんな先のこと、分かんないって」
「……」



あだ名は、普段から強気な発言が多いし、どちらかと言えば今どきの女子らしく話題豊富で、話しやすい性格である。
だから、滅多に会話が途切れることはないし、沈黙に悩むこともない。
それが仁との場合はどうだろう。
さっきから、仁が一方的に話すばかりで、あだ名は全くと言っていいほど、言葉を発していないのである。



「あだ名さん、」
「…」
「……」
「………なに、人のこと呼んどいて黙るのはナシでしょ」
「……俺のこと、キライですか」
「…はあ?」
「だってあだ名さん、俺と話してる時より藤崎先輩とか笛吹先輩と一緒にいるときの方が楽しそうだし」
「……友達なんだから、当たり前でしょ?」



振り返りもせず、当たり前だとでも言わんばかりに言うあだ名。
その後ろで、仁は分かりやすく顔を歪めていた。
友達に対してでもあんなに楽しそうに笑うんだったら、俺に対してもうちょっと笑ってくれたっていいのに。
それは世間体でいう嫉妬というヤツであった。
そんな仁を見て、あだ名は飽きれたように再び溜息を吐いた。



「嫌いで友達ですらない人なんかと、ボッスン達以上に話すわけないでしょ?」
「!あの、それって…」










ハートを奪取せよ



(友達以上なら恋人ってことですか?!!
あ、だから俺と話すのが照れて上手く出来ないってことっすか?!!)
((友達って言ったつもりだったんだけど))
(あだ名さん、素直じゃないとこもかわいいです!!)
(はあ、)
(え、なんで溜息なんすか?!)







ヒメコなのになぜ標準語なんだって?
き、気にしないでください(; ・`д・´)
管理人、関西弁分からないんです…

仁くんすきだああああ!!



お題:alkalismさまより


12_01_02






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